2015年6月14日日曜日

日経 梶原誠編集委員に感じる限界

無理やりひねり出して記事を書いているからだろうか。14日付の日経朝刊総合・経済面のコラム「けいざい解読~市場動かす株主総会」はかなり無理のある内容だった。記事の前半部分で筆者の梶原誠編集委員は以下のように書いている。


【日経の記事】
アントワープ(ベルギー)の中心部   ※写真と本文は無関係です


企業の株主総会の開催が今月本格化する。昨年までとの違いは、企業と株主の実のある対話を促す枠組みが整った点だ。「セレモニー」だった総会が、株式市場を動かす材料に脱皮しつつある。

東京証券取引所によると、開催日のピークは26日で全体の4割強が集中する。ただ、市場関係者が注目する「事実上の総会」はすでにヤマ場だ。総会を前提に、企業と株主の対話が進んでいる

ファナックは、株主が批判を強めていた巨額の手元資金を株主に返し始めた。トヨタ自動車は国内の個人向けに5年間は譲渡できない株式を発行する計画だが、株主の間で賛否両論が盛り上がっている。総会が迫っているからこそ、対話が緊張感を帯びるのだ



見出しで「市場を動かす株主総会」となっていて、冒頭では「株主総会がセレモニーから脱しつつある」と唱えている。「そんなこと本当にあるのかな」と思いつつも、「実際にそうなったらすごいな」と期待しつつ読んでみた。結論から言うと、セレモニーからは脱しそうもない。記事の問題点を挙げてみる。


(1)「事実上の総会」で決まるのなら…

記事では、総会前の企業と株主の対話を「事実上の総会」と捉え、既にヤマ場を迎えていると解説している。これを信じるならば、実際の総会は「事実上の総会」で決まったことを追認する「セレモニー」の域を出ないはずだ。「事実上の総会」で物事を決める流れが強まっているとすると、むしろセレモニー化をさらに進める結果になるのではないか。



(2)「企業と株主の対話」とは?


対話が進んでいる」と書いている割に、記事を読んでも「どういう形で対話しているのか」が分かりにくい。「機関投資家が経営者を訪ねて面談している」といった動きを「対話」と言っているのかと最初は思ったが、そうでもなさそうだ。トヨタの話では「個人向けに5年間は譲渡できない株式を発行する計画だが、株主の間で賛否両論が盛り上がっている」と書いているだけで、この件で株主とトヨタが顔を合わせて対話したかどうかは読み取れない。

実際の対話ではなく、企業側が株主の意見などを間接的にでも知って、それを経営に生かすという意味での「対話」なのだろうか。しかし、記事の後半部分では「少数株主としての提案」といった話も出てくるので、ややこしい。「事実上の総会」という表現からは、有力な株主が一堂に会して総会前に企業側と対話するようなイメージも湧くが、そういう感じでもなさそうだ。結局、何を指して「対話」と言っているのか判然としなかった。


まとめると…


多くの企業はこれまでも主要株主の意向をヒアリングした上で株主総会での提案内容を決めていたはずだ。つまり、梶原編集委員の言う「事実上の株主総会」は目新しいものではない。「総会当日の活発な議論を受けて会社側の提案を修正する機会が増えそう」「総会での株主とのやり取りがリアルタイムで外部にも分かるようになり、それが総会当日の株価を動かす」といった話ならば、「『セレモニー』だった総会が、株式市場を動かす材料に脱皮しつつある」と書くのも分かる。しかし、記事を読んだ限りでは「形式的な意思決定の場としての株主総会」は今年も主流であり続けるとしか思えない。

梶原編集委員の記事を読んでいると、訴えたいことが既に枯渇しているのではないかと心配になる。今回も「株主と企業の対話が大事だよね」といった程度の問題意識しかないのに、何とか気の利いた話にしようとして無理な構成になってしまったのではないか。「けいざい解説」に限らないが、「独自の視点で書きたいことがある」と自ら訴える筆者に順番を優先的に回すような仕組み作りも必要だろう。

※記事の評価はD。梶原誠編集委員の評価もDとする。

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