2018年2月2日金曜日

日経 秋山裕之記者「進むシルバー民主主義」に足りないもの

2日の日本経済新聞夕刊ニュースぷらす面に載った「進むシルバー民主主義  投票者の4割、65歳以上」という記事は興味深い内容だった。「年代別の人口と投票者数」を1980年、2000年、2017年で比べたグラフは、有権者の中心が高齢層へと動いてきた歴史を分かりやすく示している。
片の瀬公園(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

ただ「シルバー民主主義がなぜ問題なのか」については満足できる解説がなかった。個人的には「シルバー民主主義自体に大きな問題はない」と思っている。理由は2つ。多数派が力を持つのは民主主義では当たりだ。それに、若者も生き続ければいずれは高齢者になる。「高齢者に優しい政策」が継続されるのならば、それは「将来の高齢者=若者」にも優しい政策になる。

付け加えると、日本ではシルバー民主主義に若者が強い反感を抱いているとは考えにくい。もし大きな不満があれば、若者の投票率は高齢者より高くなるはずだ。

では、筆者の秋山裕之記者はこの問題をどう捉えているのか。記事の終盤を見ていこう。

【日経の記事】

安倍晋三首相は昨年の衆院選で「全世代型社会保障」を打ち出した。財政健全化に充てる財源の一部を、子育て支援や教育無償化に回す。借金返済は将来に先送りする。

若者と高齢者の対立ではなく、生まれる前の将来世代にツケを押し付け、若者も高齢者も給付を受けているのが現実だ」。中部圏社会経済研究所の島沢諭主席研究員はこう指摘する。

シルバー民主主義は、有権者間の世代間不公平から、有権者と非有権者の間の不公平の時代に入ろうとしている。問題は高齢者の発言力が強いことだけではない。18歳未満やこれから生まれてくる世代の声を誰がどのように政治に反映するかだ。


◎「シルバー民主主義」には問題ないような…

若者と高齢者の対立ではなく、生まれる前の将来世代にツケを押し付け、若者も高齢者も給付を受けているのが現実だ」とすれば、問題があるとしても「シルバー民主主義」の問題ではない。「シルバー民主主義」の下でも「若者と高齢者の対立」は起きていないはずだ。「若者も高齢者も給付を受けている」似た者同士に過ぎない。

有権者と非有権者の間の不公平の時代」において、「高齢者の発言力」を低下させたり「若者」の影響力を高めたりして意味があるだろうか。両者とも「生まれる前の将来世代にツケを押し付け」ているのだから、どちらが力を持っても同じだ。

そして、残念ながら「これから生まれてくる世代の声」を正確に「政治に反映する」術はない。「これから生まれてくる世代の声」は現時点では想像しかできないからだ。「これから生まれてくる世代」がいずれは「自分たちも上の世代と同様に次世代へツケを回したい」と求めてくる可能性も十分にある。それは、秋山記者が想定している「これから生まれてくる世代の声」とはかけ離れているのではないか。


※今回取り上げた記事「進むシルバー民主主義  投票者の4割、65歳以上
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180202&ng=DGKKZO26462770S8A200C1EAC000


※記事の評価はC(平均的)。秋山裕之記者への評価も暫定でCとする。

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