シーサイドももち海浜公園内に建つマリゾン(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
海外勢は「日銀の追加金融緩和に備え保険のためにオプションを買う程度」(欧州証券)で、買い上がる動きはない。一方で世界の主要株式市場と比べた割安さを指摘する声は根強く「レンジ相場やむなし」の雰囲気が広がりつつある。
攻めあぐねるプロを横目に、淡々と押し目買いし、利食い売りを続ける「投資家」がいる。T&Dアセットマネジメントの「日本株ロボット運用投信(愛称カブロボ)」だ。
金融工学を駆使した4体のロボットが、過去5~10年程度の個別銘柄の値動きの特性や財務内容などをみて、売買サインを出す。とはいえ安く買って高く売るなど手法は極めてシンプルだ。人の判断が介する運用と大きく違うのは「恐れず、冷静に売買を実行できること」。ファンドの投資助言をするトレード・サイエンスの飯島美徳・事業開発部長は話す。冷徹に買い時、売り時を見極める運用で、7月末比でみた運用成績は東証株価指数(TOPIX)を上回る。
あらゆる状況下で収益を目指すロング・ショートファンド。その中でも代表的な公募投信の1つ「Bayview日本株式ロングショート」(ベイビュー・アセット・マネジメント)もTOPIXを上回る好成績だが、ロボットはその上を行く。日興リサーチセンターによると、純粋にファンドマネジャーの腕だけで勝負する日本株ファンドは500本強ある。それらと比べてカブロボは、8月以降で最も成績が良かった。
◎疑問その1~ レンジ相場で結果を出している?
記事によれば日経平均が1万8000円を中心とするレンジ相場になったのは「8月中旬以降」。7月末を100として指数化した記事中のグラフを見ると、確かに8月以降、カブロボはTOPIXを大きく上回る成績となっている。
しかし、レンジ相場となった8月中旬以降で見ると、ほぼ差はない。レンジ相場になる前のTOPIXの急落場面でカブロボの下げが小さかったことが両者の大差につながっている。だとすると、「カブロボのしぶとさは、レンジ相場と上手に付き合うヒントになる」と結論付けるのは無理がある。
◎疑問その2~ 株での運用比率が低いだけでは?
では、なぜTOPIXの急落場面でもカブロボの下げは緩やかだったのか。調べてみると、カブロボの株式での運用比率は3割程度という情報もある。これならば、下げが緩やかなのは当然だろう。記事に付いたグラフを見ても、カブロボの変動はTOPIXに比べてかなり小さい。株式の比率が低いとすれば、これも納得できる。この見方が正しいとすると「冷徹に買い時、売り時を見極める運用で、7月末比でみた運用成績は東証株価指数(TOPIX)を上回る」などと記事で持ち上げる意義は乏しい。
◎疑問その3~ カブロボはロング・ショートファンドなの?
はっきりしない書き方だが、記事の説明だと「カブロボ=ロング・ショートファンド」だと思える。ならば空売りも仕掛けるはずだが「淡々と押し目買いし、利食い売りを続ける」「安く買って高く売るなど手法」などと書いてあると、売りから入ることはないような気もする。読者を迷わせない書き方をしてほしい。
◎疑問その4~ カブロボはレンジ相場以外ではどうなの?
酒井隆介記者はカブロボについて「金融工学を駆使した4体のロボットが、過去5~10年程度の個別銘柄の値動きの特性や財務内容などをみて、売買サインを出す。とはいえ安く買って高く売るなど手法は極めてシンプルだ」と書いている。この説明には疑問もあるが、ともかくカブロボは「安く買って高く売る」力があるとしよう。ならば、レンジ相場でなくても力を発揮できるのではないか。なぜレンジ相場に限定するような形でカブロボの強みを紹介しているのだろうか。
※今回の記事に関しては、大したことのない投信を強引に「すごい投信」として描いているとしか思えなかった。記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた酒井隆介記者への評価もDで確定させる。酒井記者については「日経『真相深層~緩和マネーが経験則覆す』への疑問」も参照してほしい。
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