2016年10月7日金曜日

説明が不可解 日経「米ファンド、サムスンに会社分割提案」

記者の説明が下手なのか、よく理解しないまま書いているのかは微妙だが、6日の日本経済新聞夕刊総合面に載った「米ファンド、サムスンに会社分割提案  株価割安と指摘 複数の事業抱え『複雑』」は疑問だらけの内容だった。
石橋文化センター(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

まず記事の前半部分を見てみる。

【日経の記事】

【ニューヨーク=山下晃、ソウル=山田健一】米ヘッジファンド運用会社のエリオット・マネジメントは5日、韓国のサムスン電子に対し持ち株会社と事業会社の2社に会社を分割することを提案した。30兆ウォン(約2兆8000億円)の特別配当の支払いや米ナスダック市場への上場のほか、取締役会に3人の社外取締役を導入することも同時に求めた。

エリオットの関連会社であるブレーク・キャピタルとポッター・キャピタル名義で、サムスン電子の取締役会に公開書簡を送付した。書簡ではサムスン電子が複数の事業を抱えており「不必要に複雑だ」と指摘。市場に正しく評価されておらず、株価が割安なままだと分析している。エリオットはサムスン電子株を0.62%保有しているとしている。

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サムスン電子が複数の事業を抱えており」「株価が割安なまま」なのは、いわゆるコングロマリットディスカウントだと言いたいのだろう。仮にサムスン電子がコングロマリットディスカウントの状態にあるとして「持ち株会社と事業会社の2社に会社を分割」すれば問題は解決するだろうか。

持ち株会社が事業を手掛けるわけではないので、サムスン電子の抱える複数の事業は新たな事業会社が引き継ぐはずだ。これで「不必要に複雑」な事業構造が単純になるとは思えない。

ちなみにブルームバーグはこの件について「サムスンを事業会社と持ち株会社に分割することで、組織および税金の両面でプラスの効果が得られるとともに、サムスン株の重しとなっている現在の複雑な一族の株式保有構造などを簡素化できるとエリオットは主張」と書いていた。これならばまだ分かるのだが…。

日経には「エリオットの関連会社であるブレーク・キャピタルとポッター・キャピタル名義で、サムスン電子の取締役会に公開書簡を送付した」と書いてあるので関連会社を通じて株式を保有しているのだろう。しかし、その後に「エリオットはサムスン電子株を0.62%保有」と直接保有のような書き方になっている。

関連会社が記事に出てこないのならば許容範囲内だろう。しかし、関連会社に触れた場合、関連会社を通じての投資なのかどうかには言及すべきだ。ブルームバーグを見ると、「ポール・シンガー氏率いるエリオットが経営権を握る両関連会社は、サムスンの約0.62%を保有する」と説明していた。

ついでなので、日経の記事の後半部分にもツッコミを入れておく。

【日経の記事】

エリオットはアクティビスト(物言う株主)型のヘッジファンドとして米国市場では著名。債務不履行に陥った債券を巡り、アルゼンチン政府と訴訟を繰り広げた

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債務不履行に陥った債券を巡り、アルゼンチン政府と訴訟を繰り広げた」というのはアクティビスト的な事例のつもりなのだろう。だが、「債券を巡り」争った話だと「アクティビスト(物言う株主)」とはやや離れてしまう。

記事の残りは以下のようになっている。

【日経の記事】

サムスン電子の広報担当者は6日、エリオットの要求について「株主の提案に対しては慎重に検討する」と話した。

サムスングループは昨年5月、事実上の持ち株会社である第一毛織が商社・建設のサムスン物産を吸収合併する計画を発表した。エリオットはこの計画に反対してサムスン物産の株を買い増し、経営改革を要求したが、今年3月にサムスン側がエリオット保有のサムスン物産株を適正な価格で取得することなどを条件に和解したとみられていた。

サムスン電子は李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が、10月27日開催予定の臨時株主総会を経て、日本の取締役に相当する「登記理事」に就任する見通し。エリオットは、将来の世代交代を見越してサムスングループが経営体制を変える時期を狙って再び要求を出したとみられる。サムスン電子が新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の品質問題対応に追われていることも判断に影響した可能性がある。

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上記の説明も何が言いたいのか理解に苦しむ。「将来の世代交代を見越してサムスングループが経営体制を変える時期」だとエリオットの要求が通りやすくなるのだろうか。あまり関係がなさそうに思える。「イ・ジェヨン氏=エリオット寄り」といった事情があるのならば、説明が欲しい。

そもそも「副会長が取締役に就任」の重みが分かりにくい。日本の感覚で言えば「副会長なのにヒラの取締役にもなってなかったの?」という感じがする。韓国では「取締役に相当する『登記理事』」が非常に重い役割なのかもしれないが、記事にはその辺りの記述もない。

あれもこれもと詰め込んで材料だけはたくさん並んだが、どれも説明が不十分になってしまった気がする。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた山下晃記者への評価はDで確定させる。山田健一記者への評価は暫定でDとしたい。

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