2016年9月1日木曜日

日経「点検・安倍外交(上)」での中国に関する奇妙な説明

8月30日から始まった日本経済新聞朝刊政治面の「点検・安倍外交」がどうも怪しい。説明がご都合主義と言えばいいのだろうか。まずは初回の「(上) 『日中互恵』歯車回るか 尖閣誤算、不信の連鎖」で引っかかったくだりを見てほしい。
皇居周辺の桜(東京都千代田区)※写真と本文は無関係です

【日経の記事(8月30日)】

だが中国も日本外交の弱点を突く。北朝鮮の3日の弾道ミサイル発射を巡る国連安全保障理事会の非難決議案は、中国が難色を示し廃案に。中国は自らの協力なしに北朝鮮包囲網をつくれないことを日本に見せつけた

中国の「壁」を越えるため、日本の安保理常任理事国入りは悲願だ。27、28両日にケニアで開いたアフリカ開発会議(TICAD)では国連の大票田、アフリカ各国首脳と相次ぎ会談し、常任理事国入りへの支持を求めた。支持する声もあったが、拒否権を持つ中国との良好な関係なしに、常任理事国入りは不可能だ。

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これを読む限り「北朝鮮の3日の弾道ミサイル発射」に関して、国連安保理は厳しい姿勢を打ち出せていないのだろう。しかし、「中国、G20控え北朝鮮ミサイル非難で軟化 安保理報道声明、国際社会と協調演出」という28日付の記事では以下のように報じている。

【日経の記事(8月28日)】

国連安全保障理事会は26日、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの発射を強く非難する報道声明を発表した。今月3日の弾道ミサイル発射時には、中国が難色を示して声明を取りまとめられなかった。だが中国は20カ国・地域(G20)首脳会議の自国開催を間近に控え、国際社会との協調姿勢を演出するために軟化に転じたとみられる

声明は日本時間24日朝のSLBMに加え、7月のSLBM、今月3日の弾道ミサイルなど計4回のミサイル発射を対象に「重大な安保理決議違反」として非難した。

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8月11日付では「国連外交に中国の壁 安保理、ミサイル非難声明を断念 」という記事が出ているので、当初は「点検・安倍外交」で言うように「非難決議案は、中国が難色を示し廃案に」なったのかもしれない。しかし、その後に北朝鮮を非難する報道声明を発表したのであれば、話は変わってくる。「点検・安倍外交」の取材班が知らなかったのか、知っていて故意に触れなかったのかは微妙だが…。

中国の『壁』を越えるため、日本の安保理常任理事国入りは悲願だ」との説明も気になる。取材班では「日本が安保理常任理事国入りすれば、中国の『壁』を越える力を持てる」と考えているようだ。しかし、日本が常任理事国になっても、中国が常任理事国として持つ拒否権という「」を越えられるわけではない。地理的に考えても、中国抜きで「北朝鮮包囲網」を作れないのは自明だ。これも日本が常任理事国になれば解決する問題ではない。

この連載の奇妙な説明は(上)だけにとどまらない。(中)(下)については別の投稿で触れる。


※(上)の評価はD(問題あり)。

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