鎮西身延山 本佛寺(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です |
1面の記事で菅野幹雄編集委員は以下のように述べている。
【日経の記事】
安倍晋三首相が再び消費税の増税を延期する。力を欠く個人消費、中国ら新興国の不安といった逆風を受けた判断とはいえ、増税できる環境を整えられなかった首相の責任は重い。弱々しい日本の経済、財政、そして政治への信頼の回復へ時間の空費は許されない。
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「増税できる環境を整えられなかった首相の責任は重い」とは書いているが、増税再延期の是非には触れていない。さらに続きを見ていこう。
【日経の記事】
「再び延期することはない。ここではっきりそう断言します」。2014年11月の安倍首相の言葉だ。この1年半は一体何だったのか。「こんな強い政権で増税できなければ、他ではおよそできない」。小林喜光経済同友会代表幹事の失望はもっともだ。
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「失望はもっともだ」と書いているので、菅野編集委員は再延期反対の立場なのかなと思わせる。しかし、そういう流れにはならない。
【日経の記事】
市場は増税再延期を完全に織り込み、世論調査も増税反対の声が圧倒的に多い。今の景気では増税に耐えられないと多くの人が感じている。アベノミクスで強く経済を押し上げ、先進国で最悪の財政を徐々に立て直す筋書きは大きく狂った。
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「今の景気では増税に耐えられないと多くの人が感じている」との記述から「菅野編集委員は再延期やむなしとの考えなのか」と今度は感じる。しかし、賛否を判断するための材料はこれで出尽くしだ。後は「2年半後に本当に増税できる環境を整えるには、今すぐ底力を鍛え直す経済政策を幅広く動員しなければ、間に合わない」「全てに真剣に取り組まないと活路は開けない」などと、今後の政府の対応に期待して記事を終えている。
「再延期に賛成」と言うと「財政再建はどうする」との問いに答える必要が出てくる。「反対」の立場に回れば「景気や市場に与えるマイナスの影響をどう考えるのか」と突き付けられる。菅野編集委員が判断に迷うのは理解できる。
だからと言って「立場を曖昧にしたまま記事を書こう」と考えるのは、あまりに安易だ。菅野編集委員は記事の最後で「摩擦やあつれきを恐れずに改革を進め、将来に安定した経済と財政を引き継ぐ覚悟があるのか。『アベノミクスのエンジンを最大限にふかす』と力説する首相に問いたい」と述べている。ならば菅野編集委員にも問いたい。「消費税の増税再延期に関して自らの賛否を明らかにした上で、日本の進むべき道を指し示す覚悟があるのか」と。
その程度のことができないのに、首相に覚悟を問うても説得力はない。
増税再延期に関して、さらに逃げ腰なのが2日の社説だ。「参院選でアベノミクスに国民の審判を」というタイトルからも分かるように、増税再延期の是非を論じることから完全に逃げている。増税再延期に絡むくだりを見ていこう。
【日経の社説】
通常国会が閉幕し、与野党は夏の政治決戦に向けて走り出した。取り沙汰された衆参同日選にはならなかったが、参院選単独でも国民にとって大事な審判の機会であることに変わりはない。何が争点で、何を基準に判断すればよいのか。初めて投票する18歳にもわかりやすい選挙戦を期待したい。
有権者が最も重視すべきは日本経済の先行きだ。安倍晋三首相は記者会見で「アベノミクスを加速させるのか、逆戻りさせるのか」と自ら争点を設定した。
個人消費を腰折れさせないためだ、として消費増税の2年半先送りを表明した。その理由として日本経済は順調だが、世界経済に不安があることを強調した。民進、共産など野党は「アベノミクスの失敗が明白になった」と内閣総辞職を求めている。
どちらの言い分に理があるのかを問う「アベノミクス選挙」である。参院選は政権選択選挙ではないが、有権者も今回の参院選は軽んじずに1票を投じたい。
不安なのは野党も増税先送りを主張しており、違いがはっきりしないことだ。政治はいまだけをみればよいわけではない。財政再建の見通しはどう立てるのか。膨らむ社会保障費の財源をどう手当てするのか。長期的な展望をきちんと示せる政党を応援したい。
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「増税の是非は論じたくない」という論説委員の声が聞こえてきそうな内容になっている。社説では「増税が再延期になりましたね。この問題に関してよく考えた上で参院選の投票に臨みましょう」と呼びかけているだけだ。公約違反と言える増税再延期が決まったのに、それをどう評価するか社論を明らかにできないのであれば、社説は廃止した方がいい。社会への影響力は減退しているし、記事としての完成度も低いものが多い。続ける理由はないはずだ。
※1面の記事の評価はC(平均的)、社説の評価はD(問題あり)とする。暫定でCとしていた菅野幹雄編集委員への評価はCで確定させる。
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