2015年6月6日土曜日

櫻井よしこ氏への引退勧告

ダイヤモンド5月30日号のコラム「オピニオン縦横無尽」の件で、筆者の櫻井よしこ氏は書き手としての最低限の資質を既に失っているとの結論に至った。そう考えた理由を櫻井氏への手紙という形で綴ってみたい。

ブリュッセル(ベルギー)のグラン・プラス
          ※写真と本文は無関係です

◆櫻井よしこ氏への引退勧告

櫻井よしこ様

週刊ダイヤモンド5月30日号のコラム「オピニオン縦横無尽」を拝読しました。その中で「スイスは男女を問わず、国民は徴兵の義務を負う。60歳を超えると、毎年、年代層に応じて数日間の軍事訓練を受ける義務も負う」と書いておられました。最初に読んだ時、「60歳を超えると軍事訓練を受ける義務を負う」との説明に驚きました。「20歳」と書いてあるのが「60歳」に見えたのかと思って、読み直したほどです。そこでスイスの徴兵制について調べてみると、「60歳を超えると軍事訓練の義務」も「女性にも兵役の義務」も誤りだと気付きました。

5月25日にダイヤモンド編集部へ問い合わせをし、記事の担当者から同月30日に「記事中の説明は誤り」との回答を頂きました。時間がかかったとはいえ、誤りを認めたことは評価しています。ただ、今回の件で「櫻井よしこ氏は書き手としての基礎的な能力を失っている」と確信するに至りました。これからその理由を説明します。

まず、間違いの内容です。私自身もミスの多い人間なので、他人のミスを責めるのは気が引ける面もあります。「30億5000万円」をうっかり「30億5000円」と書いてしまっても「書き手としての資質に欠ける」とまでは言いません。しかし、例えば巨人の原辰徳監督(現役時代は三塁手などとして活躍)を「現役時代は名投手として知られた阪神の原辰徳監督」と説明したら、書き手として基礎的な資質に欠けると断じるしかありません。

今回の櫻井様の誤りは、これと同等のケースだと思われます。スイスに関して「男女を問わず、国民は徴兵の義務を負う」「60歳を超えると、毎年、年代層に応じて数日間の軍事訓練を受ける義務も負う」と立て続けに全く事実と異なる説明をしてしまったのです。しかも、「60歳を超えると」に関しては、「60歳までは」と認識していたのに、なぜか「60歳を超えると」と筆が滑ってしまったそうですね。「高」「安」や「増」「減」ならば、うっかり逆に書いてしまうこともあるでしょうが、「60歳までは」を「60歳を超えると」としてしまうのは、通常では考えられません。百歩譲ってあり得るとしても、記事をチェックする段階で容易に気付くはずです。

私は櫻井様について、よくは知りません。過去に何度かコラムを読んだ程度です。なので、以前から今の状態なのか、加齢などの何らかの要因によって能力が低下しているのかは判断できません。しかし、記事の執筆に当たって基本的な事実確認を櫻井様に任せるのは、現状では非常に危険だと断言できます。

私の間違い指摘に対して、「かつて女性にも兵役がありましたが、現在は任意とされています。この点で、男女を問わずというのは少し古い情報で、間違いです」と櫻井様は説明されました。しかし、これも間違いです。念のためにスイス大使館に確認したところ、「現在も過去にもスイスの女性に徴兵制の義務はありません」との回答を得ました。「男女を問わず、国民は徴兵の義務を負う」と書いて間違いを指摘され、では実際はどうなのかと改めて調べてみても、櫻井様は正しい答えに辿り着けなかったのです。このままの状態で記事を世に送り出し続ければ、どんな結果になるかは説明するまでもないでしょう。

私は櫻井様に何の恨みもありません。ただ、週刊ダイヤモンドの一読者として、連載コラムは高い資質を持った書き手に任せてほしいと願っているだけです。そして残念ながら、櫻井様はその期待に応えられる状態にありません。なので、櫻井様に「書き手としての引退」を勧告します。それは読者の利益になると同時に、櫻井様の名誉を守る最善の方法だと確信しています。


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※今回の記事への評価はE。櫻井氏への評価もEとする。


(注) 「櫻井よしこ氏へ 『訂正の訂正』から逃げないで」に「櫻井よしこ氏への引退勧告」の加筆版を載せているので参照してほしい。「60歳になるまでは」という訂正が誤りだと判明したので「訂正の訂正」を求めたものの、櫻井氏もダイヤモンド編集部も間違い指摘を握りつぶしてしまった。加筆版はそれを踏まえての「引退勧告」となっている。

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