2018年2月28日水曜日

冒頭から分かりにくい週刊ダイヤモンド「新・新エネ戦争」

週刊ダイヤモンド3月3日号の第2特集「EV到来で過熱する 新・新エネ戦争」には冒頭から意味のよく分からない説明が出てくる。筆者の堀内亮記者は以下のように書いている。
小長井駅(長崎県諫早市)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

2016年、世界の再生可能エネルギーの年間導入量が初めてトップに立った。ここにきて、世界的な電気自動車(EV)ブームが到来し、その主力電源として期待される「再エネ」の周辺ビジネスに企業が群がっている。新たなエネルギー戦争の幕が開いた。 



◎何の中で「トップ」?

2016年、世界の再生可能エネルギーの年間導入量が初めてトップに立った」という最初の文でいきなり躓いてしまった。「世界の再生可能エネルギーの年間導入量」は何の中での「トップ」なのか謎だ。

日本の再生可能エネルギーの年間導入量が初めてトップに立った」と書いてあれば、「日本が国別で初めてトップに立った」と推測できる。しかし、記事では「世界」と明示している。「火力や原子力と比べた年間導入量で再生可能エネルギーがトップになった」との趣旨かもしれないが、そう断言できる材料もない。特集を最後まで読んでも謎は解けなかった。

この特集には、他にも引っかかる説明があった。「EVシフトでチャンス到来!企業が群がる“分散型バブル”」という記事の一部を見てほしい。

【ダイヤモンドの記事】

分散電源化──。今、エネルギー業界で注目を集めているキーワードだ。本特集では、分散型エネルギーと言い換えよう。

分散型エネルギーとは、文字通り、地域が分散したエネルギーのことをいう。ざっくり言えば、大手電力会社が手掛ける原子力発電や火力発電などの「大規模集中型エネルギー」以外のエネルギーを分散型エネルギーと呼ぶ。

具体的には、太陽光や風力といった再生可能エネルギーをはじめ、コージェネレーション(電気と熱を同時に発生するシステム)、蓄電池などが含まれる。蓄電池が搭載されているという意味では、はやりの電気自動車(EV)も立派な分散型エネルギーだ。

分散型と大規模集中型、それぞれに一長一短がある。

分散型の大きなメリットは、発電の際に二酸化炭素(CO2)を全く出さない“クリーンエネルギー”であること。また太陽光や風力といった自然エネルギーを活用するため、燃料調達費がゼロであることも挙げられる


◎蓄電池で「発電」できる?

発電」を辞書で調べると「電気を起こすこと。熱機関などにより発電機を回転させ、電力を発生させること。火力・水力・原子力・風力・潮力・地熱などが利用される」(デジタル大辞泉)と出てくる。広義では畜電池も「発電」しているのかもしれないが、普通に考えると他で「発電」した電力をためて使っているに過ぎない。

記事によると「蓄電池が搭載されているという意味では、はやりの電気自動車(EV)も立派な分散型エネルギー」であり「分散型の大きなメリットは、発電の際に二酸化炭素(CO2)を全く出さない“クリーンエネルギー”であること」らしい。

つまりEVは「発電の際に二酸化炭素(CO2)を全く出さない“クリーンエネルギー”」となる。畜電池にためた電力を使う時に限ればそうかもしれないが、火力発電所で生み出した電力を使って走る場合、「クリーンエネルギー」と呼ぶのは苦しい。

EVを含む「分散型エネルギー」ついて「太陽光や風力といった自然エネルギーを活用する」と断定しているのも疑問だ。火力や原子力で生み出した電力でEVを走らせることも当然あるだろう。それを「燃料調達費がゼロ」との考えるのもやや無理がある。

火力で発電して蓄電池に充電する場合、電気料金がかかるし、その電気を作るのに「燃料調達費」がかかる。「EVはCO2を全く出さない“クリーンエネルギー”であり、燃料調達費もゼロ」という記事の説明は、間違いではないとしても強引さを感じる。


※今回取り上げた特集「EV到来で過熱する 新・新エネ戦争
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/22853

※特集全体の評価はC(平均的)。堀内亮記者への評価もCを据え置く。

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