2018年5月16日水曜日

数十センチ浮くだけで「空飛ぶバイク」? 日経ビジネスに問う

空飛ぶクルマ」関連の記事は何かと問題が多い。日経ビジネス5月14日号に載った「時事深層『空飛ぶバイク』、10月にも離陸~サッカー日本代表、本田圭佑氏も出資」もそんな記事の1つと言える。今回は「空飛ぶバイク」ではあるが…。この手の記事では「ものすごい変化が起きつつある」と訴えたくなってしまうのだろう。実際には、それほどでもない場合が多い。記事で紹介した「空飛ぶバイク」も数十センチ浮くだけなので、「空飛ぶ」と言うのは無理がある。
ハンググライダー発進基地(福岡県久留米市)
           ※写真と本文は無関係です

日経ビジネス編集部への問い合わせと回答は以下の通り。

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 北西厚一様

5月14日号の「時事深層『空飛ぶバイク』、10月にも離陸~サッカー日本代表、本田圭佑氏も出資」という記事についてお尋ねします。記事では、エアリアルラボが開発中の「ホバーバイク」に関して「車輪の代わりにプロペラを装着」「地面に風を送って反力で浮くのが、このバイクならではの仕組みだ」と説明しています。

反力」が何を指すのか明確ではありませんが(地面から跳ね返ってくる風の力でしょうか)、プロペラを回転させて地面に風を送った時に生じる力であれば、ヘリコプターやドローンも「地面に風を送って反力で浮く」面があると言えそうです。記事で取り上げた米インテルの「有人ドローン」もそうです。「ホバーバイク」に限ってみても、ドバイの警察が導入を予定している機体は映像を見る限り「地面に風を送って」います。

エアリアルラボの機体は「反力」に頼る部分が大きいので数十cmしか浮上できないのかもしれませんが、だとしたら単にプロペラの生み出す揚力が弱いだけではありませんか。記事を読む限りエアリアルラボの「仕組み」に独自性は感じられません。

地面に風を送って反力で浮くのが、このバイクならではの仕組みだ」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会ですので、他にも気になった点を記しておきます。

まず、エアリアルラボの「ホバーバイク」を「空飛ぶバイク」と呼ぶのは無理がありませんか。「数十cm浮上して走行する」だけならば「浮くバイク」とでも称するのが適切でしょう。例えばリニアモーターカーは浮いて走行しますが、だからと言って「空飛ぶ列車」と呼べるでしょうか。明確な境界線はないのでしょうが「空飛ぶバイク」と呼ぶには、数メートルは浮上してほしいところです。

また、「サッカー日本代表、本田圭佑氏も出資」と見出しで取っているのに、記事にそれ以上の情報がないのも引っかかりました。出資額が1000万円なのか10億円なのか、出資比率が1%なのか50%なのかでインパクトは全く変わってきます。エアリアルラボが本田氏の出資額も出資比率も明らかにしていないのであれば、その点は記事中で明示すべきでしょう。

最初の段落で「2020年の東京五輪までに事業化を目指す。世界中の大企業に先駆ける構えだが、国内の規制をクリアできるかが課題になりそうだ」と書いているのも気になりました。「五輪期間には間に合わせたい」というエアリアルラボの社長コメントも使っていますが、「ホバーバイク」と五輪がどう関係するのか記事には説明がありません。

また「国内の規制をクリアできるかが課題になりそうだ」と書いているのに、記事の終盤には「(エアリアルラボの社長は)『主力市場は海外』と割り切る」との記述が出てきます。だとしたら「国内の規制をクリアできるか」はあまり重要ではないでしょう。「海外市場」を開拓できるかどうかの方が大きな「課題」ではありませんか。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。


【日経BP社からの回答】

日経ビジネスをご購読頂きまして誠にありがとうございます。メールでご指摘頂いた点につきまして、お答えさせていただきます。

本文18行目「地面に風を送って反力で浮くのが、このバイクならではの仕組みだ」と記しました。車輪の代わりにプロペラを採用しており、他のバイクにはない仕組みということを示すため、こういった表現を用いました。また、記事の後半で「航空機ではない」との国交省航空局のコメントも引用しております。国交省によりますと、「地面からの反力で浮いている」ホバークラフトの類のものは航空機の定義には当てはまらず、ヘリコプターやドローンは「空気の反力によって浮いている」との解釈とのことです。

内容としては以上の通りですが、誤解を受ける可能性を少なくするため、より丁寧に説明するべきだったと考えております。ご指摘を真摯に受け止め、今後はより正確な表現になるよう心がけたいと思います。

ご指摘ありがとうございました。

◇   ◇   ◇

予想外の回答だった。「他のバイクにはない仕組み」という意味で「地面に風を送って反力で浮くのが、このバイクならではの仕組みだ」と書いたらしい。ただ、ドバイの警察が導入を予定しているホバーバイクの存在は既に知られているので「他のバイクにはない仕組み」とも言えそうもない。

今後はより正確な表現になるよう」心掛けてくれるようなので、北西記者の今後の記事に期待したい。


※今回取り上げた記事「時事深層『空飛ぶバイク』、10月にも離陸~サッカー日本代表、本田圭佑氏も出資
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/050801031/?ST=pchttpbusinessnikkeibpcojpatclNBD15depth120800149STpc


※記事の評価はD(問題あり)。北西厚一記者への評価も暫定でDとする。

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