とは言え、問題も散見された。まずは記事の書き方に関する初歩的なミスから指摘したい。「電力自由化~ガス自由化でさらに料金下落 鉄則を知れば絞り込みは簡単」という記事の以下のくだりを読んで、「ジェラ」とは何か瞬時に理解できるかどうか試してほしい。
福岡県立浮羽工業高校(久留米市) ※写真と本文は無関係です |
その観点で電気料金メニューを出している会社を見ていくと、2~3社に絞ることは意外と簡単だ。
各社が狙う首都圏を例に考えてみよう。首都圏で電力事業を行う企業の中で、LNGを大量に仕入れている企業といえば東京電力。年間2500万トンと国内トップの輸入量だ。次は中部電力で年間約1500万トン。このツートップは、実は燃料調達分野で合弁会社を設立している。単純計算で、約4000万トンの輸入量となるのだ。
ガス業界トップの東京ガスは年間1200万トンの輸入量を誇るが、ジェラとの差は大きい。もちろん東京ガスには、ガス事業を長年担ってきたノウハウがあり、東電・中部にはない強みだ。だが、LNGを上流から大量に仕入れるジェラを有する東電・中部が、現時点では頭一つ抜きんでている。
光熱費で賢い選択をしたければ、来年のガス自由化で起こるエネルギー業界の構造変化を押さえておくべきだろう。
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最初に読んだ時は「えっ! ジェラって何?」と思って記事の最初まで遡って探してしまった。最後まで読むと「LNGを上流から大量に仕入れるジェラを有する東電・中部」という記述もあるので、「燃料調達分野」での「合弁会社」が「ジェラ」だと推定はできる。
ただ、いきなり「ジェラ」はまずい。「実は燃料調達分野でジェラという合弁会社を設立している」などと書いておくべきだ。ついでに言うと「東電・中部」という略し方は違和感がある。普通は「東電・中部電」だろう。
今回の特集で最も気になったのは特集のタイトルである「お金の賢者と愚者」にも関わる「賢者」と「愚者」の分類だ。ダイヤモンドは以下のように色分けしている。
【ダイヤモンドの記事】
ただ、先にも述べたように年収別に結果を並べても、「賢者」と「愚者」の境目は見えにくい。
そこで、人生の満足度を調べるために、「現在、幸せかどうか」について5項目で尋ねた。
具体的には、「仕事」「資産」「家庭」「余暇・休暇」「社会貢献・地域活動」について、それぞれ0から10までの11段階で、現在の満足度を測ったのである。
これによって、フローの収入を中心とした仕事の満足度だけでなく、資産というストックを加味したことになる。私生活でも、家庭や余暇の満足度に加えて、地域社会とのつながりも評価した。
その5項目を加重平均し「総合満足度」を算出した。これが人生の満足度となると考えたからだ。
そこで、総合満足度の中心となる値(中央値、5.2)を境目に、それ以上の人を「賢者」、未満の人を「愚者」と位置付けた。
総合満足度に加えて、世帯年収が1000万円以上かどうかを見て、回答者を四つのタイプに分類した。平均的な姿を示したのが、図1であり、次のようになる。
[金持ち賢者]
【平均世帯年収1305万円、総合満足度6.7】
[庶民賢者]
【平均世帯年収637万円、総合満足度6.4】
[金持ち愚者]
【平均世帯年収1270万円、総合満足度4.0】
[庶民愚者]
【平均世帯年収582万円、総合満足度3.6】
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この分類には大きく2つの問題がある。
◎問題その1)満足度が高いと「賢者」なのか?
「仕事」「資産」「家庭」「余暇・休暇」「社会貢献・地域活動」について「満足度が高い人=賢い」「満足度が低い人=愚か」との分類に納得できるだろうか。例えば、親の介護が大変で家庭生活に満足できない人は「愚か」なのか。資産家の親から多額の資産を相続して満足している人は「賢い」のか。仕事や家庭への満足度で「幸福か不幸か」は判断できるだろうが、「賢いか愚かか」を測れるとは思えない。
今回の分類を用いるならば「幸福な金持ち」「不幸な金持ち」「幸福な庶民」「不幸な庶民」とでもすべきだろう。
◎問題その2)「金持ちかどうか」に資産は関係ない?
記事の分類では、「金持ち」か「庶民」かを年収だけで判断している。資産は「賢者か愚者か」の判定に使っているだけだ。常識的に考えれば、金持ちかどうかは収入と資産の両面で判断するはずだ。
最後に1つ、「図解 シェアリング~物入り子育て世代がけん引 『共有』するスマート生活」という記事にツッコミを入れておきたい。
【ダイヤモンドの記事】
物だけでなく場所のシェアも盛んで、仲間でキッチン付きレンタルスペースを借り切り、酒や食事を持ち寄る飲み会が流行している。外食するより格安で済むからだ。
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図では「居酒屋5000円(1回1人当たり)→レンタルスペース2000円程度(1回1人当たり、お酒・食事は持ち込み)」となっている。「お酒・食事は持ち込み」で、さらにスペース代として2000円も取られるならば「格安」とは言い難い。そもそも、単に安く済ませたいならば、誰かの家で飲む方が効果的だ。
※特集全体への評価はC(平均的)。小栗正嗣編集委員、片田江康男、北濱信哉の各記者については暫定でCと格付けする。清水量介副編集長の格付けは暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。柳澤里佳記者は暫定B(優れている)を、岡田 悟記者はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。岡田記者の評価に関しては「週刊ダイヤモンドも誤解? ヤフー・ソニーの『おうちダイレクト』」を参照してほしい。
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