2016年9月10日土曜日

まず「汝自身を知れ」日経ビジネス飯田展久編集長に助言

「自分たちのことを棚に上げて、よく言えたものだ」と悪い意味で感心した。日経ビジネスの飯田展久編集長が9月12日号に「編集長の視点~テレビは裸の王様か 既得権からの解放を」という記事を書いている。この件で飯田編集長に助言するならば「汝自身を知れ」だろうか。

まずは、記事の一部を見てみよう。
柳川の川下り(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

放送免許を持っていることや、長らく「メディアの王様」と称されたことで、テレビ局にも様々な既得権益が生まれてきたのも事実です。視聴者や広告主にテレビ離れが起こっているのは、既得権益にあぐらをかき、コンテンツ製作力が落ちてきていることも背景にあるような気がしてなりません。特に地上波のテレビ番組は魅力を失っています。視聴率という不思議な物差しで優劣を決める従来型の発想から抜け切れない限り、凋落傾向に歯止めはかからないでしょう。

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放送免許を持っていることや、長らく『メディアの王様』と称されたことで、テレビ局にも様々な既得権益が生まれてきたのも事実です」と書くと、日経ビジネスは既得権益と無関係のような印象を受ける。しかし、雑誌は再販売価格維持制度の対象だ。独占禁止法の適用除外となっている。これは新聞も同様だ。つまり、飯田編集長の出身母体であり日経BP社の親会社である日経もこの恩恵を受けている。

テレビ局について「既得権益にあぐらをかき、コンテンツ製作力が落ちてきている」と指摘するのならば、自分たちはどうなのか。「既得権益は得ているが、コンテンツ製作力は落ちていない」という場合、なぜテレビ局は別なのか。

ちなみに、個人的には日経ビジネスのコンテンツ製作力は落ちていないと思う。低位安定だ。日経ビジネスは記事中のミスを次々と握りつぶすし、読者から誤りの指摘を受けても平気で無視している。そんな雑誌の編集長に「特に地上波のテレビ番組は魅力を失っています」などと、他のメディアへの口出しをする資格があるのか。そんな雑誌の編集長だからこそ、自分たちのことは棚に上げて物が言えるのかもしれないが…。

視聴率という不思議な物差しで優劣を決める従来型の発想から抜け切れない限り、凋落傾向に歯止めはかからないでしょう」というくだりにも問題がある。

これはズルい書き方だ。「視聴率」で優劣を決めるやり方はダメだと言っているのだが、根拠を述べていない。「不思議な物差し」と言うだけで、どこがどう「不思議」なのかは素通りしている。

「脱・視聴率がテレビ局の凋落に歯止めをかける条件」と主張するだけで、視聴率の代わりに何を使えばいいのかは教えてくれない。

また、見出しには「既得権からの解放を」と出てくる。これは本文のどこから取ったのか不明だが、「既得権益」の具体例としては「放送免許を持っていること」ぐらいしか見当たらない。

なので、飯田編集長の主張に従って、あるテレビ局が放送免許の返上を決めて「既得権益」から解放されたとしよう。さらに、「視聴率は今後一切、番組作りやCM単価決定の参考にしない」と宣言する。その場合、「凋落傾向にある業界の中で、このテレビ局だけは衰退を免れそうだ」と思えるだろうか。それとも凋落に拍車が掛かりそうだろうか。

9月12日号の特集のタイトルは「テレビ地殻変動」。飯田編集長が書いた「編集長の視点」もこの特集を受けたものだ。特集は全部読んだが、「編集長の視点」で残った疑問は解消しなかった。


※記事の評価はD(問題あり)。飯田展久編集長への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。F評価については「『逃げ切り』選んだ日経ビジネス 飯田展久編集長へ贈る言葉」を参照してほしい。

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