大雨で増水した大分県日田市の三隈川(筑後川) ※写真と本文は無関係です |
腰を引けるだけ引いたように見える日経の記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
【香港支局】香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕、保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏は1日、香港警察に出頭し、聴取を受けた。聴取後に記者団に「8月に逮捕された時に証拠の一つとして2019年に日本経済新聞に載せた香港民主化運動に関する広告を見せられた」と話した。「もし日経への広告が証拠となるのならばかげている」とも語った。
香港紙・明報などの報道によれば、香港警察は日本経済新聞社の香港現地法人を訪問したとされる件について「裁判所が出した資料提出命令を8月に執行した。捜索はしておらず(命令に)取材関係の資料は含まれていない」と回答している。日経広報室は「法的な理由でコメントを差し控える」としている。
周氏は8月10日に香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕された。1日、保釈の条件として警察署に出頭した。
香港の民主派は19年8月に日経や米ニューヨーク・タイムズ、仏ルモンド、独フランクフルター・アルゲマイネなどに意見広告を掲載した。
◎ずっと「コメントを差し控える」つもり?
この問題は他のメディアも報じるので日経としても無視はできない。ただ、できるだけ関わりたくない--。上記の記事からはそんな姿勢が読み取れる。「法的な理由でコメントを差し控える」という「日経広報室」のコメントだけを出して、後はこの問題への言及を避けていく意向なのだろう。
日経自身が捜査の対象となる可能性もあるので、難しい問題を抱えているのは分かる。その点を差し引いても、今回の報道は残念だ。少なくとも見出しに「日経」の文字は入れられたはずだ。
実際に「2019年に日本経済新聞に載せた香港民主化運動に関する広告」を証拠として「周庭」氏が罪に問われた場合も、日経はずっと腰が引けた態度で臨むつもりなのか。その時には自身のメディアとしての存在意義が今以上に問われる。
ちなみに日経は6月30日付の社説で以下のように訴えている。
【日経の社説】
香港国家安全維持法は中国内だけで通用してきた共産党政権による国家安全の考え方を香港にも適用する内容である。その司令塔として香港行政長官をトップとする「国家安全維持委員会」を新設し、顧問を中央政府から送る。
香港の治安維持を担う中国政府の出先機関「国家安全維持公署」も置く。国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して危害を及ぼすと見なす犯罪などは直接、対処できる。
今後は香港民主派の政治団体が取り締まり対象になる恐れもあり、既に活動に支障が出始めた。従来、街頭デモで抗議を表明してきた香港の有権者も萎縮している。平和的デモさえ許可しない時代錯誤の措置は看過できない。
◎主張に責任を持つならば…
「香港国家安全維持法」によって「平和的デモさえ許可しない時代錯誤の措置は看過できない」というのが日経の立場だ。「もし日経への広告が証拠となるのならばかげている」と「周庭」氏は訴えている。
日経はどう考えるのか。「ばかげている」「看過できない」と見るのか。それとも中国側の措置に理解を示すのか。どちらを選んでもいい。だが、腰を引いてやり過ごそうとするのだけはやめてほしい。
※今回取り上げた記事「周庭氏を再聴取 警察、日経新聞の意見広告を問題視?」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200902&ng=DGKKZO63324270R00C20A9FF8000
※記事の評価はD(問題あり)
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