2018年2月14日水曜日

間違った説明が目立つ日経1面「モネータ 女神の警告」

日本経済新聞の朝刊1面で連載している「モネータ 女神の警告~広がるきしみ」は問題が多い。14日の「(2)金融政策と財政、ずれる歯車 止まらぬ大盤振る舞い」という記事では、誤りと思える説明もあった。記事の当該部分と日経への問い合わせは以下の通り。
横浜ランドマークタワー(横浜市)
     ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

金融危機後の景気テコ入れを狙い、各国政府は財政のアクセルを強く踏んだ。お金をため込むばかりの企業・家計に代わる最大の使い手として振る舞い、マネーの奔流を勢いづかせた。

減税や財政出動へ借金を重ねられた底流には中央銀行の金融緩和がある。中銀が大量の国債を買って金利を低く抑え、政府は資金繰りの心配から解放された

国際金融協会によると世界の政府部門が抱える負債は昨年9月末時点で63兆ドル(約6800兆円)とこの10年で倍増した。政府部門の負債は金融機関を上回る。世界全体の国内総生産(GDP)に対する政府債務の比率は、金融危機前の6割から9割に上昇した。


【日経への問い合わせ】

モネータ 女神の警告~広がるきしみ(2)金融政策と財政、ずれる歯車 止まらぬ大盤振る舞い」という記事についてお尋ねします。記事には「金融危機後の景気テコ入れを狙い、各国政府は財政のアクセルを強く踏んだ。お金をため込むばかりの企業・家計に代わる最大の使い手として振る舞い、マネーの奔流を勢いづかせた」との記述があります。

しかし、日本の場合はGDPに占める個人消費の比率が約6割なので、政府が「企業・家計に代わる最大の使い手」にはなっていません。米国は個人消費が約7割を占めますし、他の主要国も多くは5割を超えているようです。政府が「企業・家計に代わる最大の使い手」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

他にも気になる点を指摘しておきます。

記事では「お金をため込むばかりの企業・家計」と断言していますが、記事に付けた「債務残高は政府が金融機関を逆転した」とのタイトルのグラフを見ると、「企業」の債務残高は2013年まで「政府」とほぼ同水準なのに、その後は「政府」を上回っています。「債務」を膨らませて政府が支出を増やしているとすれば、「企業」も同じか政府以上ではありませんか。

記事には「各国政府」に関して「減税や財政出動へ借金を重ねられた底流には中央銀行の金融緩和がある。中銀が大量の国債を買って金利を低く抑え、政府は資金繰りの心配から解放された」との説明もあります。だとすると、なぜ昨年からベネズエラでは債務問題が続いているのでしょうか。債務不履行の問題も起きているので「政府は資金繰りの心配から解放された」とは言えません。記事では、世界を単純に捉え過ぎていませんか。

ギリシャに関する「カネ余りを背にした国債発行で財政を再建し、国際支援から脱する腹づもりだった」との説明にも問題を感じました。基本的に「国債発行で財政を再建」とはならないはずです。可能ならば、日本も「国債発行で財政を再建」したいところです。

問い合わせは以上です。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として、掲げた旗に恥じない行動を心掛けてください。

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※今回取り上げた記事「モネータ 女神の警告~広がるきしみ(2)金融政策と財政、ずれる歯車 止まらぬ大盤振る舞い
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180214&ng=DGKKZO26844780T10C18A2MM8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

色々と分かりにくい日経1面「モネータ 女神の警告」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_59.html

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