2018年5月8日火曜日

「FANG」は3社? 日経 藤田和明編集委員「一目均衡」の説明不足

8日の日本経済新聞朝刊投資情報面に載った「一目均衡~シリコンバレー占拠の意味」という記事は雑な説明が目立った。筆者は藤田和明編集委員。以下の内容で問い合わせを送ってみた。
雲仙地獄(長崎県雲仙市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 藤田和明様

8日の朝刊投資情報面に載った「一目均衡~シリコンバレー占拠の意味」という記事についてお尋ねします。最初に問題としたいのは以下の記述です。

フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、グーグル――。その頭文字から『FANG』や『GAFA』と称され、空前の株式時価総額を誇る米IT(情報技術)大手に対する風向きが、明らかに変わってきた

素直に読めば「FANG」「GAFA」とは「フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、グーグル」という「米IT(情報技術)大手」3社を指す言葉だと思えます。しかし「FANG」の場合はネットフリックス、「GAFA」の場合はアップルを加えた4社を表すはずです。今回の記事にも「FANG4社」との記述が出てきます。

フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、グーグル――。その頭文字から『FANG』や『GAFA』と称され」との説明は誤りではありませんか。少なくとも、正確さには欠けます。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社の一員として掲げた旗に恥じぬ行動を心掛けてください。

せっかくの機会ですので、記事の問題点をさらに指摘しておきます。まずは以下の記述です。

市場にも『集中』のサインがともる。7年間で7倍という株価の急上昇や、1株利益でみて全産業の4分の1を握る偏在ぶり。ITへの集中度合いは、過去のバブルに重なるとハートネット氏は警戒する

ここでは「IT」の範囲が不明です。「FANG」なのか「GAFA」なのか、それともIT全体なのか。特に断りがないのでIT全体と理解するのが自然だと思いますが、その場合は「偏在ぶり」が感じられなくなります。4社で「全産業の4分の1」ならば偏っていると思えますが、IT全体だとそうでもありません。それに、例えばアップルとネットフリックスでは「IT大手」と言っても事業内容が全く異なります。

また「市場にも『集中』のサインがともる」と訴えたいのならば、株式時価総額に占めるIT大手のシェアを過去との比較も入れて紹介すれば済むのではありませんか。「7年間で7倍という株価の急上昇や、1株利益でみて全産業の4分の1を握る偏在ぶり」といった回りくどい説明を選んだのは、時価総額で見ると大した「集中」ではないからなのかと思ってしまいます。

次は、見出しにもなっている「シリコンバレー占拠」についてです。記事では以下のように書いています。

『シリコンバレーを占拠せよ、だ』。米バンクオブアメリカ・メリルリンチのマイケル・ハートネット氏の指摘だ。重ねるのは2011年、ウォール街で起きた座り込み運動。『1%対99%だ』と看板を掲げ、富が一部に集中する格差への不満が金融街を占拠せよという呼びかけへと発展した。同じ視線が今度はハイテクの集積地であるシリコンバレーに向いている。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏を全米中継で議会が詰問し、規制強化へ急速に傾く構図は、当時の金融機関たたきと相似形をなす。米トランプ政権を生む背景になった格差問題が、形を変えて吹き出したといってもいい

マーク・ザッカーバーグ氏を全米中継で議会が詰問」してから1カ月近くが経過しています。「2011年」の時と「同じ視線が今度はハイテクの集積地であるシリコンバレーに向いている」のであれば、既にシリコンバレーでも「座り込み運動」が起きているはずです。しかし、その辺りの事実関係は記事からは判断できません。これでは困ります。

シリコンバレー占拠の動きが実際には起きていないのであれば、その点は明示すべきです。記事の終盤では「シリコンバレーの占拠は米マクロ景気に影響する」とも書いています。ここからは「シリコンバレーの占拠」が現実になっているような印象も受けます。しかし、実際にどういう動きがシリコンバレーで起きているのかに触れないまま、藤田様は記事を締めています。

今回の記事では全般に説明不足が目立ちました。そうした点を反省した上で、記事の完成度の向上を目指してください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「一目均衡~シリコンバレー占拠の意味
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180508&ng=DGKKZO30180420X00C18A5DTA000


※記事の評価はD(問題あり)。藤田和明編集委員への評価も暫定でDとする。

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