2016年2月12日金曜日

鈴木敏文セブン&アイ会長に相変わらず甘い週刊ダイヤモンド

週刊ダイヤモンドは鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOにいつも甘い。これまでは“鈴木教信者”とも言える田島靖久副編集長が中心となって、これでもかと鈴木氏を持ち上げる記事を書いてきた。今回(2月13日号)の筆者は大矢博之記者。田島副編集長ほどではないが、やはり甘さが目立った。

大分川と由布岳(大分県由布市)※写真と本文は無関係です
今回の記事のタイトルは「ヨーカ堂社長交代の真相と改革の行方~鈴木セブン&アイ会長 初激白!」。ヨーカ堂問題で鈴木氏にインタビューするならば、「鈴木氏本人の責任はどうなんだ」と迫るべきだ。最も上の立場で長くヨーカ堂に関わっているのに、まともに責任を取らず人のせいにばかりにしているのが鈴木氏だ。ここに斬り込まないメディアに存在意義などない(御用メディアとしては別だが…)。

まずは、大矢記者が書いた「2年持たずしてエースが辞任 ヨーカ堂トップ交代の舞台裏」という分析記事の問題点を指摘したい。

【ダイヤモンドの記事】

ヨーカ堂は、期初こそ100億円の黒字計画を立てていたが、上半期だけで90億円の赤字を計上。それでもセブン&アイHDの村田紀敏社長は、昨年10月の決算発表の場で、「構造改革の手応えを感じている」と強調し、下半期で100億円の営業利益を出すことで、通期で黒字を確保できると強気の姿勢を崩さなかった。

しかし、ふたを開けてみれば第3四半期の3カ月間だけで赤字は54億円も拡大。これには鈴木会長も「落ち込みが急激過ぎた」と落胆、「結果が数字となって出てしまっている」と戸井氏の辞任を了承せざるを得なかったと説明する。

(中略)果たしてヨーカ堂は再生できるのか。一筋の光明は、店長に商品の仕入れから人事の権限まで委譲する「独立運営店舗」の取り組みが効果を発揮しつつあることだ。

本部主導の品ぞろえではなく、立地に合った商材の強化で売り上げを伸ばしたアリオ上尾店の成功を受け、昨年5月には取り組みを全185店へと拡大。「方針は間違っていない。全体として良い方向に進んでいる」と鈴木会長は自信を見せる。

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記事によると「『独立運営店舗』の取り組みが効果を発揮しつつある」らしい。そして「アリオ上尾店の成功を受け、昨年5月には取り組みを全185店へと拡大」している。ならば、5月以降は業績が上向いているのが自然だ。少なくとも悪化には歯止めがかかってほしい。ところが「ふたを開けてみれば第3四半期の3カ月間だけで赤字は54億円も拡大」している。

村田紀敏社長は、昨年10月の決算発表の場で、『構造改革の手応えを感じている』と強調し、下半期で100億円の営業利益を出すことで、通期で黒字を確保できると強気の姿勢を崩さなかった」はずだ。それが赤字拡大に終わったのならば「独立運営店舗の取り組みなど構造改革が機能していない」と評価するのが当然だ。しかし大矢記者は「『方針は間違っていない。全体として良い方向に進んでいる』と鈴木会長は自信を見せる」と書き、何の疑問も持たずに鈴木氏の言い分を受け入れている。「だったら、なぜ赤字は拡大しているのですか」となぜ質問しないのか。

インタビュー記事でも鈴木氏は聞かれてもいないのに「自分は悪くない。他の人間が悪いんだ」との弁明を繰り返している。いくらでもツッコミを入れられる稚拙な言い逃れなのに、大矢記者はなぜか鈴木氏の責任問題に迫ろうとはしない。その一部を見てみよう。

【ダイヤモンドのインタビュー記事】

──実際にリーダーとして問題があったのですか。

リーダーの役割は、業績が悪かったら改革や方向転換を行い、業績が良かったら、その方針を突き進めることです。

私はCEO(最高経営責任者)として「こういう方針で進めなさい」と各社に言います。だけど、それを実行するのはCOO(最高執行責任者)である社長です。そこまで私が入り込んでしまうと、私の役割がCEOなのかCOOなのか分からなくなります。

