2016年5月23日月曜日

週刊ダイヤモンドが見習うべき東洋経済「セブン再出発」

これ程の大差が付くとは…。週刊東洋経済5月28日号の特集「セブン再出発~教祖はもういない」を読み進めながら、ライバル誌の週刊ダイヤモンドに思いを馳せずにはいられなかった。同じセブン&アイ関連特集でも、ダイヤモンド5月14日号の「カリスマ退場~流通帝国はどこへ向かうのか」に比べると今回の東洋経済の特集は読み応えがあったし、内容にも満足できた。特にダイヤモンドとの差が目立ったのが、イトーヨーカ堂をダメにした鈴木敏文会長の責任への言及だ。
菜の花畑(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です

ダイヤモンドは特集のPart3「カリスマが築いた帝国の軌跡」で6ページも使って鈴木氏の実績を振り返っているのに、ヨーカ堂での失敗に全く触れなかった(「ヨーカ堂の失敗触れず鈴木敏文氏称える週刊ダイヤモンド」参照)。しかし、東洋経済はこの問題をしっかり掘り下げている。その一部を見ていこう。

【東洋経済の記事】

商法違反事件で社長を退いた伊藤氏に代わり、鈴木氏がヨーカ堂の社長に就任したのは92年。03年に会長になってからもヨーカ堂のCEOとして君臨してきた。

ヨーカ堂の元幹部は「鈴木さんがヨーカ堂を壊してしまった」と語る。鈴木会長はセブン-イレブン・ジャパン(セブン)の成功手法をヨーカ堂に取り入れようとした。鈴木会長の持論は「業態の違いは関係ない」。しかし食品中心のセブンに対し、ヨーカ堂は衣料や住関連まで幅広く扱う。現場は混乱した。「お客様の立場で考えろという鈴木会長の考えはまったく正しい。しかし業態が違うのに、それを実行するのは容易ではない。取り組みが始まっても、鈴木さんの目が届かなくなるといつも間にか終わり」(元幹部)。その中で、成果を出せない担当者は次々と責任を問われた。

セブンは小売業とは無縁の社員を集まって始まった。その原体験を持つ鈴木会長のもう一つの持論は、「素人のほうが新しい発想ができる」。セブンのほかグループのそごう・西武、ヨークベニマルなどから、社員が次々とヨーカ堂に派遣された。その結果「ヨーカ堂プロパーの人間が次々と辞めていった」(同)。

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セブン、そごう・西武、ヨークベニマルの人間は小売業の「素人」とは言えないので、上記の説明にも多少の問題はある。特にヨークベニマルは食品スーパーなので、ヨーカ堂と非常に似た業態だ。ただ、ヨーカ堂の業績悪化を食い止められなかった鈴木氏の負の部分を素通りで済ませたダイヤモンドに比べれば、東洋経済の記事は評価に値する。

ダイヤモンドは「カリスマ退場」という特集で「これは長きにわたって用意周到に仕組まれた事実上のクーデターだった」「鈴木を追い込んだのは、『獅子身中の虫』たちが周到に準備していた、事実上の『クーデター』だった」と断定していた。しかし、記事を読み進めると「一連のクーデターには首謀者がいなかった」「彼らが偶然にも集まり、行動を起こし始めた途端、歯車がうまくかみ合い、大きなうねりとなって鈴木を追い込んでいったというわけだ」などと、辻褄の合わない説明が出てくる(「セブン&アイ 反鈴木敏文派を『虫』と呼ぶ週刊ダイヤモンド」参照)。

この説明には東洋経済の記者も疑問を感じたのだろう。以下のようにダイヤモンドの記事を“否定”している。

【東洋経済の記事】

ここに至るまでのプロセスには不確定要素が多く、今回の退任劇のすべてが周到に仕組まれたクーデターだと見るのは無理がある。社内に情報を漏らす「獅子身中の虫」がいたとしても、全体のシナリオを描けていたわけではあるまい。

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実際にどうだったのかは分からないが、ダイヤモンドのおかしな説明と併せて考えると、東洋経済の指摘は的を射ている可能性が高そうだ。この点でも、特集の出来としては東洋経済に軍配が上がる。


※特集の評価はB(優れている)。暫定でBとしていた又吉龍吾記者と秦卓弥記者への評価はBで確定とする。冨岡耕記者は暫定Cから暫定Bに引き上げる。並木厚憲副編集長、井上健吾記者も暫定でBと格付けする。西村豪太編集長代理への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。西村編集長代理に関しては「道を踏み外した東洋経済 西村豪太編集長代理へ贈る言葉」を参照してほしい。

※今回の特集に関して、説明で1つ気になる点があった。それに関して東洋経済編集部に問い合わせを送っている。詳細は「特損回避で最高益? 東洋経済『セブン再出発』に残る疑問」で触れる。

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