2018年2月24日土曜日

今の日本で「長期金利の低下鮮明」? 日経の記事に疑問

24日の日本経済新聞朝刊マーケット総合面に「長期金利の低下鮮明 国内投資家、円債に回帰」という記事が出ている。見出しを見て「日本の長期金利に『低下鮮明』なんてあり得るの?」と疑問が湧いた。記事の全文は以下の通り。
甘木鉄道 甘木駅(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

長期金利の低下傾向が鮮明だ。指標となる新発10年物国債利回りは23日、前日比0.005%低い0.045%と、約2カ月ぶりの低水準を付けた。償還までの期間が長い超長期債も約1年ぶりの低水準にある。国内の投資家が米金利上昇で含み損を抱えた米国債を売却し、その売却資金を円債に投じているとの見方が出ており、金利低下圧力となった。

財務省の対内対外証券投資によると、国内投資家は今月11日から17日にかけて5531億円の外債(中長期債)を売り越した。売り越しは1月28日以来3週連続となり、合計額は約2.4兆円にのぼる。

売却資金の一部が円債に回帰していることが日本の金利低下につながっている。

国債需給の引き締まりも金利を押し下げている。日銀は1月の超長期債の購入減額以降、しばらく追加的な減額をしていない。「円高進行で日銀が当面国債買い入れの減額には動けなくなったとの見方が広がった」(メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏)との指摘も出ており、国債の買い安心感につながっている。



◎「0.005%」でも「低下傾向が鮮明」?

日銀が長期金利を「ゼロ%程度」に誘導している中で、「長期金利の低下傾向が鮮明」になるとは考えにくい。「前日比0.005%低い0.045%と、約2カ月ぶりの低水準を付けた」と言うが、値動きはわずか「0.005%」。基本的に「ゼロ%程度」での横ばいだ。ほぼゼロ金利の中での極小の動きを捉えて「低下傾向が鮮明」と言うのは無理があるし、意味がない。

しかも、隣のマーケット総合1面の「<金利>10年債、0.045%に低下」という記事でも以下のように書いている。

23日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは低下(価格は上昇)した。前日と比べ0.005%低い0.045%で取引を終えた。昨年12月以来約2カ月ぶりの低水準となった。年度末を控えて国内金融機関の債券需要が高まった

これで十分だろう。内容もかなり重なっている。「長期金利の低下鮮明」と無理して盛り上げて3段見出しを付けてまで記事を載せる必要は感じられない。

ついでに言うと「約2カ月ぶりの低水準を付けた」というくだりの「低水準を付けた」が気になった。個人的には、「水準」は「付ける」ものではないと思う。「高値を付ける」は問題ないが「高水準を付ける」には違和感がある。

マーケット総合2面の記事では「昨年12月以来約2カ月ぶりの低水準となった」と書いている。こちら方が好ましい。


※今回取り上げた記事「長期金利の低下鮮明 国内投資家、円債に回帰
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180224&ng=DGKKZO27341630T20C18A2EN2000


※記事の評価はC(平均的)。

0 件のコメント:

コメントを投稿