2016年10月5日水曜日

東洋経済 山田雄大記者の秀作「スズキ おやじの引き際」

週刊東洋経済10月8日号の巻頭特集「スズキ おやじの引き際」は秀作だった。「鈴木修会長(86)。自動車業界のレジェンドに残された最大かつ最後の仕事は、長男・俊宏社長(57)への真の継承だ」という山田雄大記者の問題意識がインタビューの中で明確に出ている。スズキという企業を理解する上でも貴重な資料と言える。
つづら棚田(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です

一部を引用したい。

【東洋経済の記事】

--そうした組織の問題を正していくのは経営者の責任です。そこで会長と社長の役割分担は?

私の時代にたこつぼ人事も、縦割りの組織の人事もやっていたわけですから、私が反省して、先頭に立ってそれを直さなくちゃいかん。

社長はコミュニケーションを横断的なやり方でやっていく。業務執行とはそういうことですから。

--確かに社長はCOO(最高執行責任者)です。ただ、今はCEOも兼務されている。

だから最終的に決定をする。

--しかし、会長が実権を握ったままに見えます。

それは40年続いたものですから1年や2年でできるわけではありませんよ。最低5年はかかるんじゃないですかね。

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会長兼CEOとして絶対的な権力を握り続けて、社長は単なる部下という例は珍しくない。セブン&アイホールディングスでは、ちょっと前まで鈴木敏文氏がそういうスタイルで経営を続けてきた。しかし、CEO職まで譲っているのに、それでも前面に出ていくのは記憶にない。その意味で鈴木修氏は“斬新”だ。社内外で老害が強く意識されているのだろう。山田記者は臆せずにその点を突いている。そこは評価できる。

記事には以下のようなやり取りもある。

【東洋経済の記事】

--会長の存在感はあまりに大きい。やはり一歩引いて周りを押し立てるべきでは。

なぜ下がる必要があるかね。

--ではさらに前に出る、と。

それがないと3兆円企業をやっていけませんよ。10人や50人の企業ならやっていけるけど。

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ここでも「一歩引いて周りを押し立てるべきでは」と問いかけている。当たり障りのないインタビューにはしないという山田記者の意思を感じる。

記事には「鈴木会長はもう引退した方がいいな」と感じられるくだりが複数あって、スズキを見ていくうえで参考になった。その部分を見ていこう。

【東洋経済の記事】

--一歩引くつもりはない。

引くなら会社を辞めればいい。月給100万円くらいもらって、毎日がゴルフ。その方が楽。だけど3兆5000億円までいった企業を、見て見ぬふりをして、自分は楽隠居なんて、そんなのは社会的使命を果たしていない。

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鈴木会長は会社を辞めても、なぜかスズキから給料をもらい続けるつもりのようだ。仕事をしないのに、引退後も「月給100万円くらいもらって」と考える非常識さが見て取れて興味深い。

もう1つは以下のやり取りだ。

【東洋経済の記事】

--敵ですか。

ウチは8割を販売店さんに売っていただいている。大手さんと違って、スズキは自動車メーカーで最後発です。13番目から12番目になり、11番、10番、5番となっていった。商品企画などスズキ自体の努力はあるが、それにプラスして50%は販売店さんの努力。販売店さんに協力していただいたからこそである。

それを、スズキの車を売らせてやるんだから感謝しろ、という“上から目線”で、販売店との間にすき間風を吹かせたのが過去7~8年。

私は過去10年間、国内営業から遠ざかっていたが、2014年9月ごろからどうもおかしいな、と感じていた。翌1月に17項目にわたって国内営業の指標を調べてみた。すると見事に右肩下がりの状況だった。

たとえば3万5000~4万ある販売店で、ウチの車を1台でも売っていただいたお店が何店あるか。調べてみたら右肩下がり。年間に一定の台数を売っていただいている副代理店とかアリーナ店の数も右肩下がり。そういうことで業販(業者販売)のセールスが減っていた。右肩上がりは架空登録だけよ。

おかしいと感じた僕の“カンピュータ”が当たっていた。それは経験があるから当たるんです。

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まずトップとして経営を指揮する立場にいながら「過去10年間、国内営業から遠ざかっていた」のは問題だ。経営者ならば国内営業の状況は常に注視すべきだ。おかしくなったのが「過去7~8年」なのに「2014年9月ごろからどうもおかしいな、と感じていた」のであれば遅すぎる。経営者として怠慢だと言われても仕方がない。なのに鈴木会長は「僕の“カンピュータ”が当たっていた。それは経験があるから当たるんです」などと自画自賛している。

インタビューからは鈴木会長が「困った経営者」の域に達しているのが良く分かる。山田記者がうまく引き出している。俊宏社長へのインタビュー記事も会長インタビューと同様に興味深かった。詳細は省くが、困った老害会長を否定せず、かと言って盲従もせず、何とかうまく折り合いを付けていこうとする俊宏社長の苦労ぶりが浮き彫りになる内容だった。

東洋経済の経営者インタビュー記事としては久しぶりに満足できる出来だった。山田記者の迫力は2015年10月31日号の巻頭特集「TSUTAYA 破壊と創造」での杉本りうこ記者に通じるものがあった。


※特集の評価はB(優れている)。山田雄大記者への評価もBを維持する。2015年10月31日号の巻頭特集「TSUTAYA 破壊と創造」については「『TSUTAYA特集』に見えた東洋経済 杉本りうこ記者の迫力」(http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_27.html)を参照してほしい。

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