2015年6月30日火曜日

日経 大林尚編集委員への疑問(1) 「核心」について

29日の日経朝刊オピニオン面に載った「核心~人らしく逝くという選択  多死社会への備えあるか」という記事はツッコミどころが多かった。筆者は大林尚編集委員。引用が長くなるが、何が問題なのか見ていこう。

ルクセンブルクのギヨーム2世広場 ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

見据えるべき点が2つあるのに、その一つに目を奪われるあまり、もう一つが視界からはみ出したまま。記者自身、この種の失敗は枚挙にいとまがない。

さらに自省を込めると、2014年の人口動態統計の結果を載せた6日付本紙の報道も、そうした例かもしれない。記事中にこんなくだりがある。「今後の出生率はゆるやかな低下傾向をたどり、日本の人口減少ペースは今よりも加速する公算が大きい」(5面)

調査結果によると、女性1人が生涯に産むであろう子供数の推計値、合計特殊出生率が9年ぶりに下がり、出生数は統計史上最少の100万3532人だった。記事はこの点に比重を割くが、産声をあげる赤ちゃんが減った点だけを人口減に結びつけるのは飛躍があろう。死亡数が戦後最多を記録したもう一つの点に触れていないのだ。

その数127万3020人。海外との行き来を除く日本国内に住む日本人は差し引き26万9488人減った。1年で水戸市が消滅した計算になる。国立社会保障・人口問題研究所によると、年間の死亡数が150万人に達するのは9年後。少産に歯止めをかけ、多死への対応を急ぐ。二正面作戦は日本人に重い課題だ。

調査からは日本人の死因がわかる。多い順に(1)悪性新生物(がん)(2)心疾患(3)肺炎――。13年と同じだ。何らかの理由で意識が戻らない状態に陥り、意志に反して延命医療を受けている人もいるだろう。自然の摂理に照らすと、本来の死亡者はもっと多いはずだ。

自殺を手助けする非政府組織(NGO)がスイスにあると聞いた。訪れて話を聞くと自殺幇助(ほうじょ)という、おどろおどろしい法律用語とは無縁の活動がみえてきた。「私たちがサポートしているのは、やむにやまれず死期を早める選択をした人です」。ベルンハルト・スッター代表の言葉である。


今回の記事は大林編集委員がスイスのNGOを取材して安楽死を考える内容になっている。しかし、本題に入る前の部分にあまり意味がない。「日本の死亡数が増えてくるので多死への対応を急げ。そのためにも安楽死について考える必要がある」とつなげたいのだろうが、安楽死の問題は死亡者数の多寡と基本的に関係ない。死亡者数が減れば考える必要がない話でもないだろう。大林編集委員は記事中で日本人の死因を多い順に挙げているが、これも必要性が薄い。

推測するに「スイスのNGOへの取材で今回の『核心』を書きたい。でも与えられた行数が多いから、死亡者数が増えている話である程度はスペースを埋められたらなぁ」とでも大林編集委員は考えたのだろう。そうでなければ、この膨大な無駄をうまく説明できない。

記事の問題点はそれだけではない。

※(2)へ続く。

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