2018年2月18日日曜日

「王子・三菱製紙の提携」週刊ダイヤモンドも記事に問題あり

王子ホールディングと三菱製紙の提携に関して日経ビジネスが問題の多い記事を書いていたので、同じ件を取り上げた週刊ダイヤモンドはどうかなと思ったら、似たようなレベルだった。筆者は池冨仁記者。以下の内容で問い合わせを送っている。
甘木鉄道 甘木駅(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド編集部  編集長 深澤献様 池冨仁様

2月24日号の「Inside~嫌がっていた王子を応諾させた 三菱製紙、粘り腰の大金星」という記事についてお尋ねします。記事では「2月6日、国内製紙最大手の王子ホールディングスは、実質的に経営再建中の三菱製紙に33%出資して持ち分法適用会社にする方針を発表した」と記した上で、以下のように解説しています。

以前から、業界首位の王子HD(2018年3月期の連結売上高予想1兆5000億円)と、同6位の三菱製紙(同2010億円)は業務提携を進めてきた。最近では、16年3月に国内最大級のバイオマス発電所を共同運営する新会社(19年7月に稼働予定)を立ち上げ、17年6月にはティッシュなどの家庭紙事業で新会社(19年4月に稼働予定)を設立している。鈴木社長は、業務提携の既成事実を積み重ね、粘りに粘って資本提携にまで持ち込んだ

これを信じれば、両社は「業務提携」のみの関係だったが、今回初めて「資本提携」に踏み込んだと解釈できます。しかし、現状でも王子は三菱製紙に2%強を出資しています。出資比率は高くないものの「資本提携」は既に実現しています。

業務提携の既成事実を積み重ね、粘りに粘って資本提携にまで持ち込んだ」というのは、不正確で誤解を招く書き方ではありませんか。

記事には、他にも理解に苦しむ記述がありました。まず以下のくだりです。

ここまでの道のりは、茨(いばら)の道だった。2000年より、三菱製紙は旧北越製紙(現北越紀州製紙)と合併する前提で業務・資本提携を進めていたが、05年に中越パルプ工業との合併に乗り換えて、結局は破談に至る。北越製紙との関係は冷え込んだが、14年になって今度は北越紀州製紙と販売子会社同士の合併協議が持ち上がった。ところが、警戒したライバルの大王製紙が三菱製紙との本体同士の統合をちらつかせて急接近したことから、三菱製紙の鈴木社長は揺れた。最終的に、北越紀州製紙と2度目の破談に至る(大王製紙の筆頭株主は北越紀州製紙なのだから、もとより無理な話である)

よく分からないのは「大王製紙の筆頭株主は北越紀州製紙なのだから、もとより無理な話である」との説明です。まず「無理な話」が「三菱&北越紀州」の件なのか「三菱&大王」の件なのか迷いました。普通に解釈すれば「三菱&北越紀州」です。なので、こちらの可能性をまず探りました。

しかし、北越紀州が三菱との提携交渉を進める上で、「北越紀州が大王の筆頭株主であること」が障害になるとは思えません。そこで、「三菱&大王」の件について「無理な話」と言っている可能性を考慮しました。例えば、北越紀州が大王の過半の株式を保有しているのであれば、大王が勝手に統合交渉を進めるのは「無理な話」です。

ただ、調べてみると、北越紀州の大王に対する出資比率は20%程度のようです。この場合、「もとより無理な話である」とは言い切れません。残りの株主次第です。仮に、「無理な話」と断言できる特別な事情があったのならば、記事中で説明すべきです。

 記事には、もう1つ不正確さを感じる記述がありました。「単独での生き残りが難しかった三菱製紙は、断続的なリストラに追われて死に体だったが、技術力だけはあったことから王子HDに近づく」というくだりです。

記事から判断すると、王子HDに近付いた時期は2016年頃でしょう。その頃、三菱製紙は自己資本比率で20以上を維持していました。また、15年3月期は最終赤字でしたが、その後は2期連続の黒字です。「死に体だった」との表現が適切だとは思えません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが「資本提携」に関しては回答をお願いします。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアの一員として責任ある行動を心掛けてください。

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※今回取り上げた記事「Inside~嫌がっていた王子を応諾させた 三菱製紙、粘り腰の大金星
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/22769

※記事の評価はD(問題あり)。池冨仁記者への評価は暫定でDとする。

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