2015年12月16日水曜日

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(1)

日本経済新聞の大林尚編集委員が書く記事はいつも問題が多い。16日の朝刊経済面に載った「カルテル捨てたOPEC ~原油安、改革競争迫る」もその例に漏れない。「改革競争迫る」と見出しに付いているものの、改革競争を迫られている状況をまともに描けていない。今回は記事の中身を紹介しつつ、大林編集委員に助言する形で問題点を浮き彫りにしてみたい。

高良山の久留米森林つつじ公園(福岡県久留米市)
            ※写真と本文は無関係です
◎もっと具体的に書こう ~その1

【日経の記事】

原油価格がおよそ7年ぶりの安値水準にある。ニューヨーク市場の先物相場は1バレル(159リットル)30ドル台の半ば。2008年に記録した最高値の4分の1だ。影響は正負の両面で広く及んでいる

まずマイナス面。ブランド店が軒を並べるロンドン・ニューボンド街の有名宝石店は、常連客の出身地別に中国系、中東系、ロシア系の資産家が上得意だが、ロシア系の出足が鈍った

「このままだとゼロ成長だ。資源依存経済の構造改革が必要だ」というプーチン大統領の言をまつまでもない。世界から資金を吸い寄せて成長する英国経済にとってロシアマネーは浮利。この宝石店は中東系の客足が細るのも覚悟している

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上記のくだりでは「ロンドン・ニューボンド街の有名宝石店」を持ち出す意味がほとんどありません。記事には「ロシア系の出足が鈍った」というぼんやりした情報が出てくるだけです。例えば「ロシア系の客は8月以降ほぼ消えた。そのせいで今年の店全体の売り上げは前年を4割近く下回りそうだ」などと書いてあれば「原油安の影響が随分と出てるんだな」と納得できます。記事を書くときは、できるだけ具体的な情報を読者に提供するように心がけてください。

付け加えると「この宝石店は中東系の客足が細るのも覚悟している」との記述が気になりました。原油安が宝石店の客足にマイナスの影響を及ぼすのであれば、ロシア系だけでなく中東系の客足も鈍るはずです。なぜ中東系は「これから」なのでしょうか。この辺りも、読者に余計な疑問を抱かせないように書きましょう。


◎資源高騰で得られるのは「浮利」?

【日経の記事】

日本の資源会社や商社も、一部が痛い目に遭った。先週は世界の株式市場で資源関連株がぐらついた。これらは「浮利経済」が正常に復する過程で現れた副作用である。

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浮利」とは「まともなやり方でない方法で得る利益。あぶく銭」(大辞林)です。大林様は「英国経済にとってロシアマネーは浮利」と断定し、日本の商社が資源ビジネスで痛い目に遭ったり、資源関連株が値下がりしたりするのも「『浮利経済』が正常に復する過程で現れた副作用」だと解説しています。

しかし、資源を開発して販売するのは「浮利」を追う行為なのでしょうか。相場高騰時に得られる大きな利益は「浮利」でしょうか。まっとうなやり方で資源開発によって得た利益であれば「浮利」とは考えにくい気がします。原油に関しては、1バレル100ドルで売って得た利益は「浮利」で、30ドル台の価格が「正常」なのでしょうか。

何となくのイメージで「浮利」だとか「正常」とか語っていませんか。何を以て「浮利」と呼ぶのか、もっとじっくり考えてみるべきです。

記事の後半部分にも問題はあります。それについては(2)で述べます。

※(2)へ続く。

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