2016年2月23日火曜日

原油需要伸びるのに「需要減」 日経国際面 見出しに誤り?

新聞社の整理部は、言ってみれば裏方だ。記事を書くのではなく、見出しや紙面レイアウトを考えるのが仕事だ。ただ、少なくとも日本経済新聞社の編集局に限って言えば、「優れた紙面を作ろう」と最も純粋に考えている部署だと思える。経済部や企業報道部と違って、いずれ発表されるニュースを半日でもいいから早く書くといった些事に心を奪われずに済む面がプラスに作用しているのだろう。
両筑橋からの筑後川(福岡県久留米市・朝倉市)
           ※写真と本文は無関係です

ここからは23日の日経朝刊国際面のトップ記事「原油、今年も供給過剰~IEA見通し、経済減速で需要減 価格低迷、長期化へ」の見出しに注文を付けていく。ただ、「見出しに責任を負う整理部は、日経の紙面レベルの低さに関して責任の軽い部署ではある」と最初に強調しておきたい。

今回の記事では「経済減速で需要減」という見出しが間違いの公算大だ。記事によると、原油需要は2015年にかなり伸びているし、16年以降も増加が続く見通しだ。

価格低迷、長期化へ」も間違いとは言わないが、読者に誤解を与える見出しになっている。

この件では日経へ問い合わせをした。日経のいつものパターンであれば回答は届かないだろう。「国際面担当の整理部面担・デスクに届けてください」とは付け加えておいたが…。

【日経への問い合わせ】

23日の日経朝刊国際面に載った「原油、今年も供給過剰~IEA見通し、経済減速で需要減 価格低迷、長期化へ」という記事についてお尋ねします。

見出しでは「経済減速で需要減」となっていますが、記事に付いたグラフを見ると、2016年から21年まで需要増加が続く見通しとなっています。記事の中で原油需要に関して「21年までの伸びは年間平均120万バレルにとどまる。景気減速で需要が鈍るからだ」(※「需要が鈍る」は舌足らずな表現ですが、筆者は「需要の伸びが鈍る」と言いたいのでしょう)との説明はありますが、「需要減」と解釈できる記述は見当たりません。見出しの「需要減」は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとすれば、その根拠を教えてください。

「価格低迷、長期化へ」という見出しも疑問が残ります。この見出しは「17年は需給がほぼ釣り合うが、積み上がった在庫が価格を押し下げ、価格低迷は長期にわたる可能性を示した」という記述から取ったのでしょう。関連記事でもビロルIEA事務局長は「中国経済は6%をやや上回る成長を続けると考えているが、一段と減速感が強まれば、原油価格の低迷が長期化する可能性がある」と述べてはいます。

しかし、価格低迷が長期化する可能性を示したからと言って「価格低迷、長期化へ」と見出しに取ると誤解を与えかねません。ビロル氏はインタビュー記事の中で「今後5年間は原油消費が拡大し20年までには世界の需要が初めて日量1億バレルに到達するとみている。価格も1バレル80ドルに向かって上昇すると予想される」と述べています。NHKの記事によると同氏は「ことしはまだ低迷が続くが来年には上昇し、2020年には1バレル=80ドルに達するだろう」と語っているようです。つまり「原油価格の低迷は長期化しない」というのがIEAのメーンシナリオなのです。

今回の記事で言えば、見出しは「価格低迷、長期化へ」というより「価格、長期的には上昇へ」なのです。「低迷」を打ち出したい場合でも「価格低迷、長期化も」ぐらいが限界でしょう。

見出しの「需要減」に関しては回答をお願いします。1週間が経過しても回答がない場合は、記事に誤りがあったと断定させていただきます。

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※記事の評価はD(問題あり)。ただ、見出しの問題が主なので、今回は書き手に対する評価を見送る。

追記)結局、回答はなかった。

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