2016年9月29日木曜日

日銀担当 石川潤記者への信頼が揺らぐ日経「真相深層」

日本経済新聞の石川潤記者をこれまで高めに評価してきた。日銀関連の記事の完成度が安定していたからだ。しかし29日の朝刊総合1面に載った「真相深層~黒田総裁、こだわった『2%超』 日銀の異次元緩和、長期戦の構え 任期越える縛り、過去を教訓に」という記事を読むと、やや不安になってくる。気になったのは記事の終盤だ。
佐賀西高校(佐賀市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

日銀総裁機関説――。黒田総裁に近い幹部の間でこんな言葉がはやっている。日銀総裁はテクノクラート(専門知識のある高級官僚)にすぎず、与えられた課題(物価2%)を解くことに専念すべきだという総裁の考え方を指したものだ。

日銀総裁であるという気負いが、政策を曲げてはいなかったか。任期を意識して焦ったり、逆に遠慮したりせず、最善の判断を心がけるべきだと総裁は考えている。

金融緩和が限界に迫る一方、政府の構造改革の動きは鈍い。総裁機関説に基づけば、政府への露骨な注文を避ける黒田総裁の態度は当然だろう。だが、日銀総裁は政府にものを申さないでいいのか。総裁が投げかける問いへの答えはまだ出ていない

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日銀総裁は政府にものを申さないでいいのか」と問題提起しているのだから、記事を読む限りでは「黒田総裁は政府にものを申していない」と考えるしかない。しかし、22日の朝刊1面の記事では石川記者自身が「『構造改革を引き続きしっかりやっていただきたい』。黒田総裁は21日の記者会見でこう付け加えた」と書いている。

記者会見でこれだけ明確な発言をしているのに「日銀総裁は政府にものを申さないでいいのか」と問いかけても意味はない。既に「ものを申している」のだから。

黒田総裁が政府に注文を付けたのは21日の会見が初めてではない。例えば、2013年04月25日付でロイターはこう報じている。「黒田東彦日銀総裁は25日午後の参議院予算委員会で、国債の信用維持には政府が財政健全化の道筋をつけ、財政構造改革を進めることが重要とし、政府の取り組みに期待感を表明した」。

公の場でこれだけ発言しているのだから、安倍晋三首相との会談などでは、さらに突っ込んだ注文を付けていてもおかしくない。そのぐらいは石川記者ならば当然分かりそうなものだが、1週間前に自分で書いた記事の内容をなぜか自分で否定してしまった。

石川記者は信頼に足る書き手なのか。「総裁が投げかける問い」と同じように「答えはまだ出ていない」。


※記事の評価はD(問題あり)。石川潤記者への評価はC(平均的)を据え置くが、弱含みではある。

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