2018年5月7日月曜日

日経「あすへの話題」に見える松本晃カルビー会長の思い込み

カルビー会長兼CEOの松本晃氏が日本経済新聞の夕刊1面に定期的に書いている「あすへの話題」を読むと「カルビーは会社をこの人に任せて大丈夫なのかな」と心配になる。まともな根拠もなく思い込みに基づいて経営判断をしているように見えるからだ。7日の「おつかれさま撲滅運動」という記事を見ながら、問題点を指摘したい。
門司港(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

「おつかれさま」。これが日本の朝の挨拶なのか! 朝から疲れていたら仕事にならない。朝の挨拶は「おはようございます」、午後に会ったら「こんにちは」だ。

こんな悪い習慣は誰がいつから始めたのだろうか。日本の多くの職場で当たり前のように使われていて、ほとんど誰も不思議に思っていない。

9年前、今の会社に会長兼CEOという名ばかり大げさな役職で入社した私はまずこんなことの改革から始めた。会社の経営状態が危機ということではなかったが、2000年代に入って以降、成長は止まっていた。利益は全く低迷していた。しかし、可能性は秘めていると確信した。大きな変革を欲していた。その手始めが「おつかれさま」「おつかれ!」を「使うな!」だった。



◎「おつかれさま」の何が問題?

個人的には「日本の朝の挨拶」に「おつかれさま」が定着している感じはない。取りあえず受け入れて、定着しているとしよう。これを「悪い習慣」だと松本氏は言い切る。だが、何が問題なのか。

朝から疲れていたら仕事にならない」としても、「おつかれさま」を「おはようございます」に切り替えると疲労がなくなるわけでもない。「朝から疲れて」いることが問題ならば、挨拶だけ変えても意味がない。

しかも「『おつかれさま』『おつかれ!』を『使うな!』」という命令は朝限定ではないようにも読み取れる。仕事が終わった後も「おつかれさま」が禁止だとしたら、さらに意味がない。

少し意地悪な指摘をすると「午後に会ったら『こんにちは』」とも言い切れないはずだ。午後7時に会った時には「こんばんは」の方がしっくり来る。

記事の後半を見ていこう。

【日経の記事】

むろん、こんな小学1年生でもできることは程なく浸透していった。次にやったことは、社内で役職名で呼ぶことの禁止だ。「部長」「常務」「社長」「会長」……。これも日本の社会に蔓延(まんえん)する悪しき文化だ。こんなことを21世紀にいまだにやっている国なんて一体どこにあるのだろうか?

欧米の会社ではお互いのファーストネームで呼び合う。CEOは新人のことを、例えば「トム」と呼ぶし、新人はCEOのことを「ビル」と呼ぶ。それを「けしからん」と叱ったり叱られたりしたという話なんて聞いたことがない。

私の変革はこんなことから始まり、少しずつ核心に近づけていった。多くの素直な従業員のお陰(かげ)で少しは改革できたはずだ。

最近、人事部の女性で西村結さんという人が「おつかれさま撲滅運動」のリーダー宣言をしてくれた。とても、嬉(うれ)しい……。


◎役職名で呼ぶのは日本だけ?

社内で役職名で呼ぶこと」も「日本の社会に蔓延(まんえん)する悪しき文化」だと松本氏は断言するが、理由は示していない。強いて言えば「こんなことを21世紀にいまだにやっている国」がないからか。だが「海外にない日本独自の文化だから禁止すべき」では理由として苦しい。
道の駅太良の展望台(佐賀県太良町)※写真と本文は無関係

そもそも「こんなことを21世紀にいまだにやっている国なんて一体どこにあるのだろうか?」と松本氏は言うが、中国や韓国では似たような習慣があるのではないか。ネットで調べた範囲では、そうした情報がたくさん出てくる。

例えば2017年2月10日付で日経も「サムスン、上司・部下も『さん』付けに 3月から役職廃止」という記事を載せている。「上司と部下が互いに『さん付け』で呼び合うようにする。役職で呼び合うことによる上意下達などの弊害をなくす狙い」と書いているので、「役職で呼び合う」文化は日本独自でもないようだ。

サムスン」にしても「役員級の幹部については従来通り、肩書で呼ぶ見通し」となっているので、社長や会長は「肩書」で呼ばれるはずだ。

こんなことを21世紀にいまだにやっている国」は日本以外にもあるし、その中には世界的な勝ち組企業も入っている。松本氏が「社内で役職名で呼ぶこと」に問題が多いと訴えたいのならば、きちんと理由を示すべきだ。記事のような説明では、単なる欧米崇拝に見える。

なお、日経の別の記事(2016年3月15日付)に出てきたカルビー上級執行役員の鎌田由美子氏は「(カルビーでは)役職にかかわらず、全員が『さん』付けで呼び合います」とコメントしている。これが事実ならば、かなり中途半端だ。

新人はCEOのことを『ビル』と呼ぶ。それを『けしからん』と叱ったり叱られたりしたという話なんて聞いたことがない」と書くのであれば、松本氏はカルビーでも新入社員に自分を「」と呼ばせてはどうか。それを受け入れる度量があれば「全員さん付け」にはならない気がするが…。


※今回取り上げた記事「あすへの話題~おつかれさま撲滅運動
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180507&ng=DGKKZO30066310S8A500C1MM0000


※記事の評価はD(問題あり)。松本晃氏への書き手としての評価は見送る。松本氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

松本晃カルビー会長の見識を疑いたくなる日経「あすへの話題」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/blog-post_20.html

0 件のコメント:

コメントを投稿