2018年5月23日水曜日

セクハラ問題で強引にテレ朝の経済部長を庇うFACTA

FACTA6月号に載った「テレ朝『セクハラ告発』の真相」という記事は奇妙な中身だった。セクハラ問題でテレビ朝日の早河洋会長や篠塚浩報道局長を悪者にして経済部長をかばうのがダメだとは言わない。だが、根拠薄弱では困る。
宇佐のマチュピチュ(大分県宇佐市)
       ※写真と本文は無関係です

記事では「『報道したい』と提案しても、官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけ」と断定しているが、そう判断できる根拠は「どこの誰か分からない人がそうなるんじゃないかと心配していた」といった漠然としたものだ。一方で経済部長に関しては、セクハラに関する報道に待ったをかけた様子を描いているのに「報道を止めたかのようなニュアンスで発表したのは事実と異なり~」と擁護する。これでは「真相」に迫っているとは思えない。

FACTAには以下の内容で問い合わせを送った。

【FACTAへの問い合わせ】

FACTA 主筆 阿部重夫様  発行人 宮嶋巌様  編集長 宮﨑知己様

6月号の「テレ朝『セクハラ告発』の真相」という記事についてお尋ねします。見出しの横には「『報道したい』と提案しても、官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけだから、週刊誌に持ち込んだ」と書かれています。しかし、記事中の説明とは食い違っています。当該部分は以下のようになっています。

「(テレビ朝日の)経済部長は女性記者から『セクハラを報道したい』と提案された際、放送の準備を進めても、篠塚氏や早河洋会長ら官邸に近い幹部にボツにされるとの趣旨を伝えた。『経済部長は長く報道ステーションのプロデューサーを務めていた。しかし、2015年に元官僚の古賀茂明氏が『I am not ABE』と書いたボードを掲げ、官邸からの横やりで、キャスターの古舘伊知郎氏ともども降板させられた際、彼女も番組を外された。報道局では、篠塚氏や早河氏に不信感を募らせている者が多く、今回の問題では、篠塚氏が音声データを取り上げて官邸に持ち込み、消してしまうと恐れた人までいた』と関係者は打ち明ける


『報道したい』と提案しても、官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけだから、週刊誌に持ち込んだ」との記述からは、「週刊誌に持ち込んだ」女性記者自身が「『報道したい』と提案しても、官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけ」と判断したと受け取れます。

しかし、記事の当該部分ではそうは記していません。「篠塚氏が音声データを取り上げて官邸に持ち込み、消してしまうと恐れた人までいた」という「関係者」のコメントが出てくるだけです。女性記者あるいは経済部長が「官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけ」と判断していたと解釈できる記述はありません。「官邸に近い報道局長らに録音データを取り上げられるだけだから、週刊誌に持ち込んだ」との説明は誤りではありませんか。少なくとも、その後の記述と整合性の問題があります。

記事には「上司の経済部長(女性)が報道を止めたかのようなニュアンスで発表したのは事実と異なり~」との記述もありますが、その後の説明を読む限りでは「事実と異なっていない」と思えます。

セクハラを報道したい」という提案に対し、経済部長は「放送の準備を進めても、篠塚氏や早河洋会長ら官邸に近い幹部にボツにされるとの趣旨を伝えた」と書かれています。これが事実であれば、「報道を止めた」のは「上司の経済部長(女性)」以外にあり得ません。経済部長が「放送の準備を進めて」いたのに「篠塚氏や早河洋会長ら」に報道を止められたのなら話は別ですが…。かなり強引に経済部長をかばっているようですが、何か理由があるのでしょうか。

付け加えると「2015年に元官僚の古賀茂明氏が『I am not ABE』と書いたボードを掲げ、官邸からの横やりで、キャスターの古舘伊知郎氏ともども降板させられた際、彼女も番組を外された」との記述にも問題を感じます。記事の説明を信じれば「古舘伊知郎氏」が「降板させられた」のは「2015年」のはずです。しかし同氏は2016年3月まで「報道ステーション」でキャスターを務めています。記事の説明は誤りではありませんか。

官邸からの横やり」で「降板させられた」との説明にも疑問が残ります。「古賀茂明氏」の一件があったのは15年3月なので「降板」までに約1年が経っています。「官邸からの横やり」を受けて「降板」させたのならば、時間がかかりすぎだと思えます。

さらに気になったのが以下の記述です。

女性記者は度重なる福田氏のセクハラを経済部長に相談し、部長は個別取材を見合わせるよう指示した。4月4日は財務省が森友学園側に対し、国有地地下のごみを巡る口裏合わせを依頼していたというNHKのスクープについて、部長の指示を知らないデスクが女性記者に確認取材を求め、彼女はやむなく福田氏に接触した

彼女はやむなく福田氏に接触した」という行動に疑問が残ります。「福田氏に接触」することは「部長」が禁じているはずです。「部長の指示を知らないデスク」が「福田氏に接触」するように求めてきた場合、「部長からダメだと言われているので接触できません」と伝えるのが常識的な対応だと思えます。

部長の指示を無視するのは会社員にとって大きなリスクを伴います。そんな余計なリスクを負ってまで「(セクハラを繰り返す)福田氏に接触した」のは不自然です。何の疑問も感じませんか。「当時の状況では部長の指示を無視するしかなかった」と言える事情があるのならば、その点に触れるべきです。通常であれば、デスクよりも部長の指示を記者は優先させるはずです。

問い合わせは以上です。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「テレ朝『セクハラ告発』の真相
https://facta.co.jp/article/201806038.html


※記事の評価はD(問題あり)。

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