2018年5月21日月曜日

財政再建へ具体論語らぬ日経 原田亮介論説委員長「核心」

具体的な政策提言が苦手な書き手--。日経の原田亮介論説委員長に関してはそう判断して間違いなさそうだ。21日の朝刊オピニオン面に載った「核心~誰が将来世代を代弁? 負担分かち合う説得を」という記事を読んで、改めてそう感じた。若手記者ならともかく、論説委員長が財政再建に関して具体的な主張を展開できないとは…。
諫早湾干拓堤防道路 ※写真と本文は無関係です

記事の終りの方を見ていこう。

【日経の記事】  

19年10月に予定する消費税率の10%への引き上げについて、自民党の若手議員らの勉強会は先送りを提言した。一方、同じ自民党の「財政再建に関する特命委員会」の小委員会は正反対だ。増税に加え後期高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げることも提案している。

かつて「為政者たるもの財政家でなければならない」との信念を貫いた政治家がいた。79年の総選挙で一般消費税の導入を掲げ、翌年の総選挙の運動期間中に急逝した大平正芳元首相だ。

自民党の額賀派を引き継ぎ竹下派への大政奉還を実現した竹下亘総務会長には、大平氏に関する思い出がある。竹下登元首相が79年の蔵相就任時、当時の大平首相から説かれた言葉を口癖のようにまねしていたという。

「竹下(登)は、大平氏の口調のアーウーを交えて話すんですよ。大平氏にとって、蔵相時代に初めて赤字国債を出したのは、生涯の痛恨事だったと。だから財政再建も必然なんだと」。消費税関連法が成立したのは88年12月、大平元首相の遺志を継いだ竹下内閣でのことだった。

自民党総裁選は9月にも行われる。やみくもに緊縮財政を進めるべきだというのではない。経済環境が異なる大平政権の政策と現在を比べるのも、的外れだろう

ただ、子どもや孫の世代に借金を先送りすることで高齢者の暮らしが成り立っているのが事実だ。ならば、やはり未来の視点がほしい。国民に率直に「いま負担を分かち合おう」と説く将来世代の代弁者が出てきてしかるべきではないか


◎原田論説委員長の具体案は?

まず、昔話が長すぎる。「経済環境が異なる大平政権の政策と現在を比べるのも、的外れ」だとしたら、長々と昔を振り返る意義は乏しい。

原田論説委員長は「子どもや孫の世代に借金を先送りすることで高齢者の暮らしが成り立っている」現状を変えるべきだと考えているはずだ。ならば、昔話を削って具体論を語ってほしかった。「やみくもに緊縮財政を進めるべきだというのではない」のならば、どの程度の「緊縮財政」が望ましいのか。

そこは論じないまま「国民に率直に『いま負担を分かち合おう』と説く将来世代の代弁者が出てきてしかるべきではないか」と訴えて記事は終わる。こんな主張しかできないのならば、論説委員長のポストは誰かに譲った方がいい。

『いま負担を分かち合おう』と説く将来世代の代弁者」が登場して、次期政権を担うとしよう。その人物が「消費税率は来年から100%に引き上げます。防衛費は今の10分の1に減らし、年金支給開始年齢は100歳にします。国民のみなさん、負担を今分かち合いましょう」と提案したら、原田論説委員長は賛成できるのか。

「『やみくもに緊縮財政を進めるべきだというのではない』と記事でも書いている」と原田論説委員長は言うかもしれない。だからこそ具体論が大事だ。

将来世代の代弁者」が出てくれば問題が解決するわけではない。どの程度の財政再建が実現すれば「子どもや孫の世代に借金を先送りすること」にならないのか。そのために消費税率はどうすべきか。「未来の視点」で政策提言するとどうなるのかを原田論説委員長自身がまず示すべきだ。

最後に言葉の使い方で1つ注文を付けたい。記事には「吉岡さんは『ともすれば自分中心に物事を考えてしまうが、子孫を思いやれば、今だけよいというのは間違いだと思う』と話す」とのくだりがある。この中の「今だけよいというのは」が不自然だ。「今だけよければいいというのは間違いだと思う」とすれば違和感はない。


※今回取り上げた記事「核心~誰が将来世代を代弁? 負担分かち合う説得を
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180521&ng=DGKKZO30694980Y8A510C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。原田亮介論説委員長への評価はDで確定とする。原田論説委員長に関しては以下の投稿も参照してほしい。今回の記事と同じような問題が見られる。

「2%達成前に緩和見直すべき?」自論見えぬ日経 原田亮介論説委員長
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_77.html

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