筑後川沿いの桜(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
3月25日、東京都千代田区の東京海上日動火災保険の本社ビルでグループの若手有志の会Tib(ティブ)が開かれた。人の心理は合理的ではないという行動経済学の実験などを踏まえ、どうすれば客に保険の価格に割高感を抱かせないかなどを示した。同社の企業商品業務部長、河村卓(49)は「起業家のような自由な発想が新鮮。会議ではでてこない」と話す。
荒地竜資(26)は同世代の若手社員らに「工夫すれば、やりたいことはできるんだと言いたい」という。人事部などにも話をしながら18年に同期とともに活動し始めた。参加者は20代を中心にした21人。部長陣とも会社をよりよくするための議論を重ねた。「変えたい思いは部長も我々も同じ」と感じた。
◎どこに「起業家的な発想」?
「起業家的な発想」という小見出しの後に上記の事例が出てくる。しかし「行動経済学の実験などを踏まえ、どうすれば客に保険の価格に割高感を抱かせないかなどを示した」ことのどこが「起業家のような自由な発想」なのか。「学者のような発想」ならば、まだ分かるが…。
実際には「若手有志の会Tib(ティブ)」から「起業家のような自由な発想」が生まれているのかもしれない。しかし、それを読者に納得させる材料を持ってこないと「起業家のような自由な発想が新鮮」というコメントが生きてこない。
「同社の企業商品業務部長」は「会議ではでてこない」発想だと「若手有志の会Tib(ティブ)」を評している。なのに「3月25日」には「東京海上日動火災保険の本社ビルでグループの若手有志の会Tib(ティブ)が開かれた」らしい。これは「会議」ではないのか。
「会議」ではない可能性も残るが、だとしたらそれが分かる書き方をすべきだ。
記事からは「若手有志の会Tib(ティブ)」が会社を全体としてどう「変えたい」のか分からないのも引っかかる。「保険の価格」の見せ方を「変えたい」だけではないはずだ。どういう「志」なのかは記事中に欲しい。総じて話が抽象的だ。
ついでに冒頭の「東急不動産」の事例にも注文を付けておきたい。
【日経の記事】
会社の「当たり前」を捨てて若手の目線で眺めれば、全く違った風景が浮かんでくる。
今夏に東京・南青山から渋谷に本社を移す東急不動産。移転プロジェクトチームは20~30代を中心にした約40人の社員からなる。「新しいことに挑む風土に変える。グループや社外の企業と連携を強めていかなくては」。高橋大輔(34)はこれを機に働きやすい環境をつくろうと意欲を燃やす。
「もっといろいろなことができるはず」。東急不は鉄道会社が発祥でお堅い印象が強い。東急ハンズなど競争力があるグループ会社との連携が不十分にみえた。「もったいない」
グループ会社の人の交流の場となるフリースペースをつくる。渋谷らしく、社員全員の服装をスタートアップ企業風のビジネスカジュアルにする――。社長の大隈郁仁(60)ら経営陣も「今後30~40年働く人が考え決めるべきだ」と背中を押す。
◎「全く違った風景」?
「会社の『当たり前』を捨てて若手の目線で眺めれば、全く違った風景が浮かんでくる」と大きく出たものの、その根拠となる「東急不動産」の事例はかなり弱い。
「グループ会社の人の交流の場となるフリースペースをつくる。渋谷らしく、社員全員の服装をスタートアップ企業風のビジネスカジュアルにする」--。その程度で「全く違った風景が浮かんでくる」と言われてもとは思う。
事例の弱さを責めるつもりはないが、大したことのない事例を大きく見せるのは避けてほしい。
※今回取り上げた記事「連載働き方進化論~原石を逃すな(3)『熱血』を呼び覚ませ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190405&ng=DGKKZO43361690U9A400C1MM8000
※記事の評価はC(平均的)。
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