福岡城跡(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です |
◎大連万達集団は上海市場に上場?
【日経の記事】
低迷が続く上海株。急落した8月までの3カ月で中国不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)は個人投資家などから2000億円近い資金を集めた。
ネットで不特定多数から資金を集める「クラウドファンディング」だ。スマートフォン(スマホ)で千元(1万9千円)から投資できる気軽さと、年率1割超の配当に投資家が飛びついた。6月には3日で50億元、8月にも1週間で2億元集めた。集めた資金は商業施設の建設にあてる。
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「株価が急落しているタイミングで、上海市場の上場企業がなぜ増資なんかするのかなぁ…」と思って調べてみると、大連万達集団が上海市場に上場しているのかどうも怪しい。2月20日のThe Economistは「王氏が設立した万達集団は、今や中国最大の未上場不動産デベロッパー」と書いているらしい。傘下の企業を上場させているとは言え、親会社が上場してないとすれば、記事の書き方には問題がある。最近になって親会社も上場している可能性がゼロではないが、調べた範囲ではそうした情報は確認できなかった。
◎何が「ISAの対象」?
【日経の記事】
先進地の米欧では多様な貸し手と借り手をネットで直接結ぶ「ソーシャルレンディング」が銀行に代わる金融仲介として定着。昨年末に米最大手レンディングクラブが上場、時価総額1兆円をつけた。英国では来春、個人貯蓄口座(ISA)の対象となる。少額投資非課税制度(NISA)の手本となった制度だ。10年後の世界市場は100兆~300兆円との見方がある。
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最初に読んだ時は「米最大手レンディングクラブがISAの対象となるのは来春」と理解した。しかし「上場企業になったのに、なぜ来春まで待たないとISAを使っての投資ができないのだろう?」との疑問が浮かんだ。調べてみると、来春からISAの対象になるのは「レンディングクラブ」ではなく「ソーシャルレンディング」のようだ(断定はできないが…)。記事の説明は、お世辞にも上手いとは言えない。
「時価総額1兆円をつけた」との表現も引っかかった。例えば、「株価は1000円と3年ぶりの高値を付けた」とは言うが「株価は1000円を付けた」だと違和感がある。
◎「ペルーの貧困層に投資」?
【日経の記事】
「利回りが高く魅力的」。神奈川県の会社員、沖田充史さん(43)が投資するのはペルーの貧困層。そのお金はファンドを通じ同国の消費者金融会社に渡る。
クラウドクレジット(東京・千代田)のサービスだ。投資先は年内に8カ国に増える。3月には伊藤忠商事が出資、「日本で余ったお金を新興国に運ぶ役割を担う」(杉山智行社長)。
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自分のカネをファンドに出資し、そのファンドがペルーの消費者金融会社に融資(あるいは出資)する。消費者金融会社はペルーの貧困層にカネを貸す。この場合、「自分はペルーの貧困層に投資している」と言えるだろうか。例えば、日本のメガバンク株を買った投資家は、メガバンクの融資先企業に投資しているのだろうか。「間接的に投資している」という弁明さえ苦しいと思える。
そもそも記事で紹介したクラウドクレジットがやっていることは、単なるファンドの組成ではないのか。それをネット経由でやれば広義では「ソーシャルレンディング」に含めるのかもしれないが、新規性は乏しい。そもそも記事では「ソーシャルレンディング」を「多様な貸し手と借り手をネットで直接結ぶ」と定義し、「日本でも動き出した」としてクラウドクレジットの事業を取り上げている。しかし、記事を読む限りクラウドクレジットは「貸し手と借り手をネットで直接結ぶ」わけではなさそうだ。
この連載は4回以上は続くのだろう。この先にどんな問題が生じるかは何となく読める。大したことが起きていなくても、強引に「革命」や「パラダイムシフト」に仕立てていく。事例は無理にたくさん詰め込んで、その代償として説明不足が起きる。そして、連載全体に説得力が感じられなくなってしまう--。この予想が裏切られるように願っているが、そうなる可能性は低いはずだ。
※連載第1回の記事の評価はE(大いに問題あり)。「問い合わせた2件は記事の説明が間違っているのに、日経は指摘を握りつぶす」との前提で評価しているので、その前提が崩れれば評価も再考する。
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