2016年9月24日土曜日

日経らしい雑な作り「ウエストHD、東南アで省エネ事業」

23日の日本経済新聞朝刊企業面に「ウエストHD、東南アで省エネ事業 三菱UFJ銀などと」という完成度の低い記事が出ていた。記事の全文を見た上で問題点を列挙してみたい。
中津城(大分県中津市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

太陽光発電施工大手のウエストホールディングス(HD)は三菱東京UFJ銀行グループなどと組み、東南アジアで企業の省エネ事業を始める。タイで新会社を設立し、コンサルティングから設備の提供まで手掛ける。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の年内発効が有力となり東南アジアでも省エネ需要が拡大するとみて、日本のノウハウを海外で活用する。

タイで省エネ支援会社を資本金3000万円で設立した。ウエストHDが49%、三菱東京UFJ銀行グループのタイ投資会社が10%、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の現地投資会社が各8%ずつ出資した

まずは現地の日系法人の事務所や工場に売り込む。太陽光発電設備や発光ダイオード(LED)照明、高効率の空調機器を提供する。ウエストHDが機器の導入費用を全額負担する代わりに、省エネにより削減できた光熱費の一部を受け取る

現地の金融機関と関係が深い各行のネットワークを通じて、顧客の情報を集める。銀行と組むことで、支援先企業が発電設備を設ける際に資金調達面での協力がしやすいとみている。顧客は光熱費を半分以下に抑えられ、契約期間終了後は機器をそのまま引き取れる。

今後は日系企業だけでなく、現地企業にも売り込む。将来は他の東南アジア諸国へも省エネ支援事業を広げ、2018年度までに新会社で累計100億円の受注を目指す。ウエストHDが海外進出するのは初めて。日本企業ではNTTファシリティーズも東南アジアで省エネ支援サービスを始めている。

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◎いつから「始める」?

東南アジアで企業の省エネ事業を始める」という話なのに、いつから始めるのか記事を最後まで読んでも分からない。「When」を抜く日経の“伝統芸”がここにも見える。ついでに言うと「なぜ東南アジアなのか」も欲しい。「温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』の年内発効が有力」というのは東南アジア固有の要因ではないはずだ。


◎出資比率 残りの「17%」は?

ウエストHDが49%、三菱東京UFJ銀行グループのタイ投資会社が10%、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の現地投資会社が各8%ずつ出資した」のであれば、残りの17%はどうなったのか。「不明」でもいいから、残る出資者に触れてほしい。


◎「支援先企業が発電設備を設ける」?

ウエストHDが機器の導入費用を全額負担する代わりに、省エネにより削減できた光熱費の一部を受け取る」という仕組みならば、顧客は資金を用意する必要がない。しかし、「銀行と組むことで、支援先企業が発電設備を設ける際に資金調達面での協力がしやすいとみている」とも書いている。これはよく分からない。ウエストHDのサービスとは別に「支援先企業が発電設備を設ける際」という話かもしれないが、記事の説明だけでは何とも言えない。


◎「まずは日系」で「今後は日系以外にも」?

まずは現地の日系法人の事務所や工場に売り込む」と書いてあるので、当面は日系企業に絞って売り込んでいくのだと思っていたら、「今後は日系企業だけでなく、現地企業にも売り込む」と矛盾するような説明が出てくる。

推測すると、新会社は設立済みなので、既に売り込みは始めているのだろう(その場合、「省エネ事業を始める」ではなく「省エネ事業を始めた」とすべきだ)。当初は日系企業を中心に営業活動をしてきたが「今後」は日系以外にも手を広げようとしている--。そう考えると辻褄は合う。実際どうなのかは分からないが、いずれにせよ記事の説明に問題があるのは間違いない。

この記事は企業面のワキ(2番手のニュース記事)になっている。2番手の記事でこれほど完成度が低いのは日経らしいとも言えるが、褒められた話ではない。このままレベルの低い記事を垂れ流し続けるつもりなのか。特に企業報道部の部長・デスクには奮起を促したい。


※記事の評価はD(問題あり)。

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