2018年10月13日土曜日

日経「アシックス、シューズ工場自動化」に足りない情報

13日の日本経済新聞朝刊企業面に載った「アシックス、シューズ工場自動化 日米欧、消費地で生産」という記事には肝心な情報が抜けていた。「独アディダス」が「シューズ生産のほぼ全てを自動化した工場『スピードファクトリー』をドイツと米国に持つ」のに、追いかける「アシックス」がなぜ「シューズ全体の生産工程の3分の1を自動化」するにとどまるのか。そこは触れてほしかった。
グラバー園(長崎市)※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

アシックスはシューズの自動生産に乗り出す。2019年春に鳥取県の工場の一部でロボットを導入。手作業に頼っていた工程の人員を半分にする。将来は欧米で導入を目指す。主力生産拠点だったアジアは人件費が高騰。工場自動化で消費地に生産回帰して、流行に合わせて商品の提供スピードを高める動きが、国内外のスポーツ用品メーカーで広がっている。

鳥取県の生産子会社の工場で、シューズのアッパー(甲被)と靴底を貼り合わせる工程でロボットを導入する。若者に人気が高い「オニツカタイガー」やウオーキングシューズを作る。投資額は明らかにしていない。

ロボ導入で同工程の作業人員を半減。シューズ全体の生産工程の3分の1を自動化できる。靴底の成形に3Dプリンターの導入を検討するなど自動化を進める方針だ。

シューズ生産は縫製や素材の貼り合わせなど、多くが手作業だ。アシックスは人件費の安さを理由に、生産の約4割をベトナムで手掛ける。インドネシア、中国にも拠点を持つ。アジアで生産して日本や欧米で販売するビジネスモデルで成長してきた。

だが経済成長に伴ってベトナムなどは人件費が大幅に上昇。過酷労働や児童労働など人権問題のリスクもある。アジアから日本や欧米に商品供給する時間がかかり、移り変わりが早い消費者の嗜好に即応しきれていない課題も抱えていた。

日本での生産比率は数%。だが自動生産のノウハウを国内工場で培い、今後は欧米でも同様の生産を目指す

生産自動化は、スポーツ用品で世界最大手の米ナイキや2位の独アディダスが先行している。アディダスはシューズ生産のほぼ全てを自動化した工場「スピードファクトリー」をドイツと米国に持つ。顧客の好みに応じてカスタマイズしたシューズを少量生産することが可能で、ドイツの産官学が推進する「インダストリー4.0」を象徴する工場とされる。

アシックスも世界大手を追うため、コスト削減や、商品の企画から生産・販売までの期間短縮で流行に素早く対応する体制づくりを急ぐ。


◎かえって高コストになるような…

アディダス」の「スピードファクトリー」は「シューズ生産のほぼ全てを自動化」しているので、人件費を気にせず「ドイツと米国」で生産できるのだろう。

しかし、「アシックス」は「3分の1を自動化」するだけなので、残りの3分の2の工程では人件費がかかる。なのに「自動生産のノウハウを国内工場で培い、今後は欧米でも同様の生産を目指す」という。これも分からない。

アシックスは人件費の安さを理由に、生産の約4割をベトナムで手掛ける。インドネシア、中国にも拠点を持つ」という。だとしたら、「欧米」に生産を移すと人件費の増加を招いて競争力が低下しそうだ。その辺りの解説がないのも残念だ。

記事の書き方だと「3分の1を自動化」した工場を「欧米」にも造ると取れる。推測の域を出ないが、実際は「アディダス」並みの自動化ができるようになった段階で「欧米」にも拠点を設けるのではないか。でないと、最初から負けが見えている。

現段階では工場の完全自動化について「アディダス」に大きく後れを取っているのだろう。なぜ「アディダス」にできて「アシックス」には不可能なのか。その差をいつまでにどうやって埋めようとしているのか。そこを描けていれば、興味深く読める完成度の高い記事に仕上がったと思える。


※今回取り上げた記事「アシックス、シューズ工場自動化 日米欧、消費地で生産
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181013&ng=DGKKZO36431860S8A011C1TJC000


※記事の評価はC(平均的)。

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