2018年2月5日月曜日

「大東亜帝国は学食で男女別々」? 東洋経済「大学が壊れる」

週刊東洋経済2月10日号の特集「大学が壊れる」の中に出てくる「大学選びの5カ条 君たちはどう生きるか 大淘汰時代の大学選び」という記事は偏見を感じさせる内容だった。記事ではオバタカズユキ氏が学食に関して「大東亜帝国クラスだと男女席を同じゅうせず」などと語っているが、常識的には考えにくい。この記事には、他にも問題を感じた。順に見ていこう。
早稲田大学 戸山キャンパス (東京都新宿区)

【東洋経済の記事】

 大学にはカラーがある。偏差値が同じならどの大学も一緒、というわけではない。

たとえば慶応義塾大学。幼稚舎から上がってきた本当のお坊ちゃん、お嬢様の価値観のようなものが校風に影響を与えている。それを嫌うと浮いてしまうことがある。

一方、かつての早稲田大学はバンカラで、いろいろな地方の出身者が雑居していたが、今はアッパーミドル家庭、東京の中高一貫校の出身者ばかり。地方の県立トップ高出身者も入学しているが、そうとう減っている。


◎早大は「東京の中高一貫校の出身者ばかり」?

まず、早大についての「東京の中高一貫校の出身者ばかり」という説明が怪しい。大学のホームページで合格者の出身高校所在地別状況を見ると、東京の高校は3分の1程度だ。「中高一貫校」に限れば比率はさらに下がる。入学者の状況も似たようなものとすれば、早大の学生で「東京の中高一貫校の出身者」は3割に満たないと推測できる。だとすれば「東京の中高一貫校の出身者ばかり」は言い過ぎだ。「ばかり」と表現するならば、個人的には7~8割は欲しい。

続きを見ていこう。

【東洋経済の記事】

今はインターネットや情報誌などに、大学に関する情報があふれている。情報はたくさんあって選択肢が増えているように見えるが、ネット情報は玉石混淆で、スマートフォンで調べてわかった気になるのは危ない。冒頭で述べた大学のカラーのようなものも、インターネット情報だけではわからない。

いちばん大事なのは実際にキャンパスに足を運んでみることだ。最近は各大学がオープンキャンパスに力を入れている。こうした催しに参加することもプラスだが、それよりも志望大学を三つくらい、土曜日でもいいが、できれば学生の多い平日に訪問してみたい。高校を休んででも見学する価値がある。

「受験生です。大学見学に来ました」と言えば、守衛さんもまず入れてくれる。

図書館は原則入れないが、手始めに学生食堂でご飯を食べてみよう。キャリアセンターに行けば、就活の雰囲気も伝わってくる。部活の様子や大きな教室を外からのぞくのもよし。ピロティのような場所で、学生たちがどんな会話を交わしているか、耳を傾けてみるとよい。

学食は、お昼どきは混雑するので、午後2時以降が狙い目だ。学食で大学生たちはどんな会話をしているのか。授業のない学生がたむろしていると、本音を知ることができてなおよい。

その際、男女が一緒に和やかに歓談している率がポイント。男女の「和気あいあい度」「にこやかにキャンパスライフを楽しんでいる度」は意外なほど偏差値に比例する。この点、東京大学は例外。立教大学は少し温室ハウスのような空気だとか、中央大学は資格試験疲れの学生がちょっと目立つとか、大東亜帝国クラスだと男女席を同じゅうせず、だとか。学生気質や校風が高校生でも何となく感じ取れるはずだ。

キャンパスでは購買部、特に書籍コーナーもチェックしてみよう。偏差値の低い大学は漫画本メインだったりする。どんな本が並べられているのかを見れば、その大学の知的レベル、文化レベルを推し量ることができる。


◎色々と気になる点が…

オバタ氏は大学選びで「いちばん大事なのは実際にキャンパスに足を運んでみること」で、その際は「学食」で「男女が一緒に和やかに歓談している率」を見るように勧める。まず「男女が一緒に和やかに歓談している率」はそんなに大事なのか。大事だとすれば、その理由が知りたいところだが、記事では教えてくれない。
福岡大学(福岡市城南区)※写真と本文は無関係です

