2016年10月9日日曜日

ヨイショ脱却?日経「井阪セブン 急いだ答案」に見えた希望

8~9日の日本経済新聞朝刊で連載した「井阪セブン~急いだ答案」という記事は、日経への希望を見出せる内容だった。8日の企業総合面の記事には「100日改革 遠い一枚岩  『選択と集中』事業会社に溝」、9日の企業面の記事には「『鈴木路線」否定前面に リターン重視、独自色薄く」という、いずれも厳しめの見出しが付いている。鈴木敏文氏が経営トップに君臨していた時のセブン&アイホールディングスに対して、日経はヨイショ一辺倒とも言える報道を続けてきた。それを考えると隔世の感がある。
山口県立下関西高校(下関市) ※写真と本文は無関係です

新体制が示したヨーカ堂の構造改革案は新味を欠いた

自ら設定した期限にせき立てられるようにまとめた構造改革案は結果として、井阪氏が掲げた『一枚岩』というグループの理想像を遠ざけた

マンションや病院、託児所などと組み合わせた複合施設への転換で収益向上を目指すという戦略に目新しさはない

今回の中期計画はオムニチャネル戦略の全面転換など「鈴木路線の否定」を前面に打ち出したものの、井阪氏の独自色は薄かった

連載には、上記のようなセブン&アイへの批判的な記述が目立つ。かつては「鈴木氏に気に入られればネタがもらえる(=鈴木氏に嫌われたらネタがもらえない)」という共通理解が企業報道部内にあり、鈴木氏率いるセブン&アイを批判的に取り上げるのは禁忌とも言える選択だった。

日経でセブン&アイの担当記者として優秀だと認めてもらうには、鈴木氏やセブン&アイを称えるしか道はない。これはメジャー企業の報道に共通する日経の問題点だ。企業報道部内で認められようとすればするほど、ヨイショ記者に成り下がっていく。

しかし、今回の連載は違っていた。理由は分からない。連載を担当した川上尚志記者が、たまたま企業報道部の色に染まっていないだけかもしれない。今回のセブン&アイの構造改革案を日経は発表前に報道できていないので「ネタをくれない井阪氏に忠誠を誓っても仕方がない」との判断が働いたのかもしれない。ただ、後者の可能性は高くない。「ネタをくれない」との判断を下すには早すぎる気がするし、日経の文化では、それでも何とかネタをもらおうと擦り寄っていくのが普通だからだ。

ただ、川上記者の資質のみに原因を求めるのも短絡的だ。企業報道部の部長・デスクが了承していないければ、セブン&アイに厳しい内容の連載が世に出ることはない。なので、日経企業報道部のヨイショ体質に何らかの変化が起きている可能性は否定できない。

井阪氏を含めセブン&アイがかつてのように日経にネタをくれないとしても、それはそれでいいではないか。待っていれば発表されるものを発表前に報道することの社会的な価値はほぼゼロだ。それよりも、メディアとしてのフリーハンドをしっかりと確保した上で、鋭い分析記事を届けてほしい。


※連載の評価はB(優れている)。川上尚志記者への評価も暫定でBとする。

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