40ページにわたる特集にツッコミどころは少ない。それでもいくつかあるので挙げてみよう。
福岡城(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です |
【東洋経済の記事(41ページ)】
今のところ円は主要通貨すべてに対して下落している。
「主要通貨すべてに対して円は下落」というグラフを見ると、確かに下落基調になっている。しかし、これは2012年の初めを起点としたグラフだ。15年だと状況は異なる。特に年後半はむしろ上昇基調と言える。記事では「6月の上海株急落で始まったチャイナショック」から話を進めている。ならば為替相場に関しても、その辺りを起点にすべきだろう。12年からのトレンドを見る意味は、記事からは読み取れなかった。
◎「美人投票」の前提を説明しないと…
【東洋経済の記事(50ページ)】
このため、為替の市場参加者のほとんどは、多くの参加者が注目するだろうと思われる「材料」と呼ばれる情報に注目し思惑を変える。英国の経済学者・ケインズは、こうした状況を「美人投票」と評した。
ケインズの美人投票の話を知らない人が上記のくだりを読んで趣旨を理解できるだろうか。ケインズが言う「美人投票」には、「最も多くの人から支持された美人に投票すると、投票した人が利益を得られる」という前提がある。それを説明しないと、何が何だか分からないような…。筆者はブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジストの村田雅志氏だが、編集部の責任が重いと思える。
【東洋経済の記事(67ページ)】
一方、騰落率上位で、まず目につくのが「究極の安全資産」といわれる金(ゴールド)関連の投信。ただ、2011年をピークにドル建ての金価格は下落トレンドが続き、鉱山会社は債務削減と効率性向上を求められている。実際、1位の「ブラックロック・ゴールド・メタル・オープン Aコース」も直近1年の騰落率はマイナスと振るわない。
金に「安全資産」という枕詞を付けるのには賛成できない。元本割れのリスクが極めて低いわけでもない資産をなぜ「安全資産」と呼ぶのか。信用リスクと無縁という意味では原油やアルミも同じだ。しかも記事では「究極の安全資産」とまで言っている。「ブラックロック・ゴールド・メタル・オープン Aコース」の過去1年の下落率は35,6%となっている。それでも「金は究極の安全資産」と信じてよいのだろうか。
「安全資産とされる金」といった表現は、日経では当たり前のように出てくる。東洋経済も同じレベルだとすると残念だ。
※(2)へ続く。
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