2015年6月21日日曜日

満足できる東洋経済の「早慶MARCH特集」

東洋経済6月27日号の早慶MARCH特集は満足できる内容だった。切り口に目新しさはないものの、総じて興味深く読めた。特に「採用担当覆面座談会~学歴フィルターの真実を語ろう」が良かった。就職活動中の学生にも参考になる中身だと思える。

ベルギーのデュルブイ  ※写真と本文は無関係です
不況で求人側が有利なときは採用の対象を早慶に絞り、MARCHまで手を伸ばさない。逆に今のような売り手市場ではMARCHが候補に入ってくる。言葉を選ばずに言えば、MARCHをバッファにしているわけだ」「地方の旧帝大よりは早慶を、関関同立よりはMARCHを採りたいというのが本音だ」といった採用担当者の発言が本物ならば、それを引き出した手腕もさすがと言うほかない。

とは言え、問題を感じる部分もあるのでいくつか記しておこう。


◎不自然な表現

特集の最初の記事「激変期を迎えた早慶MARCH」の中の「上場企業役員の出身大学ランキングでは慶応と早稲田が2トップだが、卒業生が役員になれる確率では東大に遠く及ばない(図1)」とのくだりが気になった。「卒業生数が役員になれる確率」は不自然な表現だ。「数」を抜いて「卒業生が役員になれる確率」とすべきだろう。

また、図1を見れば「確率では東大に遠く及ばない」実態が分かるのかと思ってしまうが、そうはなっていない。図1には「上場企業役員の出身大学ランキング」が出ているだけだ。東大、早稲田、慶応の大まかな学生数が頭に入っていれば「確率」の違いをイメージはできる。しかし、それを読者に求めるのは、ちょっと無理がある。


◎「浪人してまで早慶に入りたい子はもういない」?

「どこから入るのが王道か~早慶MARCH 合格への道」という記事で「浪人してまで早慶に入りたい子はもういない」という駿台予備学校の進学情報センター長のコメントを読んだ時は「そこまで言い切れるのか」と驚いた。結論から言うと、やはり大げさだ。記事では「ところが今は早慶であっても浪人は少数派。学部によって違うがおおむね6~8割が現役組だ。『何が何でも早慶』という熱烈な受験生はいなくなった」と書いている。つまり、裏返せば今でも2~4割の浪人経験者がいるわけだ。

これが事実ならば「浪人してまで早慶に入りたい子はもういない」との説明は完全に間違い。「『何が何でも早慶』という熱烈な受験生はいなくなった」という記述もほぼ誤りだ。ここまで言うならば浪人比率が少なくとも5%未満でないと説得力はない。


◎本当に「立地」が原因?

「ブランド私大は“立地”が命」という記事の中央大学に関する説明も腑に落ちなかった。記事では以下のように書いている。


【東洋経済の記事】

中央大学の凋落が著しい。2015年の志願者数は、6万9818人と4年連続で減少した。ピークだった11年と比較すると、実に2割減。MARCHの中でもその急落ぶりは目立つ。予備校や大学の関係者にその理由を問うと、たいてい同じ答えが返ってくる。「キャンパスの立地だ」と。八王子市の多摩モノレール沿線、小高い丘の上にあるのが中大多摩キャンパスだ。1978年に中央区神田駿河台から移転してきてはや37年経つが、いまだに「田舎すぎて遊び場がない」とまで学生に言わしめる環境だ。

11年がピークでそこから志願者数が減っているのであれば、「立地が原因」と言われても納得できない。移転は1978年なのだから、「なぜ立地に恵まれないのに、11年までは志願者が増えてきたの」と聞きたくなってしまう。記事では「早慶MARCHの入試合格者は今や6~7割以上が1都3県の出身」なので「アクセスのよさが重要」と説明している。しかし、それは11年でも同じようなものだろう。「なぜ11年までは良かったのに、その後ダメになったのか」をもっとしっかり分析してほしかった。

他に細かい指摘をするならば、「親世代とは一変!入試、就職、出世の新常識」という見出しもやや大げさか。特に大学の序列は、変化なしとは言わないが「一変」には程遠い。企業寿命は30年という定説に対して「大学の世界はそこまで大きくは動かない」と書いているので、作り手としても確信犯的な大げさ表現だとは思うが…。

早慶MARCH」を見出しにしているのも、若干引っかかった。「首都圏ブランド私大 今ドキ学生の生態系」という記事では早慶MARCHに上智、ICU、学習院を加えた10大学を並べて解説している。法政や中央より上智やICUの方がスペースは大きい。今回の特集は実質的には「首都圏メジャー私大特集」と呼ぶべき内容だった。


細かい注文は付けたが、特集の基本的なレベルの高さを打ち消すほどの問題ではない。記事の評価はB(優れている)。西村豪太、中川雅博、中原美絵子、福田恵介、秦卓弥、印南志帆、中山一貴、東出拓己、宮本夏実の各記者の評価も暫定でBとする。

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