百歩譲って大事だとしよう。だが、「男女の『和気あいあい度』『にこやかにキャンパスライフを楽しんでいる度』は意外なほど偏差値に比例する」のであれば、わざわざ「キャンパスに足を運んでみる」までもない。オバタ氏が例外とする東大を除いて偏差値ランキングをチェックすれば「男女が一緒に和やかに歓談している率」が高いかどうかを判断できる。

偏差値に比例する」という話も信じ難い。「東京大学は例外」とオバタ氏は言うが、だったら東京工業大学やお茶の水女子大学には当てはまるのか。東工大は9割近くが男子学生で、お茶の水は女子大だ。「男女が一緒に和やかに歓談している率」は普通に考えれば低くなる。

中央大学は資格試験疲れの学生がちょっと目立つ」との説明も引っかかった。オバタ氏は中央大を訪れた際に、疲れた学生が多いなと感じてその理由を1人1人に尋ねたのかもしれない。だが、高校生がそういった事情を「何となく感じ取れる」かと言えば、難しいだろう。

そして最も気になったのが「大東亜帝国クラスだと男女席を同じゅうせず」との記述だ。これらの大学の学食で男女一緒に食事をしているグループは1日に1組いるかどうか--と言えるのならば、記事の説明で問題ない。それぞれの学食を訪ねたわけではないので断定はできないが、「男女席を同じゅうせず」は言い過ぎだと思える。しかも、それを偏差値と絡めているところに偏見の臭いがする。

オバタ氏の言う、大学選びで「二つ目に大事な」ことについても疑問を感じた。

【東洋経済の記事】

二つ目に大事なのは、ネット上の大学関連情報や雑誌のランキングのたぐいは極力見ないこと。大学に関する情報を見るくらいなら、勉強に集中したほうがよい。

教育熱心な親ほど、大学ランキングなどの数字に踊らされてしまう。しかし、子どもの志望校がどのレベルに位置づけられているかを大ざっぱに知る程度ならよいが、細かなランキングの上下を気にする必要はまったくない。親は自分の出身大学や受験経験のコンプレックスを反映し、つい感情的になってしまう。それらは「それは世間のうわさ話なのね」という程度に受け止めておくべきで、そうしたランキングに一喜一憂するのは有害無益だ。



◎どうやって志望大学を絞り込む?

オバタ氏は「ネット上の大学関連情報や雑誌のランキングのたぐいは極力見ないこと。大学に関する情報を見るくらいなら、勉強に集中したほうがよい」と助言する。「いちばん大事なのは実際にキャンパスに足を運んでみること」だとも述べていた。「志望大学を三つくらい、土曜日でもいいが、できれば学生の多い平日に訪問してみたい」とオバタ氏は言うが、だったらその「三つ」はどうやって選ぶのか。

大学関連の情報に極力触れないようにして「三つ」を選ぶのは難しい。「親や教師に選んでもらえ」と言いたいのか。謎だ。

今回の記事は最後に「(談)」となっている。つまり、オバタ氏に取材した内容を記者がまとめたものだ。雑な説明をそのまま記事にした記者の責任も重い。

因みに、今回の記事には早稲田大学大隈講堂の写真を使っていて、写真には「昔のイメージで大学を選ぶと失敗する(写真は本文と関係ありません)」という説明が付いている。早大についても記事中でしっかり触れているのだから「写真は本文と関係ありません」とは言えないだろう。

さらに言えば「自宅生の半数超は1時間以上かけて通学─大学生の片道通学時間─」とのタイトルが付いたグラフも気になった。このグラフは本文との関連性がほぼない。強いて挙げれば「自宅からキャンパスまでの交通の便も、実際に行ってみないと意外とわからないものだ」というくだりだが…。何のためにグラフを入れたのか、これも謎だ。


※今回取り上げた記事「大学選びの5カ条 君たちはどう生きるか 大淘汰時代の大学選び


※記事の評価はD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