2020年9月9日水曜日

世間の空気に合わせて変節? 日経 田中陽編集委員「真相深層~コンビニ 崩れた方程式」

 8日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「真相深層~コンビニ 崩れた方程式 公取委が24時間営業の強制に警告 店主軽視のツケ、関係ひび」という記事は悪い出来ではない。だが、筆者の田中陽編集委員がこれまで「コンビニエンスストア本部」寄りの記事を書いてきたことを考えると納得できない部分もある。

大雨で増水した筑後川(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

まずは8日の記事の一部を見ていこう。


【日経の記事】

公正取引委員会は9月2日、コンビニエンスストア本部が加盟店のオーナーに24時間営業を強制することは独占禁止法違反の恐れがあると明確にした。約束に反して近隣に出店して加盟店を支援しないことなども指摘。本部とオーナーの認識のズレは、10年以上も前から存在する古くて新しい問題だ

「覚悟はしていたが、これほど厳しい内容になるとは」

大手コンビニエンスストアの幹部は、公取委がコンビニ本部と加盟店の関係改善を求めたことに口調が重かった。営業時間、出店、仕入れ、価格設定など多岐にわたりコンビニ経営に独禁法で網をかけられた形だ。この幹部は「まるで『箸の上げ下げ』まで言われるようなもの」と語った。

公取委がコンビニについて関心を持ち始めたのは2000年ごろから。02年に「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(ガイドライン)を公表すると、コンビニ各社や業界団体は公取委に事前相談するケースが増え、そのたびに「一応のお墨付きをいただいてきた」(あるチェーンの元渉外担当)としていた。

だが、本部とオーナーの関係改善という肝心な改革については自ら踏み込めなかった。コンビニは「変化対応業」と言われながら、社会がコンビニを見る目の変化に対応するのを怠ったのだ

理由は公取委が問題視しているフランチャイズ契約が本部にとって使い勝手のよい内容だからだ。裏返せば、オーナーにとっては使い勝手の悪いものにほかならない。本部とオーナーは対等の関係がうたい文句のはずだが、公取委の菅久修一事務総長は「優位劣位になりやすい」と断じた。


◎問題に気付いていた?

本部とオーナーの認識のズレは、10年以上も前から存在する古くて新しい問題だ」という書き方だと田中編集委員はかなり前から「問題」の存在に気付いていたような印象を受ける。そして「コンビニは『変化対応業』と言われながら、社会がコンビニを見る目の変化に対応するのを怠った」と断じている。

ならば田中編集委員は「コンビニ」に厳しい視線を向けてきたのだろうか。過去の記事から判断すると逆だ。

2019年3月8日付の「セブン『東大阪の乱』~正念場の24時間営業」という記事で田中編集委員は以下のように書いている。


【日経の記事】

さて、今回の問題。人手不足による店舗運営が円滑に行かない事態は数年前からわかっていた。生産性を上げるために店舗内作業の自動化、消費期限が長く廃棄ロスを抑える食品の開発の加速はその背景にある。そして世論に押される形で営業時間短縮の実験に着手。24時間営業の是非を検証する。

日本でコンビニが誕生して40年超。経済成長、人口増が見込めた時代からビジネスモデルの核となる24時間営業とそれを支えるフランチャイズ契約の根幹は変わっていない。

実験でも24時間営業は譲れない一線だろう。ただ、共同配送が革新的な取り組みであることを世間に納得してもらったように24時間営業の必要性をどれだけ世間とオーナーに納得させることができるのか

セブンはこれまでも様々なイノベーションによって店舗運営を効率化すると同時に、消費者の支持を集めてきた。合成の誤謬を解きほぐすイノベーションをつくり上げることで「持続可能な社会」の一員に踏みとどまれるはずだ


◎「イノベーション」で解決できるはずでは?

実験でも24時間営業は譲れない一線だろう」などと書いており、この段階では「24時間営業」の維持に理解を示している。「イノベーション」によって「24時間営業とそれを支えるフランチャイズ契約の根幹」を変えずにやっていけると田中編集委員は見ていたはずだ。

しかし8日の記事では「コンビニは『変化対応業』と言われながら、社会がコンビニを見る目の変化に対応するのを怠った」と書いている。世間の流れに合わせて「コンビニエンスストア本部」に厳しい姿勢に変化しているように見える。

それがダメだとは言わないが、セブン&アイや、その絶対権力者だった鈴木敏文氏をやたらと称えてきた自らの不明を記事の中で少しは恥じてほしい。


※今回取り上げた記事

真相深層~コンビニ 崩れた方程式 公取委が24時間営業の強制に警告 店主軽視のツケ、関係ひび」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200909&ng=DGKKZO63605730Y0A900C2EA1000

セブン『東大阪の乱』~正念場の24時間営業」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42144630X00C19A3X12000/


※「真相深層」の評価はC(平均的)。田中陽編集委員への評価はDを据え置く。田中編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。


「小売りの輪」の説明が苦しい日経 田中陽編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html

「セブン24時間営業」の解説が残念な日経 田中陽編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/24_11.html

日経 田中陽編集委員の「経営の視点」に見えた明るい兆し
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_12.html

セブンイレブン「旧経営陣」の責任問わぬ日経 田中陽編集委員の罪
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/12/blog-post_11.html

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