浦山公園の桜(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
経営再建中の東芝が新たなスタートをきった。2020年3月期から始まる5カ年の中期経営計画では、連結営業利益の目標を4000億円とした。こうした収益増や足元の財務を前提とすると、潜在的な株価は現在の3倍に相当する1万円になるとの見方もある。ただ、実現には市場が求める株主還元や前期の20倍に相当する利益の達成、経営陣強化といった3つのハードルを乗り越える必要がある。
「(経営陣が正しい指導力を発揮すれば)株価は1万1000円以上」。東芝株を5%持つ米ファンド、キング・ストリート・キャピタル・マネージメントは強調する。他のファンドからも「1万円は夢物語ではない」との声がある。計算上の株式価値は現在の時価総額の2兆円を大きく上回る6兆円になるためだ。
東芝は5年後に営業利益4000億円を見込むが、減価償却費は1000億円規模とみられる。このため実際の稼ぐ力を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は5000億円になる。これにEV/EBITDA倍率(同業大手の独シーメンスで10倍程度)を乗ずると企業価値はざっと5兆円になる。
さらに現預金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュは1兆円規模のプラスになる見通し。4割出資する東芝メモリホールディングスの新規株式公開(IPO)に伴う持ち分売却収入が入る可能性が高いからだ。これを加えた株式価値は約6兆円。発行済み株式総数(5億4400万株)で割ると、株価は1万円を超える水準になる。
ただこうした潜在力が実際の株価に反映されるのは簡単ではない。市場が求める複数の要求に対し、適切な解を示していく必要があるためだ。
まず一段の還元拡大だ。東芝は現在、総額7000億円の自社株買いを実施中だが、ファンド勢からは1兆円以上への増額を求める声が目立つ。同社は前期に復配したばかりだが今後の安定的な増配も欠かせない。
◎増配は逆効果では?
「EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は5000億円」で「ネットキャッシュは1兆円」。これが「株価は1万円を超える水準になる」ための条件だ。異論がなくもないが、ここでは論じない。気になるのは「1万円」を実現するために「安定的な増配も欠かせない」と書いている点だ。
「EBITDA5000億円」と「ネットキャッシュ1兆円」を実現した時の適正株価が「1万円」を超えるのならば、その数字を達成すればいいだけだ。なぜ「安定的な増配も欠かせない」のか。「ファンド勢」が求めているからなのか。
「安定的な増配」をせずに「ファンド勢」に見放されたとしても、「EBITDA5000億円」と「ネットキャッシュ1兆円」を実現した東芝の適正株価が1万円を超えるのならば、「ファンド勢」が手放した株には1万円以上で買い手が付くだろう。
「増配」は現金の流出を招くので「ネットキャッシュ」にはマイナスに働く。「ファンド勢」の求めに応じて気前よく増配していたら「ネットキャッシュ1兆円」を大きく割り込むかもしれない。そうなれば「1万円」の前提が崩れてしまう。
この辺りをどう見るのか十分に検討しないまま浜次長は記事を書いてしまったのではないか。デスクとして記者を指導する立場になったのだから、隙のない記事に仕上げてほしかった。
※今回取り上げた記事「東芝、株価1万円説の虚実 新中計スタート~利益4000億円達成なら 株主還元や役員刷新 焦点」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190405&ng=DGKKZO43357000U9A400C1DTA000
※記事の評価はD(問題あり)。浜岳彦記者への評価もDで確定とする。浜記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「ソニーがフル生産しない理由」が謎の日経「会社研究」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/01/blog-post_70.html
「新・物言う株主」が新しくない日経 浜岳彦記者の「スクランブル」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_15.html
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