2015年12月12日土曜日

説明不足だらけの日経1面「働きかたNext~老いに克つ」(1)

日本経済新聞朝刊1面で「働きかたNext~老いに克つ」という連載が始まった。第1回の「4人で正社員1人分 時間と体力、補い合う」は説明不足が目立つ。日経1面企画でよく見られる「事例の詰め込み過ぎ」→「説明不足」というパターンから今回も抜け出せていない。どこが問題なのか記事を順に見ていこう。

東京都庁の展望室(東京都新宿区)からの眺め
※写真と本文は無関係です
◎「平均年齢は73歳」は何の「平均」?

【日経の記事】

買い物や参拝客のシニアでにぎわう東京・巣鴨。取材班は60歳以上の男女50人に「何歳まで働きたいか」尋ねてみた。

 「まだ社会とつながっていたい」「孫の小遣いを稼ぎたくて」。平均年齢は73歳。65歳を超えても働きたい人や実際に働いた人は6割に上った。

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上記の「平均年齢は73歳」は「何歳まで働きたいか」という質問に対する回答を平均した結果だろう。しかし、質問対象となる「60歳以上の男女50人」の平均年齢とも解釈できる。迷う余地のない書き方を選ぶべきだ。


◎細かく分けるとカバーできる?

【日経の記事】

「趣味の時間もあり、今が良いペース」。千葉県柏市の特養ホーム「柏こひつじ園」で働く新井裕子(72)は元公務員。カフェ運営と食事補助で週3日、計8時間働く

同施設では、掃除や洗濯などの業務を細かく分けた。シニア約40人が10班に分かれ、1回2時間の勤務シフトを自分たちで組む。体調が悪いときは誰かがカバーする。時間と体力を補い合い、「シニア4人で正社員1人分」働く仕組みを作った。

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掃除や洗濯などの業務を細かく分けた」ことと「『シニア4人で正社員1人分』働く仕組み」の関係がよく分からない。「体調が悪いときは誰かがカバーする」のであれば、特定の業務に特化させるやり方は望ましくない。しかし「掃除や洗濯などの業務を細かく分けた」のであれば、各人の業務は細分化されている気がする。これで、どうやって互いにカバーしているのか謎だ。どこか説明に欠けている部分があるのだろう。

それに「シニア4人で正社員1人分」という説明も腑に落ちない。記事に出てくる新井裕子さんは「週3日、計8時間」の労働だ。週40時間の労働力を確保するためには5人の「新井さん」が要る。もちろん各人の労働時間にバラツキはあるだろうが、なぜ「4人」と言い切っているのかはやはり謎だ。

正社員1人分」という表現もやや引っかかる。非正規でもフルタイムで働いている人はいるのだから、「シニア4人でフルタイム労働者1人分」などの方が好ましい。

記事の後半部分にも説明不足は見られる。それらについては(2)で述べたい。

※(2)へ続く。

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