2016年9月16日金曜日

尖閣問題の解説も苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員

日経ビジネスの山川龍雄編集委員はやはり苦しい。4月18日号に「ニュースを突く(資産運用)~タンス預金は正しい選択か」という問題の多い記事を書いていたのに続いて、今回は「国際情勢」でツッコミどころ満載の解説をしている。9月19日号の「ニュースを突く~キャベツとサラミで尖閣に迫る中国」という記事の中身を見ながら、問題点を列挙してみる。
海峡ゆめタワー(山口県下関市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

中国の海洋進出は、「サラミスライス戦略」と表現することもある。精肉店からサラミソーセージを丸ごと1本盗み出すと、店主に気付かれてしまうが、薄くスライスして盗めば気付かれない。つまり中国は、相手が軍事行動に出ないギリギリの行動を繰り返し、時間をかけて南シナ海や東シナ海を実効支配しようとしている。

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尖閣問題で中国が「サラミスライス戦略」を採っているとしよう。これは、相手に気付かれずに少しずつ盗んでいく戦略なので、気付かれたら失敗だ。しかし、中国は尖閣諸島の領有権を堂々と主張している。山川編集委員も書いているように「尖閣諸島周辺で中国公船の領海侵犯が相次いでいる」し、日本も中国の動きを警戒している。これでは尖閣に関して「サラミスライス戦略」が成功する余地はない。

時間をかけて南シナ海や東シナ海を実効支配しようとしている」という説明も引っかかる。「東シナ海を実効支配」とはどういう状況を指すのだろうか。ここでは「東シナ海全域を自国の領海のように支配すること」と仮定してみる。

そうなると尖閣だけでなく沖縄本島や長崎・五島列島の周辺も中国の事実上の「領海」となってしまう。本当に中国はそんなところまで「実効支配」しようとしているのだろうか。現実的には考えにくい。

以下のくだりも引っかかった。

【日経ビジネスの記事】

小原氏は「中国は太平洋への出口として、南シナ海や東シナ海を確保しておきたい。目的は、米軍に捕捉されずに太平洋に核ミサイルを積んだ潜水艦を出せる状況を作り出すことだ」と指摘する。だからこそ、南沙諸島や尖閣は譲れない「核心的利益」なのだ。

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ここで出てくる「小原氏」は「小原凡司・東京財団研究員(元駐中国防衛駐在官)」のことだ。小原氏のコメントを信じるならば「尖閣を支配すれば潜水艦をこっそり太平洋に出せるかもしれないが、尖閣を諦めてしまえば、こっそり出るのは不可能」という状況にあるはずだ。

こちらも軍事の専門家ではないので、専門家の見方に文句を付けるのは気が引けるが、それでも小原氏のコメントは信用できない。

例えば2015年9月9日付で共同通信は以下のように伝えている。

【共同通信の記事】

海洋進出を強める中国海軍対策で海上自衛隊と米海軍が、沖縄を拠点に南西諸島の太平洋側を広範囲にカバーする最新型潜水艦音響監視システム(SOSUS)を敷設、日米一体で運用していることが9日、防衛省、海自への取材で分かった

東シナ海、黄海から太平洋に出る中国潜水艦を探知可能。冷戦時代、日米が津軽、対馬海峡に旧ソ連潜水艦監視用の旧型SOSUSを設置したことは判明していたが、対中国にシフトした新システムの存在が明らかになったのは初めて。

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現時点で「海上自衛隊と米海軍」が「東シナ海、黄海から太平洋に出る中国潜水艦を探知可能」ならば、尖閣の領有権がどうなろうと「米軍に捕捉されずに太平洋に核ミサイルを積んだ潜水艦を出せる状況を作り出すこと」はできない。

共同通信によると「太平洋の最新型SOSUSは、沖縄県うるま市の米海軍ホワイトビーチ基地内にある海自沖縄海洋観測所が拠点」なので、「米軍に捕捉されずに太平洋に核ミサイルを積んだ潜水艦を出せる状況」を中国が作りたいのならば、沖縄にある米軍基地の能力を削ぐ必要がある。

共同通信の記事が事実ではないとしても、こっそり太平洋に出られるかどうかは相手の監視能力次第だ。尖閣の実効支配は、この問題に限って言えば「核心的」ではないはずだ。

山川編集委員の専門分野が何なのかは分からないが、「資産運用」でも「国際情勢」でもきちんとした記事にはなっていない。書き手として能力に疑問符が付くのは間違いないだろう。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた山川龍雄編集委員への評価はDで確定とする。山川編集委員については「日経ビジネス『資産運用』は山川龍雄編集委員で大丈夫?」も参照してほしい。

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