2016年6月4日土曜日

日経女性面「34歳までに2人出産を政府が推奨」は事実?

34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべし」と政府は日本の女性に推奨しているのだろうか。にわかには信じ難い。だが、4日の日本経済新聞朝刊女性面に詩人・社会学者の水無田気流氏が書いた「女・男 ギャップを斬る『女性活躍』掲げれど 音速の人生設計、まるでF1」というコラムではそう言い切っている。
キャナルシティ博多(福岡市博多区) ※写真と本文は無関係です

日経には以下の問い合わせを送っておいた。

【日経への問い合わせ】

「女・男 ギャップを斬る」というコラムに関してお尋ねします。記事には「たとえば34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべしという、政府推奨の理想的ライフコースを再現すると、次のようになる」との記述があります。しかし、常識的に考えて、政府が「34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべし」と国民に推奨するとは思えません。実際に「これが日本女性の理想コースですよ」と提示すれば、大きな反発を招くでしょう。色々と調べてみましたが「34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべしと政府が推奨している」と確認できる情報は見当たりませんでした。記事の説明は正しいのでしょうか。正しいとすれば、何を根拠に「34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべしと政府が推奨している」と判断したのでしょうか。

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34歳までに」というのは以下の件が基になっていると思われる。日本テレビの記事を引用する。

【日本テレビの記事(2013年5月29日)】

少子化対策を議論する内閣府の有識者会議は28日、待機児童対策の推進や男性の働き方の見直しなどを求める提言をまとめた。一方で、「女性が年齢とともに妊娠しにくくなる」との科学的知識を伝える「女性手帳」の配布も議論されたが、提言には盛り込まれず。

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この件に関しては「2013年には女性が35歳を過ぎると妊娠・出産しにくくなるとの啓発目的で検討された『女性手帳』が、当の女性たちからは『余計なお世話』と立ち消えとなった」と水無田気流氏も日経の記事で触れている。有識者会議の提言にさえ盛り込まれていないとすれば、「政府が推奨」の根拠にはなり得ない。

仮に「女性が35歳を過ぎると妊娠・出産しにくくなる」と政府が啓発したとしても、それを「34歳以下での妊娠・出産を推奨」と理解するのは間違いだ。例えば「タバコには健康を害する恐れがあると周知すること」と「禁煙の推奨」には距離がある。害の周知に関しては「喫煙するかどうかは個人(ただし大人)の自由だが、危険性はきちんと理解した上で判断してほしい」との趣旨だと理解すべきだ。

2人以上産み育てつつ就労継続すべし」については、さらに分からない。希望出生率1.8の実現を政府が目指しているのは確かだが、これに関する資料を見ると「2014 年の合計特殊出生率は 1.42 に止まっているのに対して、国民一人ひとりの結婚、出産、子育てに関する希望がすべてかなえられる環境が整備されれば、希望出生率 1.8 の実現へとつながっていく」と書いてある。「これを2人以上産み育てるべし」と解釈するのは無理がある。

しかも水無田気流氏は「34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべし」と書いており、3つの条件が重なる状況を「政府推奨の理想的ライフコース」と呼んでいる。この場合「3つの条件を全て満たすように政府が推奨している」との状況が必要になる。

自分で調べた範囲では、記事の説明はかなり怪しいと思えた。今回の問い合わせは、女性面に載っているメールアドレスにも送っている。回答があれば紹介したい。


※記事の評価はD(問題あり)。今回の記事については、他にも問題が目立つ。それらは「日経女性面に自由過ぎるコラムを書く水無田気流氏」で取り上げる。筆者に対する評価もそこでしたい。

追記)結局、回答はなかった。

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