2016年6月18日土曜日

疑問多い日経「日米同時上場 LINE、三度目の正直」(1)

18日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「真相深層~LINE、三度目の正直 時価総額6000億円、来月に日米同時上場 東証との対立乗り越え」は色々と疑問の残る内容だった。執筆を担当した川上穣、堤正治、井川遼の各記者はきちんと状況を理解しているのだろうか。記事の内容に沿って、気になる点を列挙してみたい。
震災後の熊本城(熊本市)※写真と本文は無関係です

◎親会社が買収されても大丈夫な「資本構成」?

【日経の記事】

無料対話アプリ大手のLINEが7月15日、東京証券取引所に株式を上場する。時価総額は約6000億円と今年最大の新規上場になる見通しで、国内初のニューヨーク証券取引所(NYSE)との同時上場と話題は豊富だ。しかし、東証との対立やM&A(合併・買収)の失敗など誤算が続き上場計画は迷走した。3年越しで実現する上場はLINEにとって「三度目の正直」になる。

 「向こうが考えを改めないなら、こちらも一歩も前に進めない」。東証の上場審査を担当する日本取引所グループの自主規制法人。昨年から今年にかけて、毎月の理事会はLINEの上場計画を巡り紛糾した。

東証も大型上場は喉から手が出るほど欲しい。それでもLINEが繰り出した「禁じ手」を看過できず、首を縦に振らなかった。

LINEは親会社の韓国ネイバーに対し通常の10倍の議決権を与える特別な株式(種類株)を発行する計画を提出した。LINEの取締役も種類株を保有できる仕組みにし、仮に親会社が買収された場合でもLINEの経営権を手にできない資本構成にしようとした。つまり買収防衛策だ

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LINEは種類株の発行によって「仮に親会社が買収された場合でもLINEの経営権を手にできない資本構成にしようとした」らしい。そのために「LINEの取締役も種類株を保有できる仕組み」にするのは納得できる。しかし「親会社の韓国ネイバーに対し通常の10倍の議決権を与える特別な株式(種類株)を発行する」のがよく分からない。

種類株の発行によってネイバーがLINEの上場後も議決権の過半を持ってしまうと、ネイバーが買収された場合、LINEの経営権も持っていかれてしまうはずだ。それを防ぐためにLINEの取締役が種類株保有によって議決権の過半を持てば、ネイバーが買収されても経営権は手放さずに済む。しかし、そこまでやるのなら買収防衛策はそれで十分だ。ネイバーに種類株を持たせる必要はない。

例えば、種類株の発行によってLINEの議決権比率がネイバーが30%、LINE取締役30%となる場合はどうだろう。ネイバーを買収した企業が市場でLINE株を買い付けて20%強の議決権を追加で得れば、やはりLINEの「経営権」を手にできる。結局、「親会社が買収された場合でもLINEの経営権を手にできない資本構成」とはどんなものかイメージできなかった。何か重要な点を見逃しているのかもしれないが…。

記事には他にも理解に苦しむ説明が出てくる。それらについては(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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