2016年12月11日日曜日

民進・蓮舫代表の不興恐れぬ日経 宮坂正太郎記者に期待

日本経済新聞のインタビュー記事と言えば、当たり障りのない話に終始する予定調和型が圧倒的に多い。大物の企業経営者へのインタビューでは特にそうなりがちだ。企業に擦り寄ってネタをもらう習性が染み付いているためで、ネタを取る必要のない編集委員であっても、一度染み付いた企業ヨイショの体質が変わることはまずない。
つづら棚田(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です

政治部の事情はよく分からないが、企業報道部と似たり寄ったりだと思っていた。ただ、11日朝刊日曜に考える面の「永田町インサイド~とがった自分にジレンマ 就任3カ月 民進・蓮舫代表に聞く 」という記事を読んで、少し見方が変わった。聞き手の宮坂正太郎記者がかなり突っ込んだ質問をしていたからだ。蓮舫代表の不興を買うリスクを宮坂記者が引き受けているのが、紙面から伝わってくる。

自分が気付かないだけで政治部は以前からこうなのか、それとも最近になって変わってきたのか、あるいは宮坂記者が異端なのかは、よく分からない。ただ、期待を持たせる動きではある。

「不興を買うリスク」を感じさせるやり取りをいくつか見ていこう。

【日経の記事】

――就任後の取り組みを自己採点すると何点か。

「政党の代表は自己評価しない。評価するのは国民だ。今なお伸びていない支持率も含め、厳しめにみていると思う」

――落第点なのか。

「自分で評価しない」

――代表としてどう評価されていると思うか。

 「毎週末地方を歩いているが、多くの方が集会や街頭演説に来ていただいている。私への期待と党への期待の乖離(かいり)をどう縮めるかが最大の課題だ」

――党の支持率は上がっていない。

「平時に支持率を上げるのはすごく難しい。選挙が近づくことで上がっていくよう持っていきたいが、奇策はない。勝負に出たい」

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厳しめにみていると思う」との答えに満足せず、「落第点なのか」と畳みかけたのは評価できる。畳みかけていく姿勢は以下のやり取りにも見える。

【日経の記事】

――党内がバラバラとの批判が続く。

「まとまっている」

――首相は党首討論で、カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案で意見が割れていると批判した。

「首相が勝手に言っている話だ。バラバラな時はニュースになるが、まとまっている時は報道されない」

――外交や安全保障分野の政策が見えない。

「外交や安保は政権が変わって大きくぶれてはいけない。首相がロシアのプーチン大統領やオバマ大統領と会談するのに異を唱えたことはないが、会談内容や成果については注視。問題があれば指摘する。日米同盟は基軸だ。ただ憲法違反の疑いのある安全保障関連法は廃止する。抑止力が高まったと首相は言うが、中国は相変わらずわが国の領海に侵入し、北朝鮮はミサイルを発射している」

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かなり厳しい質問が続く印象だ。宮坂記者はこの他にも「民進党の『提案型』が伝わってこない」「民進党の経済政策の哲学やキャッチフレーズが分からない」といった言葉をぶつけている。「この際だから、民進党について問題だと思っていることは何でも思い切って聞いてやろう」と踏ん切りを付けたかのようだ。

個人的には、インタビューはこうあるべきだと思っている。「相手との関係を絶対に壊したくない」と聞き手が考えている場合、読む価値のあるインタビュー記事に仕上がる可能性は非常に低くなる。もちろん予定調和的でよいインタビュー記事もなくはない。ただ、政党の党首に党としての取り組みを聞く場合に、緊張感ゼロの予定調和では意味がない。

だからこそ「日経らしくない宮坂正太郎記者」の今後に期待したい。


※記事の評価はB(優れている)。宮坂正太郎記者への評価は暫定でBとする。

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