リーダーとしての資質の問題というよりは、取り組みを実行した結果が数字に表れてこなかった。本人もそのことを悩み、限界だと感じたのではないでしょうか。

──後任に亀井淳社長を選んだ理由は何ですか。

私自身、出している方針には自信があります。日米両国のセブン-イレブン、セブン銀行などの業績を見てもらえば分かるように、グループの大半は成功を収めています。だから、今までの方針を変える必要はないわけです

一方、ヨーカ堂改革においても具体案が出ています。それを、何も知らない新しい人に「すぐ実行してくれ」と言うのは難しい。亀井社長であれば、例えば閉店をどうするかについても、前に社長を務めていたときから考えていて方針を理解しています。だから、経緯や事情が分かっている彼に、再登板してくれと言ったのです。改革は今までの延長です。そのことをグループ内で最も分かっているのが彼だったからです。

──ヨーカ堂が回復しないのは、以前、社長を務めていた亀井社長にも責任があるのではないかとの指摘があります。

世間に「前任者を再び登用するのはおかしい」という声があるのは知っていますよ。ただ、それは社外の意見であって、われわれグループとしての考えは別です。

グループの方針が間違っていて、変えなくてはいけないのかといえばそうではない。方針が間違っていたら、グループ全体が減益になるはずですよ。そうでしょう。出版社だって雑誌を出し、うまくいかなければ編集長が責任を問われるでしょう。経営トップが責任を問われるわけではない

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鈴木氏の言う「CEOとして各社に言います」とは、持ち株会社であるセブン&アイのCEOとしての話だろう。これは分かる。しかし、鈴木氏はヨーカ堂のCEOでもある。セブン&アイの打ち出す方針に基づきヨーカ堂を経営する最高責任者は鈴木氏だ。

鈴木氏が持ち出す出版社の例えで言えば、鈴木氏は出版社の社長兼編集長だ。雑誌(ヨーカ堂)がうまくいっていないのに、編集長(ヨーカ堂CEO)が責任を取らないのはどういう理由なのか。大矢記者はそこを問うべきだ。

私自身、出している方針には自信があります。日米両国のセブン-イレブン、セブン銀行などの業績を見てもらえば分かるように、グループの大半は成功を収めています。だから、今までの方針を変える必要はないわけです」という鈴木氏の説明もおかしい。セブン-イレブン、セブン銀行は成功しているのにヨーカ堂は失敗しているのならば、「セブン-イレブンやセブン銀行の経営方針は間違っていないが、ヨーカ堂は間違っていた」と総括するのが当然だ。しかし、大矢記者はここでも鈴木氏の言い分を受け入れてしまう。

雑誌の例で言えば「A誌、B誌、C誌は売れ行き好調。なのにD誌だけ全く売れない。でも3誌でうまくいってるんだから、D誌の編集方針も間違っていない」と言う人がいたら、どう思うだろうか。「現状分析がお粗末過ぎる」と言われても仕方がない。

鈴木氏は長年にわたってヨーカ堂に関する様々な改革を打ち出してきたのに、特に近年はほとんど成果を上げられず、今日の事態を招いた。なのに「他のグループ企業がうまくいっているから、ヨーカ堂に関する方針も間違っていない」と強弁しているわけだ。今回の「独立運営店舗」も現状では明らかに期待外れだ。しかし、大矢記者は当たり障りのない質問を続けてインタビュー記事を終わらせている。

「厳しい質問なんかしたら、次からインタビューを受けてもらえなくなる」と大矢記者は言うかもしれない。それに対しては「だったら受けてもらう必要はない。厳しい質問をしない前提のインタビュー記事に価値などない」と答えたい。鈴木氏の中には「ダイヤモンドならば安心。こっちの意図を汲み取って書いてくれるから、取材にも積極的に応じよう」という気持ちがあるのだろう。裏を返せば、「ダイヤモンドは与しやすい」と見られている公算大だ。それを恥だと思う気概が欲しい。


※記事の評価はD(問題あり)。大矢博之記者への評価はDで確定させる。大矢記者は2015年6月6日号の特集「流通最後のカリスマ 鈴木敏文の破壊と創造」にも参加していた。この特集に関しては、「ダイヤモンド『鈴木敏文』礼賛記事への忠告」を参照してほしい。

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