2016年5月16日月曜日

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)

15日の日本経済新聞朝刊 総合・政治面に掲載された「風見鶏~広島訪問はパンドラの箱」という記事の中に、「オバマ大統領が広島を訪問することが自分には分かっていた」と筆者の大石格編集委員が誇っているくだりがある。誇るのがダメだとは言わないが、記事中の説明には色々と疑問が残る。問題の部分は以下のようになっている。
皇居周辺の桜(東京地千代田区) ※写真と本文は無関係です

◎オバマ氏の広島訪問をなぜ確信?

【日経の記事】

昨年の今ごろ、「オバマ氏が広島に来る日」と題する拙稿を本欄に書いた。米大統領の被爆地訪問を実現しやすくするため、主要国首脳会議(サミット)の開催地を広島にしてはどうかという趣旨だった。

程なくして自分が外交サークルで笑いものになっていることを知った。政府関係者が教えてくれた。

「オバマは広島開催だけはノーだった。日本政府に来いと言われたから行くのだと、頭を下げに行くように米国民には見える

そんな外交の機微もわからない鈍感記者というわけだ。笑われたことで確信したことがふたつあった。オバマ氏は広島に必ず行くつもりだ。そして、日米の底流では「謝罪」が強く意識されている――。

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サミット開催地を広島にしたらどうか」という趣旨の記事を書いたら「広島開催はない」と笑われたらしい。実際にサミットの開催地は広島ではなく伊勢志摩になった。笑った方の見立てが正しかったわけだが、笑われたことで大石編集委員は「オバマ氏は広島に必ず行くつもりだ。そして、日米の底流では『謝罪』が強く意識されている」となぜか確信する。

『謝罪』が強く意識されている」のは記事に出てくる「政府関係者」のコメントからも判断できるのでいいだろう。しかし、「オバマ氏は広島に必ず行くつもりだ」と確信した理由が判然としない。風が吹けば桶屋がもうかる的な関係が成り立っているのかもしれないが、何の説明もない。まるで大石編集委員が天才的な分析能力を発揮したかのように描いている(本当に天才なのかもしれないが…)。

以下の説明はさらに問題が目立つ。

◎なぜ「日本で死亡した米兵捕虜」限定?

【日経の記事】

先の大戦でいわゆる「バターン死の行進」を経験した退役軍人の団体は先月、オバマ氏に書簡を送った。「日本で死亡した米兵捕虜への心からの追悼をするまで、広島行きは控えられたい」。日本に謝罪させろ、とは書いていないが、「行進」の記憶がなお鮮明なのはうかがえる

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バターン死の行進」とは「太平洋戦争中、バターン会戦で降伏したアメリカ=フィリピン軍将兵に対し、旧日本軍が行なった残虐な取扱い事件」(ブリタニカ国際大百科事典)を指す。ならば、行進を経験した退役軍人の団体にとっては、フィリピンで死亡した米兵捕虜の追悼がまず重要だろう。なのに、フィリピンは抜きに「日本で死亡した米兵捕虜への心からの追悼」を団体は求めたという。これは不可解だ。

5月11日付で時事通信は以下のように伝えている。

【時事通信の記事】

フィリピンで旧日本軍の捕虜が多数死亡した「バターン死の行進」を生き延びたレスター・テニー氏(95)は4月19日、オバマ大統領に宛てて手紙を送った。「私は(大統領に)広島行きを促すが、太平洋で自由のために犠牲になった米軍と連合国軍へ最初に謝意を示さない、どのような訪問にも反対だ」。

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大石編集委員の言う「書簡」と、時事通信の取り上げた「手紙」が同一のものかどうかは分からない。ただ、同一の可能性は高そうだ。時事通信の記事では「太平洋で自由のために犠牲になった米軍と連合国軍へ最初に謝意を示さない、どのような訪問にも反対だ」となっているので、「なぜ日本で死亡した捕虜限定なのか」という疑問は湧かない。大石編集委員は「書簡」の内容を正しく伝えているのだろうか。

『バターン死の行進』を経験した退役軍人の団体」であれば、「『行進』の記憶がなお鮮明」なのは当然だ。ただ、「日本で死亡した米兵捕虜への心からの追悼をするまで、広島行きは控えられたい」という書簡の内容からは「『行進』の記憶がなお鮮明」だとは伝わってこない。むしろ「『バターン死の行進』で死んでいった仲間の追悼はいいのか」と聞きたくなる。

ここまで長々と大石編集委員の記事を論評してきた。過去に書いた記事も含めて大石編集委員には書き手としての問題が多すぎる。早めの引退を勧めたい。


※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを維持する。大石編集委員については「日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?」「ミサイル数発で『おしまい』と日経 大石格編集委員は言うが…」も参照してほしい。

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