2018年10月15日月曜日

「政権の求心力維持」が最重要? 日経 芹川洋一論説フェローに問う

安倍内閣が掲げてきた旗はアベノミクスと憲法改正である。有終の美に向けエンジンをふかせていくのだろう。しかしそれこそが超長期政権の罠(わな)になるおそれがある。ここは発想を転換、政権の求心力を維持する方法を考えた方がいいかもしれない」--。
白池地獄(大分県別府市)※写真と本文は無関係

15日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「核心~安倍『超長期政権』のわな」という記事で芹川洋一論説フェローはそう書いている。だが「憲法改正」に限って言えば、なぜ「罠(わな)」を恐れる必要があるのか理解できなかった。

芹川論説フェローの説明をもう少し見てみよう。

【日経の記事】

もっとも改憲を実現すれば政権の役割に終止符が打たれる。できないでいることで政権が維持されるという逆説も成立するからややこしい。

改憲は安倍晋三という政治家の旗印である。3選を実現し、こだわるあまり政権力が弱まるとすれば、そこが超長期政権の罠だ

◇   ◇   ◇

この「」から逃れるための方策として芹川論説フェローは以下のように提案している。

【日経の記事】

ではどうしたらいいのか。次の時代への道筋をつけることを政治的な業績と考えたらどうだろうか。

憲法9条への自衛隊の明記を安倍政権で押し通そうとすれば、国論を二分した激しい対立を招くのは確実だ。むしろ次の政権で改憲を実現するための環境整備を進める。

中略)国家の長期課題をきちんと位置づけて、できないところは次の政権の宿題にする。超長期政権の罠にはまらないで「史家の批判にまつ」のもひとつの方法だ。


◎「政権の求心力維持」が目的?

芹川論説フェローの主張には「一番大切なのは政権の求心力を維持すること」との前提を感じる。安倍首相自身がそう言っているのならば別だが、「安倍晋三という政治家の旗印」である「改憲」の実現よりも「政権の求心力」を重視すべきと説くのは奇妙だ。

改憲」が「安倍晋三という政治家の旗印」ならば、「改憲を実現」して「政権の役割に終止符が打たれる」のは本望ではないか。

できないところは次の政権の宿題にする」と芹川論説フェローは言うが、「憲法9条への自衛隊の明記」を「次の政権」が「宿題」として引き継いでくれる保証はあるのか。

しかも「その先(来年夏の参院選後)になると参院選で改憲勢力が3分の2を失う可能性がありより見通しづらい」と芹川論説フェロー自身が書いている。「改憲」に関してはどの政権でやろうと「国論を二分した激しい対立を招くのは確実だ」。

なのになぜ「政権の求心力を維持する方法を考えた方がいい」となるのか。「政治指導者は政治目標の実現よりも政権維持を第一に考えるべきだ」とでも思っているのか。「国論を二分した激しい対立」の末に「改憲」を実現して「業績は史家の批判にまつ」のも「ひとつの方法だ」。

芹川論説フェローは今年1月の「核心~改憲は急がば回れ  現実主義者の見せ場」でも、今回の記事と似たような主張を展開していた。「改憲」が好ましくないと考えるならば改憲反対を唱えればいい。必要だとの立場ならば「時機を逃すな」と訴えるのが自然だ。

しかし芹川論説フェローはどちらでもない。やたらと「先送り」を訴える。先送りを続けていれば、いつか「国論を二分」せずに「改憲」できるとでも信じているのか。


※今回取り上げた記事「核心~安倍『超長期政権』のわな
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181015&ng=DGKKZO36428220S8A011C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。芹川洋一論説フェローへの評価はE(大いに問題あり)からDに引き上げる。芹川論説フェローに関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_50.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_98.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_51.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_15.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_16.html

「株価連動政権」? 日経 芹川洋一論説委員長の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_31.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_12.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_13.html

日経 芹川洋一論説主幹 「新聞礼讃」に見える驕り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_33.html

「若者ほど保守志向」と日経 芹川洋一論説主幹は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_39.html

ソ連参戦は「8月15日」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/815.html

日経1面の解説記事をいつまで芹川洋一論説主幹に…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_29.html

「回転ドアで政治家の質向上」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_21.html

「改憲は急がば回れ」に根拠が乏しい日経 芹川洋一論説主幹
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_29.html

論説フェローになっても苦しい日経 芹川洋一氏の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_24.html

データ分析が苦手過ぎる日経 芹川洋一論説フェロー
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_77.html

0 件のコメント:

コメントを投稿