2016年5月29日日曜日

日経1面「シェアエコノミーとルール」に感じた問題(1)

日本経済新聞ではシェアリングエコノミーをよく取り上げる。29日には朝刊1面で「シェアエコノミーとルール」という連載が始まった。シェアリングエコノミーの素晴らしさを紹介した上で、規制緩和の必要性を訴えるのがいつものパターン。「(上) 広がる新ビジネス 日本流規制が壁に」も同じ流れだ。そして、いつも似たような問題が起こる。「何を以てシェアリングエコノミーと呼ぶのか」「何でも規制緩和すべきなのか」という問題だ。
鎮西身延山 本佛寺(福岡県うきは市)
    ※写真と本文は無関係です

まず記事の終わりの方を見ていこう。

【日経の記事】

ビジネスの魅力をそぐルールもある。ネットを通じて個人や中小企業が資金を融通し合うクラウドファンディング。ファンドで集めた資金を企業に融資するmaneo(東京・千代田)の滝本憲治代表取締役は「企業名を公表できないので関心を得にくい」と話す。

金融法に詳しい増島雅和弁護士は「投資家が資金回収に直接乗り出すなどトラブルを防ぎたい当局の意向が強い。企業名の明示を認めれば市場を拡大できる」と話す。

米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、シェアエコノミーの全世界の市場規模は13年に150億ドル(当時約1兆4千億円)。日本は14年度で約230億円(矢野経済研究所調べ)にとどまる

既存業界の保護に軸足を置いた規制は新ビジネスの芽を摘み取る。グーグル、ヤフーなどが加盟するアジアインターネット日本連盟の杉原佳尭幹事長は「安全性などに問題がある業者は規制で縛るのではなく、消費者の評価で自然淘汰させるべきだ」と是正を訴える。

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クラウドファンディングをシェアリングエコノミーの一部とする考え方はあるのだろう。その場合、シェアしているのは「カネ」となる。ただ、個人などから幅広く資金を集めて誰かに貸すのが「シェアリングエコノミー」に当たるのならば、金融機関がやっている融資もそうなる。特に信用金庫や信用組合は「シェアリング」色が強くなる。

「ネットを通じて資金調達しているかどうか」で分けて信金や信組を「シェアリング」から外すとなると、かなりご都合主義的な定義になる。結局、クラウドファンディングがシェアリングエコノミーに当たるのならば、シェアリングエコノミー市場とは既存の金融機関による融資も含む非常に大きなものと考えるほかない。

規制も他の金融機関と同様に考えるべきだ。融資先の公表を認めるかどうかも、金融業界全体の問題として捉えるしかない。そのぐらいの規制緩和ならば大きな問題はないのだろうが、記事の結びは「規制撤廃」を求めているかのようだ。

安全性などに問題がある業者は規制で縛るのではなく、消費者の評価で自然淘汰させるべきだ」というコメントを使っているのだから「シェアリングエコノミーに関する規制は何でも撤廃してしまえ」と取材班は判断しているはずだ。それが「誰でも自由に銀行業務をできるようにしよう」という主張も含んでしまうことは分かっているのだろうか。

ネットを通じて個人や中小企業が資金を融通し合うクラウドファンディング」に関して「ファンドで集めた資金を企業に融資する」業務が規制なしにできるようになれば、既存の金融機関と同じような融資業務を誰でもできるようになる。それが本当に望ましいのかどうか取材班はしっかり考えてほしい。

記事には他にも問題を感じた。それらについては(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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