鎮西身延山 本佛寺(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です |
◎種類株の問題はどうなった?
【日経の記事】
子会社の上場はただでさえ議論を呼びやすい。さらに種類株まで認めれば、LINE株を購入する株主の権利がないがしろにされる懸念がある。東証は種類株を頑として受け入れなかった。
LINEが最初に東証に上場申請したのは2014年7月に遡る。この時から種類株を巡る東証との対立が始まっていた。そこへもう一つの誤算が重なる。親会社からの横やりだ。
「今、上場するのは適切ではない」。ネイバー創業者の李海珍(イ・ヘジン)氏は、上場計画が具体化すると周囲にこう漏らすようになった。日本で圧倒的な利用者を誇るLINEも、海外では類似アプリとの競合が激しい。海外展開は思うように進まず、李氏は経営方針を見直すべきだと主張した。
LINE側は最高財務責任者らが計画通りに上場し成長資金を調達すべきだと訴え、上場時期を巡りグループ内の意見対立が目立つようになる。東証との社長面談まで進んでいた14年の上場計画は9月に見送られた。
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この記事では、種類株の問題が上場への「最大の障壁」だったと書いている。「LINEが最初に東証に上場申請したのは2014年7月に遡る。この時から種類株を巡る東証との対立が始まっていた」ようだ。なのに「東証との社長面談まで進んでいた14年の上場計画」は「親会社からの横やり」で頓挫したらしい。親会社さえ反対しなければ、14年の上場は実現していたかのような書き方になっている。「この時から種類株を巡る東証との対立が始まっていた」のならば、親会社の横やりがあろうとなかろうか、上場は無理だったのではないか。
親会社の話も腑に落ちない。上場申請した時点では親会社も賛成していたのに、その後に反対へ回ったという話だろうか。しかし「海外では類似アプリとの競合が激しい。海外展開は思うように進まず」といった状況は上場申請した後で急に生まれたわけでもないだろう。この辺りの経緯も謎だ。
◎この時も種類株の問題は?
【日経の記事】
翌年4月、LINEは改めて上場を申請する。秋の上場を目指したが誤算は続いた。LINEは15年春に米マイクロソフトから海外の音楽配信事業を買収した。しかし、この分野には国内外のネット大手が競うように参入してきた。このサービスで減損損失が発生し、15年12月期は79億円の最終赤字になる。2度目の上場計画は10月に凍結を余儀なくされた。
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2回目の上場計画が「凍結を余儀なくされた」のは15年12月期に「79億円の最終赤字」になったからだと書いている。しかし、この時点でも種類株の問題は解決に至っていないはずだ。だったら、業績がどうだろうと上場できないのではないか。
◎NY上場だけでよいのでは?
【日経の記事】
事態が動いたのは今年3月だ。LINEが「種類株を取り下げます」と東証に申し入れた。
なぜ撤回したのか。その理由は日米同時上場にある。「世界に挑戦しツイッターやフェイスブックと同じ基準で評価してもらいたい」との思いから始めた米国上場は、順調に準備が進んでいた。同時上場に向けた最後で最大のハードルが東証だ。かたくなな姿勢を崩さない東証に対して「上場できないのなら種類株を取り下げよう」(LINE幹部)との声が社内で高まった。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の競争環境も変わった。14年はSNSバブルといわれ、LINEの時価総額は1兆円超と算定された。しかしバブルは去った。上場で知名度を高めるとともに成長資金を手にすることが最優先の課題になった。
種類株撤回で「最大の障害が取り払われた」(自主規制法人幹部)。LINEは昨年10月に社外取締役を導入し、東証が重視する企業統治に配慮する姿勢も見せた。今年5月31日の理事会で自主規制法人はLINE上場にゴーサインを出した。
上場によってLINEは1000億円の資金を手にする見通しだ。ある幹部は「持続可能な成長を目指す意味で、いいタイミングだ」と語る。ようやく実現する日米同時上場でLINEは成長を加速できるか。その成否は今年の新規公開市場の行方も左右する。
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「世界に挑戦しツイッターやフェイスブックと同じ基準で評価してもらいたい」との思いがあり、しかも種類株の発行を望むのならば、米国上場だけでいいのではないか。「上場で知名度を高める」効果は海外ではあるかもしれないが、日本では上場しなくても十分すぎる知名度を既に得ている。「成長資金を手にすること」も米国上場で可能になる。
記事を読む限りでは「種類株発行を取り下げてまで日本での上場になぜこだわるのか」が見えてこない。実際には日本での上場が必要な事情があって、だからこそ種類株を諦めたのだろう。記事を担当した川上穣、堤正治、井川遼の各記者は事情が分からないのか、知っているのにきちんと説明できないのか。もう少し「真相深層」というタイトルにふさわしい中身にしてほしかった。
※記事の評価はD(問題あり)。川上穣記者と堤正治記者への評価はDを据え置く。井川遼記者は暫定でDとする。川上記者に関しては「読む価値を感じない日経 川上穣記者の『スクランブル』」も参照してほしい。
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