2016年5月13日金曜日

三菱自動車を論じる日経 中山淳史編集委員の限界

時間がなかったから…といった事情はあるかもしれない。それにしても完成度が低い。13日の日本経済新聞朝刊総合2面に「ゴーン流、新境地開けるか」という解説記事を書いた中山淳史編集委員には、書き手としての限界を感じる。中身が乏しい上に、説明は不十分で、言葉の使い方も拙い。中山編集委員に今後も解説記事を書かせる意味があるのか、日経編集局の幹部はしっかり検討すべきだ。
「虹の松原」の前に広がる砂浜(佐賀県唐津市) 
               ※写真と本文は無関係です

それほど長い記事ではないので、全文を見てほしい。その上で問題点を指摘したい。

【日経の記事】

「開発部門は人事異動が少ない組織で、10年間も同じ部署、担当のままという人も少なくなかった」。三菱自動車の関係者は社内の様子をそう話す。

燃費不正のあった「性能実験部」がそうだったという。開発部門には部署の序列が昔から存在し、性能実験部は下位の方の位置づけだった。部署ごとの縦割り意識も強く、「一緒に車をつくり上げようという雰囲気に欠けていた」ともその関係者は証言する。

日産自動車が救済する三菱自はそんな経営体質を抱える。2度目のリコール隠しが発覚した2004年には投資ファンドが筆頭株主になり、外部の目で企業風土を変えようとしたときもあったが、三菱グループがその後主要株主に落ち着き、改革は忘れられた。

この20年で4度目の不祥事となった燃費不正は許されざる行為だ。だが三菱自にも数万人の雇用、数百万人のユーザーが世界中におり、益子修会長は「開発部門を外部の目、日産のやり方で変えて何とか再生したい」と語った。日産とりわけカルロス・ゴーン社長はその難題にどう臨むのか。

「三菱自が再生したら日産にも恩恵がある」。ゴーン社長は出資比率が34%にとどまる点を聞かれ、そう答えている。リスクを最小限に抑えたい思惑はあっただろう。だが、ゴーン氏が手掛けたM&A(合併・買収)は100%買収から数%出資まで様々だ。要は「コントロール(支配)するかどうかは問題ではなく、シナジー(相乗効果)をどこまで引き出せるか」が重要なのだと話す。

再生が必要な企業には「部門横断チーム」を若手管理職でつくり、全社を方向付けする。人事や処遇には公平さと明瞭さ、競争原理で臨む。そうした基礎を固めた上で、部品調達や生産、開発投資を分け合う関係を築ければ規模の利益は計り知れない、との考え方だ。仏ルノーが日産でしてきたことの繰り返しである。

「ゴーン流」は新境地を開けるか三菱自を再生すれば日産ルノーグループはトヨタ自動車と肩を並べる規模の経済圏を築ける。トヨタとは別の手法で世界一を目指す一手には世界中の企業から注目が集まることだろう。

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大筋としては、過去を振り返った後に「ゴーン流は新境地を開けるのか。今後に注目」と言っているだけだ。三菱自動車の未来を正確に予測しろとは言わない。ただ、「『ゴーン流』は新境地を開けるか」と見出しまで使って問いかけるのであれば、ある程度の答えが欲しい。

「ゴーン流と三菱自動車は相性が良さそう」でもいいし、「ゴーン氏の神通力に陰りが出ているので、三菱自動車へ大ナタを振るうのは難しい」でもいい。中山編集委員というベテラン記者が今後をどう見通しているのか、リスクを負って書くべきだ。「これまで色々ありました。今後のゴーン氏と三菱自動車に注目です」というレベルの解説ならば、若手記者でも書ける。

ここから細かい点に注文を付けていこう。

◎答えになってる?

『三菱自が再生したら日産にも恩恵がある』。ゴーン社長は出資比率が34%にとどまる点を聞かれ、そう答えている」という説明は謎だ。「なぜ出資比率を34%にとどめたのですか」との質問に対し「三菱自動車が再生したら日産にも恩恵があるからです」でまともな答えと言えるだろうか。質問が「なぜ三菱自動車を支援するのですか」ならば分かるが…。例えば100%出資にすれば、三菱自動車が再生した時に日産が得られる恩恵は、3分の1出資の場合より大きくなるはずだ。

ここで引っかかっていると、次の「リスクを最小限に抑えたい思惑はあっただろう」との解説でさらに謎が深まる。素直に受け取ると、出資比率34%の時に日産のリスクが最小限になるはずだ。だが、なぜそうなるのか説明はないし、常識にも反する。日産の再建に手を貸すにしても、出資は見送った方がリスクをより小さくできる。2370億円もの資金をつぎ込む方式で「リスクを最小限に」できるとは思えない。

その後に続く「ゴーン氏が手掛けたM&A(合併・買収)は100%買収から数%出資まで様々だ」にもツッコミどころがある。出資比率が「数%」ではM&Aとは言えない。週刊ダイヤモンドによると、米投資ファンドのサード・ポイントはセブン&アイホールディングスへの出資比率が8%程度に達しているらしい。この場合、サード・ポイントはセブン&アイを買収(あるいは合併)したと言えるだろうか。


◎「雇用がおり」?

三菱自にも数万人の雇用、数百万人のユーザーが世界中におり~」というのは不自然な日本語の使い方だ。「三菱自動車には数万人の雇用がいる」とは普通は言わない。「三菱自にも数万人の従業員、数百万人のユーザーが世界中におり~」などとすべきだ。


◎日産ルノーが「経済圏を築ける」?

三菱自を再生すれば日産ルノーグループはトヨタ自動車と肩を並べる規模の経済圏を築ける」というくだりの「経済圏」の使い方も気になった。辞書によると、「経済圏」とは「経済活動が一定の独立性をもって営まれる地理的範囲」(大辞林)を指す。三菱自動車が日産ルノーグループに入ったとしても、3社で1つの「経済圏」を築くわけではない。

「比喩的に使ったんだ」と中山編集委員は弁明するかもしれない。その場合、“経済圏”などと表記してほしい。ただ、比喩的に「経済圏」を使う意味は感じられない。「トヨタ自動車と肩を並べる規模の企業集団を築ける」などの方が適切だろう。


※記事の評価はD(問題あり)。中山淳史編集委員への評価もDを据え置く。手を抜かずに一生懸命書いても今のレベルが精一杯ならば、後進に道を譲るべき時が来たと観念してほしい。

※中山編集委員に関しては「日経 中山淳史編集委員は『賃加工』を理解してない?」「日経『企業統治の意志問う』で中山淳史編集委員に問う」も参照してほしい。

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