2016年2月18日木曜日

「個人向け国債」を誤解? 日経ビジネス杉原淳一記者(2)

日経ビジネス2月15日号の「時事深層~金利消滅、さまよう個人マネー」という記事で、筆者の杉原淳一記者は「財務省は2月3日、10年固定金利の個人向け国債の募集を初めて中止した」と書いていた。これは個人でも買える「新型窓口販売」のことで、「個人向け国債」とは違うのではないかとの問い合わせを日経BP社にした。4日経っても回答がないので、答えは「無視」だと思われる。

湯の坪街道(大分県由布市) ※写真と本文は無関係です
それはひとまず置いて、ここでは杉原記者がなぜこういう書き方をしたのか考えたい。個人的に有力だと思うのが「日経の記事を参考にしてビジネスの記事を書いたから」だ。日経では、自社媒体の過去の記事に出ていた情報を確認せずにそのまま使って間違いを繰り返すことがよくある。今回は2月4日の「マイナス金利、国債に影響 窓口販売停止」という日経の記事が気になる。この記事では以下のように書いている。

【日経の記事】

3日に財務省が募集をやめたのは個人が地銀などの窓口で購入できる「新型窓口販売」と呼ぶ国債。利回りがマイナスになる見通しで需要が見込めなくなった。満期までの期間が2年と5年のものはすでに販売をやめており、窓口販売そのものが停止する。

金利の下限を0.05%に設定している変動金利型の10年債の販売は続ける

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この記事自体に間違いは見当たらない。ただ、「金利の下限を0.05%に設定している変動金利型の10年債の販売は続ける」という説明は引っかかる。これは本物の「個人向け国債」の話だろう。ただ、記事の流れからは新窓販国債に「変動10年」があると取るのが自然だ。新窓販国債について「個人が地銀などの窓口で購入できる」と「個人向け」を匂わせる書き方をしたこともあり、これを見た杉原記者が「今回募集を止めたのは『10年固定金利の個人向け国債』」と誤解した可能性も捨て切れない。

ちなみに朝日は「新型窓販国債募集、10年物を中止 マイナス金利影響」という記事で「個人や地方自治体など向けに販売を予定していた10年物の『新型窓口販売国債』の募集を中止する」と書いている。これを見ていれば「個人だけに売るわけではない」と杉原記者も判断できただろう。日経の言う「変動金利型の10年債」についても、「金利に下限を設けている『個人向け国債』は、販売を続ける」と朝日では新窓販国債とは区別して書いていた。この辺りに両紙の力量の差が出ている。

上記の話はあくまで想像だが、「日経の記事の書き方が上手くないので、それを読んだ日経グループ内の記者が誤解をして…」という展開はありがちなので注意が必要だ。

ついでに、4日の日経の記事について1つ指摘しておくと、「『新型窓口販売』と呼ぶ国債」という表現はかなり不自然だ。「新型窓口販売」は販売方式の名前であり、国債そのものではない。今回の場合、「『新型窓口販売国債』と呼ぶ国債」「『新型窓口販売』と呼ぶ方式で売る国債」などとした方が良い。


※今回の記事への評価はD(問題あり)。「回答例」でも触れたように、「新窓販国債」を「個人向け国債」と呼んだ件は、「広義では新窓販国債も個人向け国債だ」との弁明が可能なので、杉原淳一記者への評価は最低ランクとせずD確定に留める。ただ、間違い指摘に回答しないのは、メディアにとっても書き手にとっても大きなマイナス評価になると強調しておきたい。

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