2015年6月5日金曜日

ダイヤモンド「鈴木敏文」礼賛記事への忠告(3)

週刊ダイヤモンド6月6日号の特集「流通最後のカリスマ 鈴木敏文の破壊と創造」について、ダイヤモンド編集部とのやり取りがあったので紹介する。


【ダイヤモンドへの質問】
ロッテルダム(オランダ)の繁華街
                          ※写真と本文は無関係です

6月6日号の「世界初がめじろ押し!恐るべしセブンの開発力」に関してお尋ねします。表中で「1974年 既存小売店を組織化しチェーン展開開始」が「世界初」となっています。しかし、資生堂のホームページによると、同社は1923年に日本初のボランタリーチェーンシステム「チェインストア制度」を導入したようです。ボランタリーチェーンなので当然に「既存小売店の組織化」です。記事では「コンビニ業界で世界初」と言っているのかとも思いましたが、「世界初」「日本初」「業界初」の3つに分けられているので、それもなさそうです。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も教えてください。

 付け加えると、ATMに関して「セブン-イレブンが世界や国内で初めて展開した」という説明は「コンビニとして初めて」の誤りでしょう。日本初のコンビニがセブンであるかのような書き方も正確さに欠けます。例えばファミリーマートは1973年に実験第1号店を埼玉県狭山市に出しています。今回の件では「セブンから提供された資料を疑いもなくそのまま記事に使っているのではないか」との印象を抱きました。そうしたことのないようお願いします。


【ダイヤモンドからの回答】

いつも本誌を熟読いただき誠にありがとうございます。先日、お尋ねのあった件につきましてご回答申し上げます。

①資生堂がチェーンストアの初めではないかという点について

資生堂はあくまで自社商品のみを扱う「ボランタリーチェーン」です。しかしここの趣旨は、あらゆる商品を扱う小売店舗の「チェーンストア」に関して論じており、まったく性格が違います。従いましてセブン‐イレブンが最初になります。

②ATMについて

 コンビニが自社で設立した銀行として世界初、そうした銀行のATM設置も世界初になります。

③日本初のコンビニがセブンであるという点について

 ご指摘の店舗は試験店舗です。そういう意味では、確かにセイコーマート、ファミマ、マミーマート等もあります。しかしこれらは全て実験・試験店舗で、出店まもなく閉鎖に追い込まれています。つまり、本格的なコンビ二として1号店を出したのはセブン‐イレブンになります。

 以上、ご回答申し上げます。


【ダイヤモンド担当者への返信】

回答ありがとうございます。

今回の回答に関しては、引っかかる部分が多かったので、思うところを述べてみます。

まず、私は「資生堂がチェーンストアの初めではないか」と質問しているわけではありません。セブンに関して「1974年 既存小売店を組織化しチェーン展開開始」が「世界初」と記した表の説明が誤りではないかと問い合わせています。資生堂の話は、1974年よりずっと前に「既存小売店を組織化しチェーン展開を開始」した例として示したものです。資生堂を含め、セブン以外の会社が1974年より前に既存小売店を組織化しチェーン展開を始めているのならば、記事の説明は誤りとなります。それだけの話です。

「ここの趣旨は、あらゆる商品を扱う小売店舗の『チェーンストア』に関して論じており」と述べておられますが、記事中にそうした説明はありません。セブンに関して「1974年 既存小売店を組織化しチェーン展開開始」を「世界初」としているだけです。「自社商品のみを扱うボランタリーチェーンは除外」ということであれば、それが読者に分かるように表記すべきです。

ATMに関しても同様です。「コンビニが自社で設立した銀行として世界初、そうした銀行のATM設置も世界初」と述べておられますが、記事では「セブンーイレブンが世界や国内で初めて展開した商品やサービスはATMだけではない」と書いているだけです。例えば、これを読んだ高校生が「そうか! ATMって銀行よりも早く、まずセブンから始まったんだ」と理解しても、読者の読解力不足とは言えないでしょう。今回の弁明に触れた後だと、表中の「発注端末を開発し受発注を改善」「マーケティングにPOSシステムを活用」などの「世界初」などに関しても、単純に「世界初」と理解してよいのか読む側としては迷いが生じます。そういう迷いを生じさせるような記事の作り方が好ましいかどうかは、検討する価値があるでしょう。

「日本初のコンビニがセブンであるかのようか書き方」に関しても同様です。「本格的なコンビ二として1号店を出したのはセブン‐イレブン」との認識ならば、記事の「日本にコンビニを持ち込み」のくだりを「日本に本格的なコンビニを持ち込み」とすれば、問題はほぼ解消します。行数が増える訳でもないのに、その労を惜しむ必要があるのでしょうか。

付け加えると、「コンビニが自社で設立した銀行として世界初、そうした銀行のATM設置も世界初」ということであれば、表中の「セブン銀行のATMを店内に設置」は「日本初」ではなく当然に「世界初」でしょう。そもそも「セブン銀行のATMを店内に設置したのはセブンが世界初」というのは当たり前すぎる話です。セブンが設立した銀行なのに、ローソンやファミリーマートで最初にATMを設置するとは思えません。「セブン銀行のATM」と限定するのならば、「日本初」でも「世界初」でも、表に載せる意味はないでしょう。

以上です。今後の紙面づくりの参考にしていただければ幸いです。


※ダイヤモンド編集部とのやり取りは以上。今回は記事内容、問い合わせへの対応のいずれも問題が多かった。記事の評価はD。新井美江子、泉 秀一、大矢博之、田島靖久の各記者への評価もD(暫定)とする。

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