2016年5月26日木曜日

「無印」小型店 今後の出店数抜きに「出店加速」と書く日経

日本経済新聞で企業関連記事の完成度が低いのは、今に始まった話ではない。ただ、26日の朝刊企業・消費面に載った「良品計画、『無印』小型店の出店加速 数年で売上高3倍」という記事には若干の目新しさを感じた。見出しに「小型店の出店加速」と付け、記事では「小型店の出店を増やす」と書いているのに、小型店の今後の出店数には全く触れていないからだ。このパターンは見た記憶がない。

鎮西身延山 本佛寺(福岡県うきは市)
    ※写真と本文は無関係です
記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

「無印良品」を展開する良品計画は小型店の出店を増やす。日常的に使う衣料や雑貨などに品ぞろえを絞った「MUJI com(ムジコム)」を今後の出店の中心に据え、数年内にムジコムを含む小型店の売上高を現在の約3倍の100億円に引き上げる駅ビルを中心に店舗網を広げ、通勤・通学による駅の利用者を固定客に取り込む

店舗面積を500平方メートル未満とする小型店は標準的な「無印良品」よりも3割以上小さい。ムジコムのほか、空港に出店する「MUJI to GO」、主に駅構内に展開する「無印良品comKIOSK」がある。3タイプ合計の店舗数は30店弱、年間売上高は約35億円となっている。

店舗展開の中心となるムジコムはこれまでJR大森駅(東京・大田)に直結する商業ビル「アトレ大森」などに20店弱を出店。今後は駅ビルに加え、駅と接する地下街の商業施設など駅の利用者が日常的に行き来する場所を確保していく。

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良品計画は小型店の出店を増やす」という話を柱にニュース記事を書く場合、必ず入れるべき要素とは何だろうか。(1)小型店の定義(2)現在の小型店の数(3)過去の小型店の出店ペース(4)今後の小型店の出店ペース(5)小型店に力を入れる理由--といった辺りがすぐに思い付く。

このうち、今回の記事で触れているのは(1)と(2)だけだ。「駅ビルを中心に店舗網を広げ、通勤・通学による駅の利用者を固定客に取り込む」というのが(5)に当たるか微妙だが、少なくとも(3)と(4)はない。これで「小型店の出店を増やす」と堂々と書けるのは、ある意味ですごい。

記者が若手で技量不足なのかもしれないし、それを責められない面もある。ただ、企業報道部のデスクも「これで問題なし」と判断していることになる。その責任は免れない。今回の場合、書き直しかボツを選ぶべきだ。

出店を増やす」話なのだから、例えば「年間5店以下の出店だった小型店を今後3年間で30店出す」といった情報は不可欠だ。記事で今後の出店数を探る手掛かりは「数年内にムジコムを含む小型店の売上高を現在の約3倍の100億円に引き上げる」という部分だけだ。見出しを付ける整理部の担当者も、「今後の出店数」が見当たらないので困って「数年で売上高3倍」を見出しに持ってきたのだろう。同情を禁じ得ない。

今後の出店数は不明で、売上高の計画も「数年内」という曖昧な言い方しかできないのであれば、記事にする必要はない。本来ならば、「小型店以外の出店はどうするのか」という情報も入れたいところだが、まずは必須情報を抜かないことだ。

なぜ日経の企業関連記事の完成度は低くなるのか。最大の原因は日経産業新聞と日経MJの存在だ。企業報道部の記者はこの2つの新聞を「埋める」作業に追われながら、日経本紙にも記事を書いている。すると、どうしても質より量が問われるようになる。そして、粗製乱造が当たり前の状況で経験を重ねていく。

そうやって育った記者がデスクになり、今度は記事をチェックする立場になる。その時には「粗製乱造が当たり前」になっているので、今回のような記事を記者が出してきても、問題を感じなくなってしまう。結果として、完成度の低い記事が世に送り出されてしまうというわけだ。

今回の記事を書いた記者は、自らの技量不足を反省することもなく仕事を続けていくのだろう。その記者がやがてデスクになって…。日経の抱える構造的な問題を解決するのは、かなり困難だ。


※記事の評価はD(問題あり)。

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