2016年5月24日火曜日

マイナス金利は株式に逆風? 日経 土居倫之記者に問う

日本経済新聞 証券部の土居倫之記者によると、株式市場の関係者は「マイナス金利の拡大を警戒」しているようだ。しかし、土居記者が書いた朝刊投資情報面の「一目均衡~マイナス金利と『ゼロ金利の壁』」 という記事を読むと、マイナス金利の拡大は株式市場にとってむしろ追い風のように思える。
「虹の松原」の前に広がる砂浜(佐賀県唐津市)
              ※写真と本文は無関係です

記事の内容は以下の通り。

【日経の記事】

日銀がマイナス金利を導入してから26日で100日となる。マイナス金利でデフレを脱却したい日銀と、日銀に対する不満を募らせながらプラスの利回り確保に奔走する金融機関。両者の思惑がすれ違う陰には「ゼロ金利の壁」がある。

三井住友アセットマネジメントは今年度に入り、ある機関投資家向け株式ファンドの募集を停止した。資産が500億円近くに達し、運用体制が追いつかなくなったためだ

地銀や年金マネーが殺到した秘密は安定的な高い利回りだ。同じ業種内で買いと売りを組み合わせる「ロング・ショート」と呼ぶ投資戦略をとり、設定来の年換算利回りは10%を超す。運用する坂井早苗シニアファンドマネージャーは「運用利回りがこれまで四半期ベースでマイナスになったことがない」と明かす。

日本より利回りが高い海外の金融商品にもマネーは向かう。米ゴールドマン・サックスが日本の保険会社に紹介しているのが「プライベート・クレジット」と呼ぶ商品だ。ゴールドマンが信用リスク評価に必要な手はずを整え、欧米の買収ファンドなどに同社と共同で資金を貸し付ける。格付けはシングルB格級だ。

来日した同社のオマー・チョードリー氏は「流動性がない分、高い利回りが期待できる」と語る。時価評価が必要ないことも市場の変動を敬遠する投資家を引き付けるという。

「みなさんが家を建てようとしたり、会社が工場やお店を建てたりするときは有利になります」。日銀はホームページに掲載した解説「5分で読めるマイナス金利」にこう記す。

だが日銀の思惑とは裏腹に企業の新規設備投資は盛り上がりを欠く。10年物国債の利回りはマイナス0.1%前後まで低下。マネーは高い利回りを求めてさまよう。海外のインフラファンドに400億円投資する日本生命保険の佐藤和夫財務企画部長は「国債は流動性確保に必要な最低限分しか買わない」と断言する。

保険会社や年金基金は加入者に、銀行は預金者に、それぞれプラスの利回りを約束している。企業会計基準委員会(ASBJ)は、退職給付債務の計算に使う割引率にマイナス金利の適用を容認する一方で、ゼロも選べるようにした。

保険会社や銀行もマイナス金利の適用には及び腰。顧客である世論の反発を免れないからだ。お金を預かる側には、収益悪化を覚悟で顧客に約束する利回りをプラスに維持せざるを得ない「ゼロ金利の壁」がある。マイナス金利の深化は「収益悪化がどこまで続くかわからない怖さがある」(欧州証券の株式営業責任者)

決算発表が一巡し、株式市場の関心は6月中旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)とそれを受けた日銀の金融政策決定会合に集中している。マイナス金利の拡大を警戒する株式市場関係者は、上場株式投資信託(ETF)の買い入れ増額など即効性の高い金融政策への期待を強めている

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原則として、金利低下は株式相場の上昇要因だ。「マイナス金利の拡大」も金利低下には違いない。「マネーは高い利回りを求めてさまよう」と土居記者も書いている。

記事によると「三井住友アセットマネジメントは今年度に入り、ある機関投資家向け株式ファンドの募集を停止した」という。「地銀や年金マネーが殺到した秘密は安定的な高い利回り」のようだ。つまり、マイナス金利が株式市場への追い風になっている。

ゴールドマンが信用リスク評価に必要な手はずを整え、欧米の買収ファンドなどに同社と共同で資金を貸し付ける」金融商品も人気らしい。これも「欧米の買収ファンド」への資金流入によって世界の株価を引き上げる効果がある。

10年物国債の利回りはマイナス0.1%前後まで低下」したため日本生命では「国債は流動性確保に必要な最低限分しか買わない」方針だという。その分、「海外のインフラファンド」などリスクの高い投資対象に資金が流れるので、これも株式市場にとってはプラス材料だ。

お金を預かる側には、収益悪化を覚悟で顧客に約束する利回りをプラスに維持せざるを得ない『ゼロ金利の壁』がある」から、銀行などではマイナス金利の拡大によって収益が圧迫される。こちらは株価へのマイナス要因でいいだろう。

こうやって見ると、記事を読む限り「マイナス金利は株式市場への資金流入を促すプラス効果が大きい。銀行などの収益悪化をもたらすマイナス面もあるが、全体で見れば株式市場にとってはプラス」と判断したくなる。

実際はマイナス面の方が大きいのかもしれない。ただ、土居記者の「一目均衡」では、プラス面が勝って見える。なのに、「マイナス金利の拡大を警戒する株式市場関係者は、上場株式投資信託(ETF)の買い入れ増額など即効性の高い金融政策への期待を強めている」と結んでも説得力はない。

こういう形で話を終わらせたいのならば、「マイナス金利は株式市場にとってマイナス面の方が大きい」という展開にする必要がある。しかし、それができているとは思えない。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた土居倫之記者への評価はDで確定させる。土居記者に関しては「基礎力不足の日経 土居倫之記者『アジアラウンドアップ』」も参照してほしい。

1 件のコメント:

  1. 土井記者の本件
    日銀と金融機関の思惑がすれ違う影が ゼロ金利 
    との書き出しですが、記事中 日銀VS 金融機関にはなっておらず、
    マイナス金利にされても、それを逆手に利回り運用に奮闘する金融機関
    という印象でした。
    壁 という言葉を使う以上は何と何を隔てているのかわかりやすく書いてほしかったかなあと。
    これだと日銀と金融機関なのか
    金融機関内での 顧客への利息約束 と マイナス金利による収益悪化 なのか
    その他なのか
    ちょっと。。。
    記事しとしては現実的で妥当な線だとは思ったのですが
    鹿毛様ならもっと適切なタイトルをつけられたかと思います。

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